月曜日の内科再来に通院している56歳男性は、血圧・血糖コントロールは良好だった。
昨年9月に巨大な腹壁膿瘍で外科に入院した。幸いに大きな手術になることもなく、抗菌薬投与で軽快した。それまで放置していた高血圧症と糖尿病(HbA1c10.9%)の治療は内科で行った。
インスリン強化療法を行っていたが、軽快して血糖降下薬のみになっていた。現在の処方はジャヌビア50㎎+メトホルミン750mg/日で、HbA1c6.1%。血圧も、ARB+Ca拮抗薬のミカムロAP1錠で130/70~80と安定している。
通常は内科外来の受付で血圧測定を行っていたが、コロナ騒ぎで中止になっていた。自宅であまり測定していないというので、診察室で測定した。右上肢を伸ばしてもらうと振戦が目立つ。
実は10年以上前から右上肢が震えるという。安静時はないが、手を伸ばしたり(姿勢時)、書字や食事の時に箸を使おうとすると(企図時)かなり震えてしまう。肘をテーブルに付けて、少しでも安定するような姿勢で食事をとるそうだ。受診しようと思っていたが、何科にかかればいいかわからなかったという。
症状は振戦だけで、本態性振戦と思われた。降圧薬をβブロッカーに変更して経過をみるのもあるとは思った。思ったが、やはりここは専門の神経内科の新患外来で診てもらうことにした。
後でどうなったか確認すると、振戦を呈する他疾患は否定的で、診断は本態性振戦となっていた。治療はプリミドン細粒が開始されていた。
「今日の治療指針2020」によると、処方例としてβブロッカーのアロチノロール塩酸塩、インデラルが記載されている(前者は保険適応ありで後者は適応外)。さらに抗てんかん薬のプリミドン、リボトリールも記載されている。「今日の治療薬2020」によると、両者ともに本態性振戦の病名が書かれていて、わざわざ保険適応外とあるので、「適応外だが使用されている」ということなのだろう。
症状がぴたっと治まるというより、少しでも軽減して日常生活に支障がない(少ない)ようになればという治療だろうか。
「今日の治療指針」は前回が2015で5年ぶりに買い替えた。「今日の治療薬」は前回が2016で4年ぶりに買い替えた。個人では毎年買い替えるのはもったいないが、2~3年おきくらいが標準?。