なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

肺結核

2020年06月23日 | Weblog

 今月始めに、老人保健施設から発熱の91歳女性が紹介されてきた。施設嘱託医の指示で、土日にセフトリアキソンを点滴静注していたそうだ。

 発熱外来担当の先生が診察して、右肺炎として内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)に入院治療が依頼された。右肺に広範な浸潤影を認めていた。家族との相談では、できる範囲で治療するが、病状悪化時には心臓マッサージや人工呼吸は行わない方針(DNAR)になっていた。

 ゾシン(PIPC/TAZ)で治療が開始されたが、微熱~平熱で推移して、炎症反応は横ばいだった。大学病院から呼吸器科外来で来てもらっている先生に相談すると(抗酸菌感染症に強い)、抗酸菌感染(結核)の鑑別が必要といわれ、抗酸菌塗抹を行った。

 結果は抗酸菌塗抹陽性(ガスキー2号)で、3日後に結核菌PCR陽性と判明した。胸部X線で部分的に含気が改善した部位もあるが、通常の細菌性肺炎が併発していたところだけ、軽快したのかもしれない。

 胸部画像としては、空洞形成はなく、通常の細菌性肺炎のような浸潤影に見える。肺炎様の病像だと結核性肺炎になる。右肺尖部には胸膜肥厚があり、陳旧性の結核病変はあったのだろう(再燃による二次性結核)。

 見る人が見れば、結核に特徴的な陰影を指摘できるのかもしれない。呼吸器科外来の先生も、画像的所見というよりは、治りにくい肺炎としての抗酸菌検査を勧めていたが。

 「結核・非結核性抗酸菌症を日常診療で診る」(羊土社)には、「結核性肺炎は気管支透亮像を伴う浸潤影で、肺炎様の陰影を呈する。近年高齢者や糖尿病などの基礎疾患を有する患者で、結核性肺炎を呈する症例が認められている。免疫不全によりTh2型の反応が優位になると肉芽腫を形成しにくく、滲出性変化が主体となり、浸潤影を呈する。」とある。

 結核病棟を有する専門病院に救急搬送となった。この患者さんは嚥下障害で経口摂取ができないので、経鼻胃管からの注入か注射薬になるが、治療できるのだろうか。

 

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