98歳女性。昨年春に間質性肺炎の増悪で入院した。通常は基幹病院の呼吸器科へ紹介するが、96歳だったので(相談しても引き受けてくれないだろう)家族に話をして当院で診ることにした。思いのほかステロイドパルス療法が効いて、退院できた。今年の春に2度目の増悪で入院して、今度はダメだろうと思われたが、また良くなって退院できた。ただし、一度目に比べるとかなり陰影が残っていた。昨夜救急搬入されていて、当直医から申し送られた。どちらかというと、細菌性肺炎の併発のようだが、厳しい状態には違いない。初発から1年半経過して年齢は98歳になっている。
昨日は当直だった。午前1時過ぎに24歳女性が頭痛と嘔気で受診した。数年前に神経内科を2回受診してトリプタン製剤(マクサルト)を処方されていた。ふだんは市販の鎮痛剤で治まるので、その後は病院には来てなかった。頭痛は右側頭部~頭頂部で、6時間続いているという。嘔吐もあった。鎮痛剤はまったく効かないという。拍動性かというとジワーッと痛いという。林先生の講義でも、片頭痛は拍動性とは限らない、拍動性であることが項目にない診断基準もあると言っていた。まあこの患者さんの場合は、既往歴からあっさり片頭痛とわかるが。イミグラン皮下注と点滴・プリンペラン静注でしばらく休んでもらった。7時ごろ他の患者さんを診察した時に聞くと、すっかり頭痛は治まっていた。院内にある経口トリプタン製剤はイミグランだけなので、それを数回分処方して帰宅とした。
昨日の入院は、38歳男性の上行結腸憩室炎(昨年に続いて2回目)、71歳男性の誤嚥性肺炎(パーキンソン病で嚥下障害)、81歳女性の誤嚥性肺炎(脳梗塞後遺症、寝たきり状態)、56歳男性右尿管結石だった。
金曜日はファイザー製薬の若手医師セミナーがあった。今回は福井大学病院総合診療部の林寛之先生だった。ふだんはファイザー製薬事業所のインターネット中継で見ている。今回は、東京都美術館で開催されているマウリッツハイス美術館展を見たかったので、直接東京での講義を聞いた。フェルメールの真珠の耳飾りの少女を見るついでといっては何だが、生の林先生を一度見たかった。テーマは頭痛の鑑別診断だったが、凝ったスライドで、笑いながら楽しく聞いた。内容が濃いので何度も繰り返して聴きたいものだ。内科学会の講演会はインターネットで繰り返して見られる。ファイザーのセミナーもできないのだろうか。DVDで販売するのは版権の問題でできないと聞いたことがある。
「相談があるんですが」と、他の医師から相談を受けた。
94歳女性で肺癌だった。家族の話では、2年前に胸部異常影を指摘されて、内科医院から基幹病院呼吸器科に紹介された。高齢なので肺癌で間違いないとしても治療の対象にはならないため、経過観察となったらしい。
今回は軽度の呼吸苦があり、当院の救急外来を受診した。酸素飽和度が低下(室内気で酸素飽和度88~89%)していた。左上肺野に腫瘤を認め、胸膜陥入像を伴っていた。入院して少量の酸素吸入を開始して、症状は軽快した。食欲も十分あるという。肺癌そのもので低酸素になるがというと、よくわからない。といってCOPDでも間質性肺炎でもない。陳旧性肺結核の残存陰影が少しあるが、それでも説明しがたい。経過が長いので、画像上明らかではないが、癌性リンパ管症になりつつあるのか。
この年齢までひとり暮らしをしていて、子供たち(といっても70歳前後)は、引き取って同居することはできないという。退院するとしても在宅酸素療法継続になるし、さすがに家事はできない。予後は3~6か月見込める状態で、その間ずっと病院に入院したままというわけにもいかない。在宅酸素になると、施設での受け入れはできない。療養型病床のある病院に転院依頼して、ベット待ちにするしかないようだ。
病状がもっと進行していて、予後があと1か月という状態ならば、そのまま入院継続となる。まだまだ持ちそうなので、いったん退院にするしかないというのも変な話だが、今の入院費のシステムではやむを得ない。
80歳女性。急性腎盂腎炎で泌尿器科を受診した。抗菌薬投与で軽快治癒したが、倦怠感・食欲不振を訴えたため、内科に紹介された。癌が隠れていたというようなものではなく、気分的なものと判断された。さて、夜間の不眠も伴っていた。都市部だったら、精神科クリニックへ紹介となるところだろうが、郡部ではそうもいかない。弱く抗うつ剤を使用して経過をみることにしたが、何を使うかだった。いきなりSSRI処方はためらわれた。とりあえずスルピリド100mg/日を処方してみた。1週間で症状が軽減してきた。さらに1か月続けたところ、すっかり症状がとれて食欲も良好になった。夫の介護が必要になったことで精神的にまいっていたと、今まで言わなかった家庭の事情を教えてくれた。まだ残暑が続いているので、もう2週間分継続して中止することにした。中止してまた具合が悪くなった時に再受診してもらう。軽いうつ状態の時に短期間使うのにはスルピリドはいい薬だと思う。成書によると、スルピリドは日本でだけ使われているそうだ。
