なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

目の前で倒れた

2023年12月29日 | 心肺停止

 12月26日(火)の午前中は救急当番だった。隣の市の救急隊から心肺停止の搬入依頼があった。87歳女性で、当院の腎臓内科に通院しているという。高血圧症・慢性腎臓病があった。

 搬入してもらうことにしたが、30分はかかるという。確かに距離的にはそのくらいかかる。救急隊到着時、心肺停止で心電図上はPEAだった。(無脈性電気活動pulseless elecrorical activity:PEA)

 家族の目の前で倒れていたので(倒れているところを発見したのではないので)、救急隊としては張り切って心肺蘇生を開始したようだ。ラリンゲルチューブによる人工呼吸と、自動心臓マッサージ器による胸骨圧迫を行っていた。

 当地域の救急隊の特定行為は、地域の基幹病院に連絡して指示を仰ぐことになっている。乳酸リンゲルの点滴とアドレナリン注の指示をもらっていた。隣の市は基幹病院の構成市町村だが、当院かかりつけということで当院への搬入を指示されたのだろう。

 

 瞳孔は散大して、対光反射はなかった。心臓マッサージ器をいったん止めると、徐脈性のPEAが出現した。脈は触れない。そのまま救急隊の処置のまま心肺蘇生を継続したが、PEAから心静止になった。

 蘇生術を継続して、家族(娘)に入ってもらった。数日前から体調不良があったが、受診を勧めても様子をみると言っていたこと、また目の前で倒れたのでショックだったようだ。母親に呼びかけながら、号泣していた。

 さらに心肺蘇生を継続したが、状況は変わらない。救急隊が心肺蘇生術CPRを開始してから1時間以上経過している。号泣が治まるのを待って、蘇生術を中止するしかないことを伝えた。またひとしきり泣かれたが、了解された。

 

 当院かかりつけといっても、今年の5月に居住医の内科医院から当院の腎臓内科外来に紹介されてからの通院だった。高血圧症による腎硬化症による慢性腎臓病(CKD)とされていた。年齢的には腎生検とはならない。

 内科医院のARB・Ca拮抗薬・βブロッカーの処方をARNI(エンレスト)とSGLT2阻害薬(フォシーガ)に変更していた(βブロッカーは継続)。受診時の浮腫は軽減していたようだ。胸部X線で心拡大がある。心電図は四肢誘導で低電位があるが、虚血性変化は有意ではなかった。

 数日前から体調不良を訴えていて、息切れがすると表現していたようだ。病院受診を勧めたが、症状が軽減して大丈夫と言っていた。正確にはわからないが、悪化と軽減を繰り返していたらしい。

 その日は外出した娘を、調子が悪いと呼び戻した。トイレに行く起き上がろうとして、そのまま倒れた。よびかけても反応がないため救急要請した。

 

 Autopsy imaging(AI)を行った。頭部CTは脳委縮のみで出血や明らかな梗塞は認めない。胸部CTで両側肺にうっ血~水腫の変化があるが、1時間以上の自動心臓マッサージ器の影響があるので、解釈しがたい。

 心臓死であることは間違いない。うっ血性心不全の悪化としては症状の悪化~軽減が合わないか。冠動脈疾患が疑われるが、確定はできない。

 肋骨骨折を来していたが、あの自動心臓マッサージでは仕方がないのだろう。(救急隊にはいえないが、高齢者が自動マッサージ器を装着されているところは拷問にしか見えない)

 

コメント
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