『世界』を読む会

寅さんの博も読んでいる『世界』を読んで、話し合おう。

李信恵×安田浩一 「人間と社会を傷つけるヘイトスピーチ」を読んで

2014-11-29 14:14:37 | 日記

『世界』2014年11月号

●  李信恵×安田浩一 「人間と社会を傷つけるヘイトスピーチ」を読んで

                              須山敦行

◎ ネットなどで、ひどい発言の仕方をする人がいることは、驚きながらも、知っていた。
  「こんなことが、ネット上には起きているんだよ」と、ネットが苦手なお年寄りの友人に知らせていたりした。
  そんな具合で、「ヘイトスピーチ」のことは知っているように思っていたが、そんなものではなかった。
  現実に「ヘイトスピーチ」を浴びせられている当事者、被害者の声を聞かされて、現実を生々しく深く認識することが出来た。
  知っているように思っていたが、本当はそんなもんじゃないと知った。

◎ 信じられないようなことが、現実に起きている。
  あの戦争中には、今から考えて、信じられないようなことが、起きていた。
  つまり、戦争中の特別なことが、今、私たちの回りで現実化しているのでは。
  現実化しているのだ。
  アンネ・フランクの悲劇は、過去のことではないのだ。
  「ヘイトスピーチ」を巡って、日本に生じている状態は、恐ろしいものなのだ。
  今を知ることが出来た気がする。

◎ この問題に対して、私たちの政府は、どのような対応をしているか。
  どのような位置に立とうとしているか。
  そこで、私たちは、どのように行動すべきか。
  被害者との関係の中で、自分はどう立って、どう行動すべきか
  大いに考えさせられた。
  


事実

昨年はほぼ一日に一回のヘイトデモが行われた

ヘイトスピーチの本質

安田の体験

13年2月24日、大阪鶴橋(在日コリアンが多く暮らす)での在特会のヘイトデモ
顔が知られている李さんが名指しで誹謗中傷されることがなく、ほっとして李さんに「よかったね」と言ってしまった。
李さんは表情を歪めて、泣いて、
「死ね、ゴキブリって私はずっと言われていたやんか、あれは私に向けられた言葉やないの?」と。
そう言われて初めて気がついた。
ヘイトスピーチは「言葉の暴力」と考えていたが、暴力そのものだと実感した。
ヘイトスピーチは暴力そのものであり、被害者を生み出しつづけている
「死ね」「殺せ」という言葉は、沿道にいる人にも聞こえてくる。
その中には在日コリアンもいます。
被害者を量産していくもの

◎ つまり、安田は、李さんの涙に触れて初めて、傷つけられている当事者の傷、痛みを実感したのだ。

 

なぜ提訴に踏み切ったのか

李信恵は今年8月、ヘイトスピーチを繰り返す「在日特権を許さない市民の会(在特会」と同会の桜井誠会長、ネット上のブログ運営者に損害賠償を求める訴訟を起こした。

・13年2月11日にツイッター上で
「良い朝鮮人も悪い朝鮮人も追い出そう。んでこういうの(李信恵のこと)は殺ろう」という書き込みがあり、調べていくと、書き込んだのはある在特会のメンバーだということがわかりました。
・在特会会長の桜井誠が私(李)に対して五寸釘を送りつけようという話をしていた
・ネット上で中傷してきた相手は女性器のアップ写真を送りつけてくる

ネット上の「まとめサイト」と言われる「保守速報」の管理人もあわせて提訴
・それは、差別で金を稼いでいるから〈李〉
 差別的な文言を連ねてアクセスを集めて、アフィリエイト、つまりネット広告などで金を稼いでいる〈安田〉
・ネットに差別を書き込んでいる人間だけでなく、それを煽動してきた人間を訴えなければならない〈李〉
・匿名の人間が投稿する差別的な動画によって新たな被害が生まれているという事実への想像力と危機意識が、動画サイトの運営会社などに欠如している。〈安田〉

◎ この提訴について、安田は、
 「なぜ被害者がさらに矢面に立たなければいけないのか。
  提訴が勇気ある行為だという評価が多数あり、それに私ももちろん同意はしますが、
  私たちの社会はなぜ被害者が矢面に立たないと問題が解決できないのか。
  忸怩たる思いです。」
  と言っているが、注目すべき問題点だと思う。

 


国家を借りてきて話をする風潮

〈李〉(在特会やチャンネル桜について)「美しい日本」を自賛して、「保守」を自任し、「国を守る」と声高に主張しながら、自分の周囲にいる人間を守ることさえできていない。彼らが在日外国人やホームレス、シングルマザーといった社会的弱者に目を向けることはありません。
〈安田〉国家を代弁することは簡単で、誰にでもできる一方、地域社会や身の回りで本当に困っている人に目を向けることはきわめて難しい。身近な問題に目を向けることなく、国家を借りてきて話をする人が増えているように思います。
 「保守」を自任するのであれば、地域社会をいかに立て直すかから始めなければならないのに、なぜか国家から語り起こす。それによって脆弱な自我をかろうじて保っているという人があまりにも多すぎます。


◎ この「国家を借りてきて話をする人」という言葉に惹かれた。
  そんな風潮が大手を振っていくような世の中になると恐ろしいのということだ。
  肝に銘じて置きたい言葉だ。

 

 

すべてのマイノリティが標的とされる

在日中国人、生活保護受給者、障がい者、水俣病患者、被爆者
ありもしない「被爆者特権」という言葉まで飛び出す。

これは、社会的弱者とされてきた人や、戦後民主主義の中でぎりぎりの権利を守ろうと運動してきた存在に対するバックラッシュだと私は考えています。
彼らはマスコミ批判も含め、戦後民主主義的な存在へのバックラッシュの波に乗っているのです。

現在の最大の問題は、
こうした在特会的な発想を後押しするような社会的雰囲気があることです。

 

◎ 「~特権」という言葉もキーワードだ。
  李さんが呼び掛けている、マイノリティ間の横の連帯は、大切な視点だ。

コメント
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