40歳男性。1週間前から発熱が続いて、内科外来を受診した。咽頭痛、咳、胸痛、腹痛、背部痛なし。診察しても所見はない。白血球数9000、CRP8と炎症反応上昇。胸部X線と尿検査は異常なし。夜間に高熱があり、悪寒戦慄を伴うという。血液培養2セットを採取した。3か月前から歯科で治療をしていて、今は痛みがないが、当初は歯肉が腫脹して疼痛があったという。心雑音は聴取しないが、心内膜炎を疑って循環器科医に心エコーを依頼した。明らかな疣贅はなかった。胸腹部造影CTを行うと左肺にわずかに浸潤影様の陰影が淡くあった。腹部には膿瘍を認めない。発熱があった日に排便時に出血して痛みもあったという。外科クリニックを受診して座薬の軟膏を処方されていた。肛門周囲膿瘍は診察所見としても、CT上でもなかった。これはこれで発熱とは関係ないようだ。肺炎でいいのかと言われると、何とも言えない。入院はしたくないとのことで、食欲もあり全身状態はよいので、抗菌薬内服で経過をみることにした。処方はクラビットにした。ウイルス感染ではないので、無難な処方だと思うが、どうだろうか。
38歳男性。3週間前から咳が続いて内科医院を2回受診していたが、症状が続くため当院内科に紹介された。初めの3日間は発熱があったが、その後はない。マイコプラズマ感染を考慮したか、感冒の時は必ず処方するのか不明だが、クラリスが2回処方されていた。あとは鎮咳剤とこれもよくあるホクナリンテープも処方されていた。こども二人と妻も同じ症状で、こどもは当院の小児科でRSウイルス感染と診断されたらしい。聴診では呼吸音に異常はなかった。RSウイルスの迅速試験が陽性だった。白血球数は正常域で、CRP0.7と微妙な値だった。こどもよりうつされた親のほうが症状がひどいことになる。咳は日中と夜間で同じ程度で、夜間の喘鳴はないらしい。短期間ステロイドをつかうかどうか迷ったが、喘息発作様の症状はないので、リン酸コデインなどで対症的に経過をみろことにした。
70歳台後半の女性。数年前から食事がほとんどとれなくなった。消化管の検査をしても異常はなかった。普通の食事をほんの少しだけ食べるが、あとはウィダーインゼリーを1日数パックとる(飲むというべきか)。うつ病かというと、気さくに誰とでもよくしゃべる。心気症的といえば、そんな気もする。ふだんは帰近くの内科医院から胃腸薬をもらっている。以前から、点滴を希望して当院の内科外来に時々きていた。この夏は暑く、週に2~3回来ることもあった。ただし外来で末梢の点滴なので、カロリーとしては100Kcalしかない。水分はとれるので、水分補給としてはあまり意味がない。気分的に良くなって帰っていた。少なくともここ1年は体重は変わらない。抗うつ剤を使ったこともあるが、あまり改善はしない。このままウィダーインゼリーで生きていくのだろうか。
21歳女性。3週間前に咳が続くという訴えで内科新患外来を受診した。当初は気管支炎の処方で経過をみたが、夜間に喘息発作が毎日起きているらいいとわかり、喘息の治療を開始していた。2週間後に来たが、症状は軽減してい(1週間後に歳受診にすべきだった)。吸入ステロイドとテオドール・シングレアの内服を4週間分処方した。吸入ステロイドはシムビコートを使用した。
ピークフローを測定していくべきだが、実際はほとんどやっていない。(今はいない)呼吸器科医がいたころも、あまり使っていなかったようだ。ピークフローメーターは貸与して指導料をとるはずだが、安定すると近医に紹介する病院ではやりにくいシステムだ。糖尿病の自己血糖測定も器械とセンサーを貸与して指導料をとることになっている。当院では2か月から3カ月おきの外来受診なので、収益的には損をしている。病院ごとに使用している器械の種類が違うのも困る。患者さんが直接器械を買うことにしてもらったほうがいいと思うのだが。
それにしても、同じ時期に受診した喘息初発の30歳台女性は、その後来ていない。近くの内科クリニックに行っているのだろうか。
74歳男性。内科医院から貧血で紹介されて、当院の内科新患外来を受診した。今月の健診でHb6.3と著名な貧血だった。ご本人は良くしゃべる人で元気いっぱいだった。食欲も良好だという。毎年健診を受けているが、血球検査は昨年からになっていて、昨年はHb7.0だった。わかってみると、1年前からそれほど変化していない。つまり緊急性はないことになる。MCVが60台の小球性貧血で、血清鉄6・血清フェリチン12と鉄欠乏性貧血だった。30歳台に十二指腸潰瘍で胃切除術を受けていた。上部消化管内視鏡検査では残胃に潰瘍や腫瘍はなく、大腸癌は否定できないが、胃切除後の鉄欠乏性貧血でよさそうだった。まずは鉄剤で経過をみることにした。C型肝炎があることも判明したが、これは胃切除時の輸血のためだろう。確かにそのころはH2ブロッカーもPPIもなく、胃十二指腸潰瘍の治療は安静か手術しかなかった。