12月4日に2か月前からの左半身不全麻痺で61歳男性が内科新患を受診した。その日は内科再来を診ていたが、新患担当医師が受診が多くて、診られないということで回ってきた。(再来を診てからなので昼近くになった)
5年前に急性心筋梗塞で地域の基幹病院循環器内科に入院した。糖尿病・高血圧症もあり、2か月くらい通院したが、その後クリニックに紹介された。クリニックには1回受診しただけで治療を中断していた。
頭部CTやMRI検査をしようとすると、お金がないのでやりたくないという。急性の症状ではないので、おそらく脳梗塞を確認するだけにはなるが、検査は必要と伝えた。
胸部X線・心電図と血液尿検査までは受ける、ということで検査した。心不全症状・所見はなかった。血糖 mg/dl・HbA1c11.0%で、血圧も170/ と高値だった。
降圧薬と糖尿病薬、それ抗血小板薬を開始すると伝えると、薬はいらないという。これから市役所の福祉センターに行って、生活保護の手続きをするので、処方は申請が通ってからにしてほしいといわれた。1週間分くらいならそれほどの金額にもならないし、申請が通れば今月分から支払いはなしになる。それでもまた来るといって帰ってしまった。
12月12日にまた受診して、生活保護の申請をしたが、まだ決定はしていないという。支払いはなしでいいらしいので、頭部CT検査を行った。左前頭部に梗塞巣があり、それによる症状かと思われた。その日は薬をもらうというので、降圧薬(Ca拮抗薬)・経口糖尿病薬(DPP4阻害薬)・抗血小板薬(クロピドグレル)を1週間分出した。
12月18日に受診して、生活保護の申請が通ったという。その日は頭部MRIを入れていた。結果は分水嶺梗塞があり、両側の前大脳動脈/中大脳動脈と中大脳動脈/後大脳動脈に認めた。
拡散強調画像で高信号に描出されるので、最近の所見になる。頭部CTを見直すと、放射線科の読影レポートでも「両側前頭葉の陳旧性脳梗塞」とされていたが、MRIの所見に匹敵する変化がすでにあった。さらにMRAでは左内頚動脈は閉塞していて、右内頚動脈にも狭窄がある。
神経症状としては初診時と変わらないが、初診時にMRIを行っていたら、新規の脳梗塞として入院になっていたはずだ。その日は入院してもいいというので、入院とした。
降圧薬はCa拮抗薬にABRを追加して、経口糖尿病薬はDPP4阻害薬にメトホルミンを追加した。血糖が高値の時はインスリン皮下注で補正とした。
この患者さんは喫煙者で、入院するとさっそくその日のうちに病棟で喫煙して、病棟看護師にタバコを没収されていた。翌日からも入院は耐えられないと言い続け、自宅に戻ってもいいかという。病棟看護師から絶対抜け出しますよといわれて、トラブルになる前に退院とした(4日目)。
内頚動脈の狭窄については脳神経外科に紹介したい.。外来でまた話をして、一度は行ってもらわないとまずいと思う。