スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

KEIRINグランプリ&不幸の期待

2018-01-02 19:10:37 | 競輪
 12月30日に平塚競輪場で行われたKEIRINグランプリ2017。並びは新田‐渡辺の福島,平原‐武田‐諸橋の関東,深谷‐浅井の中部,三谷に桑原。
 スタートは取り合いの形でしたが桑原が誘導の後ろを確保して三谷の前受け。3番手に深谷,5番手に平原,8番手に新田の周回。残り3周のバックの出口から新田が上昇開始。平原が渡辺の後ろに続きました。ホームで新田が深谷の横に並ぶと深谷は内で下げ,新田が桑原の後ろに。引いた深谷はすぐに反撃し,バックで三谷を叩いて打鐘。深谷の動きにうまく乗った平原が3番手,三谷が6番手,新田が8番手の一列棒状でホームを通過しバックへ。新田が発進しましたがこれを待たずに平原が発進。しかし浅井が牽制すると平原はあっさりと失速。新田はこのあおりで外に浮く形に。牽制で開いたところを狙った諸橋が浅井を押し上げて自ら4コーナーで落車。これに深谷と桑原が巻き込まれました。直線は先頭に立った浅井に平原の勢いをもらった武田が迫りましたが届かず,優勝は浅井。武田が半車身差で2着。捲り追い込みの新田は2車身差の3着まで。
 優勝した三重の浅井康太選手は2017年は優勝がなく,上位に入着することで賞金を稼いでここに出走。グレードレースは2016年11月の武雄記念以来の優勝でビッグは2016年のサマーナイトフェスティバル以来で5勝目。KEIRINグランプリは2015年以来2年ぶりの2勝目。当地では2016年に記念競輪の優勝があります。現状の最強選手は新田で,優勝候補の筆頭であるとは思っていましたが,位置取りに失敗すれば捲っても届かないというケースは想定でき,その場合にはおそらく先行するであろう深谷の番手の浅井にチャンスが回ってくるケースもあるとみていました。結果的にいえば平原も新田も,仕掛けるタイミングがあまりよくなく,絶好の番手を生かしきることができたというレースであったように思います。昨年は不振といっていい成績であったといえるでしょうが,力が衰えているというわけではありません。

 心情の動揺animi fluctuatioは現実的に存在する人間のうちに生じる反対感情ないしは相反する感情についての分析です。つまりこれは感情affectusに関する分析であって,ここで思想といっている反省的認識に関する分析ではありません。よって第三部定理二三備考も,思想について直接的に言及していると読解することは許されません。ただ,この種の心情の動揺が生じ得るということは,ある人間が自分の感情を反省的に認識することによって,最初にあった感情とは別の感情を抱く場合があり得るということの可能性を暗に示唆することは明らかでしょう。そこでここから,そうしたことを具体的な例として考察します。ここでは反対感情である喜びlaetitiaと悲しみtristitiaを対象にします。Aによって喜びを感じるということとAによって悲しみを感じるということは,反対感情を抱いているというだけでなく,原則的には同一の人間のうちで両立し得ない相反する感情であると考えられますので,これは反対感情と相反する感情を同時に考察するということでもあります。
                                
 たとえばAという人間が存在するとして,Bという人間の不幸に喜びを感じるという場合があったとします。これは第三部定理二三のような場合にも生じ得ますが,そうでないような場合にもあります。たぶん僕が学生の頃だったと思いますが,途上国のある少女が買われていくというドキュメンタリー番組がありました。その番組ではその少女が買われていったことになっていましたが,実際には制作側でそれを阻止していたので,この部分はいわゆるやらせであったのです。ではなぜそのようなやらせが成立し得たかといえば,視聴者は途上国の少女の不幸を期待していたからです。少なくとも制作サイドはそう判断したのです。
 この期待は欲望cupiditasであって,欲望は第三部諸感情の定義一により,受動的である限りにおいて人間の現実的本性actualis essentiaです。よって期待すなわち欲望が満たされることは,第三部定理七でいわれる現実的本性actualem essentiamが促進されることなので,それによって人間は喜びを感じるのです。これは僕たちが不幸な人間の不幸を,そうとは意識せずに期待しているところがあるからであって,この場合も不幸に喜びを感じるのです。
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