2週間前に、糖尿病で通院している73歳男性の血糖が急に上昇していた。DPP4阻害薬とSU薬ごく少量(グリクラジド10mg)で、HbA1cが7%台前半だったが、その日はHbA1c10.3%で随時血糖が486mg/dlだった。(SGLT2阻害薬は腎症S-c1.42mg/dlがあり、使用で悪化して血液濃縮した)
患者さん自身は特に変わりがないという。脳梗塞の既往がある一人暮らしで、妹さんに連れて来てもらっていた。入院で血糖コントロールをすることにした。
ちょうど10年前に関東圏から当地に戻って来ていた。検査技師をしていたが、定年になり地元に戻ったのだった。高血圧症の治療継続で循環器科を受診したが、HbA1c11.1%と高値で内科に回されて、入院となった。
インスリン強化療法を行って血糖は軽快して、退院時には持効型インスリンは中止して、超速効型インスリン少量になった。外来で診ているうちにインスリンは中止となり、経口血糖降下薬のみとなった。
その後脳梗塞(ラクナ梗塞)で入院したこともあった。抗血小板薬が継続となっていたが、一昨年に出血性胃潰瘍で地域の基幹病院消化器内科に入院した。抗血小板薬が休止となっていた。
そろそろ抗血小板薬を再開(P-CAB併用)を勧めたが、出血性胃潰瘍で懲りたのか、ずっと飲みたくないといっていた。するとラクナ梗塞が再発して、脳神経内科に入院となった。退院後は抗血小板薬を継続となった(PPIではなく、P-CAB併用で)。
今回もインスリン食前皮下注で開始して、持効型インスリン少量も追加した。入院時に提出したCペプチドは5.52ng/mlと十分出ていた。CTで診て、膵癌をはじめとする悪性腫瘍はなさそうだ。
悪化した原因がはっきりしないが、今回もインスリンは休止になるかもしれない。一人暮らしで早く退院する理由もないというので、1か月の入院でHbA1cの低下を確認して退院にすることにした。
他科他院入院の期間もあるが、10年間診ていたことになるなあ、と感慨深い。使用する糖尿病薬としては、DPP4阻害薬+持効型インスリンより、GLP1受容体作動薬注のほうがいいか。