2週間前に、内科医院から88歳男性が右胸水貯留で紹介された。胸部X線・CTで右下葉に浸潤影と胸水を認めた。通常は、肺炎・胸膜炎あるいは肺炎と肺炎随伴性胸水として治療する。
ただこの患者さんは気になるところがあって、担当した内科の若い先生に相談された。画像では心嚢液貯留もあり、既往歴に高γグロブリン血症があった。
3年前に高γグロブリン血症があり、血液免疫泳動で「多クローン性だが、M蛋白も否定できない」ということだった。当時担当した内科の先生が、多発性骨髄腫疑いとしてがんセンター血液内科に紹介していた。
がんセンターからの返事では、やはり多クローン性で骨髄腫は否定的とあった。むしろ、抗核抗体陽性(2560倍)があり膠原病が疑われるので、地域の基幹病院リウマチ膠原病外来に紹介されていた。
患者さんはリウマチ膠原病科を受診したが、途中で行かなくなったために、診察内容は不明だった。内科の若い先生が問い合わせると、外来で担当したのは大学病院から出張で来た先生だったので、常勤医がカルテを見て返事をくれた。
抗体検査では、抗核抗体・抗Sm抗体、抗SS-A抗体・抗SS-B抗体が陽性で、SLE+シェーグレン症候群が疑われるということだった。SLEの漿膜炎としての胸膜炎・心膜炎としては、今回のCRP上昇の程度(SLEはCRPが上がらないのが特徴)からは感染症との鑑別をして下さいと記載されていた。
でどうするかだが、膠原病の抗体検査を提出して確認するが、抗菌薬(ABPC/SBT)と利尿薬(BNP上昇あり)で肺炎・心不全として経過をみることにした。
炎症反応は順調に軽快してきたが、胸部X線の所見が1週間~10日で変わらず、担当の先生が気にしていた。今日の検査では胸水・心嚢液が明らかに軽快していた。普通に感染症でいいようだ。
抗体検査はやはり陽性で、血液免疫泳動も「多クローン性だが、M蛋白も否定できない」という同様の結果だった。膠原病としての臨床症状はないので、そちらは経過観察のみになる。