なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

CareNeTV SGLT2阻害薬

2023年12月10日 | 糖尿病

 とにかく糖尿病があってもなくても、SGLT2阻害薬ということになっている。ダパグリフロジン(フォシーガ)の適応は、①2型糖尿病、②1型糖尿病、③慢性心不全、④慢性腎臓病。

 男性だと、使い始めの多尿・頻尿が我慢できず、数回でやめてしまってもう飲まないと言う患者さんが少数いる。尿カテーテル留置(前立腺肥大症などの高齢男性)の患者さんでも使用し難い。女性だと、膀胱炎・膣炎を頻発する高齢者では使用し難い。

 

CareNeTV                                                         プライマリ・ケアの疑問
Dr.前野のスペシャリストにQ
糖尿病アップデート編 岩岡秀明先生

第3回 SGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬の主要な大規模臨床試験
2015年 EMPA-REG OUTCOME試験:心血管イベント抑制
2017年 CANVAS試験:腎保護
2019年 CREDENCE試験:腎保護、心血管イベント抑制
2019年 DAPA-HF試験:HFrEFの予後改善
2020年 EMPEROR-Reduced試験:HFrEFの予後改善
2020年 DAPA-CKD試験:CKDの予後改善
2021年 EMPEROR-Preserved試験:HFpEFの予後改善

EMPEROR-Reduced試験(2020)/DAPA-HF試験(2019)
左室駆出率の低下した慢性心不全(HFrEF)の予後改善効果
・2020年
 EMPEROR-Reduced試験:エンパグリフロジン(ジャディアンス)
・2019年
 DAPA-HF試験:ダパグリフロジン(フォシーガ)
▸両剤ともに糖尿病の有無にかかわらず、HFrEFでの心血管死および心不全による入院を有意に抑制した
⇒エンパグリフロジン、ダパグリフロジンはHFrEFの標準治療薬になった

EMPEROR-Preserved試験(2021)
左室駆出率が保たれた慢性心不全(HFpEF)に対する予後改善効果
2021年
 EMPEROR-Preserved試験:エンパグリフロジン
▸糖尿病の有無にかかわらず、心血管死と心不全による入院を併せた複合心イベントのリスクを有意に低下させた
⇒エンパグリフロジンはHFrEF、HFpEFどちらにも使用できるため心不全の標準治療薬になった

DELIVER試験(2022)
左室駆出率が保たれた慢性心不全(HFpEF)に対する予後改善効果
・2022年
 DELIVER試験:ダパグリフロジン(フォシーガ)
・2019年
 DAPA-HF試験:ダパグリフロジン(フォシーガ)
⇒ダパグリフロジンもHFrEF、HFpEFどちらでも使用できるようになった

Point:エンパグリフロジン、ダパグリフロジンともにHFrEF、HFpEFどちらにも使用できる

DAPA-CKD試験(2021)
CKD予後改善効果
▸ダパグリフロジン(フォシーガ)
糖尿病の有無にかかわらず「eGFR25~75mL/分1.73㎡」「尿中アルブミン/クレアチニン比200~5000mg/gCr」のCKD患者における腎機能低下や心血管に起因する脂肪リスクを優位に低下させた

eGFR30未満は腎臓内科に紹介する

糖尿病合併CKD患者
 アルブミン尿(蛋白尿)、腎機能に関係なく腎保護作用が期待されるため、クリニカル・エビデンスを有するSGLT2阻害薬の積極的な使用を考慮する
糖尿病非合併患者
 蛋白尿陽性のCKD(IgA腎症や巣状分節性糸球体硬化症など)には原疾患の治療に加えてクリニカル・エビデンスを有するSGLT2阻害薬の積極的な使用を考慮する
※いずれも、eGFR15mL/分/1.73㎡未満では新規に開始しない
 継続投与して15mL/分/1.73㎡未満となった場合には副作用に注意しながら継続する
(日本腎臓学会CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation.2022

▸糖尿病合併、非合併にかかわらず
SGLT2阻害薬投与後に、eGFRの低下eGFR initial dip)を認める場合があり、                        早期(2週間~2か月程度)にeGFRを評価することが望ましい
その後もeGFRが維持されていることを確認する
・過度にeGFRが低下する場合は腎臓専門医に紹介を考慮する

2型糖尿病
1.ASCVDの既往がある/ハイリスク
2.慢性心不全がある
3.CKDがある
いずれかに当てはまる場合は
メトホルミン使用の有無にかかわらず
最初からエビデンスのあるSGLT2阻害薬を使用する
▸上記以外の場合は、禁忌でない限りメトホルミンから開始する

Point:SGLT2阻害薬が他科から処方されていないか確認し、薬剤調整を行う(循環器内科、腎臓内科で処方)

SGLT2阻害薬使用上の注意
脱水
 開始後数週間は尿量が増加するため500mL以上の追加飲水を推奨する
尿路、性器感染症
 とくに、膣カンジダ症、尿路感染症、壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)に注意
正常血糖ケトアシドーシス
 SGLT2阻害薬服用中は、血糖値150mg/dL前後でもDKAになりうる
 血糖が正常でも、悪心嘔吐・腹痛・全身倦怠感を訴える患者では尿ケトン体か血中ケトン体を測定する

 尿ケトン体2+以上の患者、極端な糖質制限を行っている患者はハイリスクになる
(SGLT2阻害薬使用によるケトン産生で尿ケトン体1+になることがある)

 SGLT2阻害薬服用中は厳しい糖質制限は行わないよう指導する

サルコペニア
 歩いて通院できる高齢者には処方してもよいが、体重減少には留意する
 高齢者にSGLT2阻害薬を処方するときは、カロリー制限を緩めて蛋白質摂取を増やす

 

Dr.前野のここがポイント

SGLT2阻害薬の重要ポイント

・血糖降下作用だけでなく、
心血管イベントの抑制と腎保護に関するエビデンスが蓄積された
・糖尿病合併の有無にかかわらず心不全やCKDの標準治療薬になっている

2型糖尿病のうち
 ASCVDの既往ハイリスク
 慢性心不全
 CKD
いずれかに当てはまる場合は
メトホルミン使用の有無にかかわらず最初からSGLT2阻害薬を使用する

SGLT2阻害薬を使用する場合は
脱水
尿路・性器感染症
正常血糖ケトアシドーシス
サルコペニア
の4点に気を付ける

 

コメント
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