富岡『世界』を読む会・10月例会の報告
(郡山さんから)
富岡の10月例会は、10/20吉井町西部コミュニティ―センターにて、5人の参加のもと次のテーマで開催しました。
特集1.脱成長
1.斎藤幸平氏の「脱成長コミュニズム」実現の道筋として、山本論文は「下から=ローカル」からの、そして上村論文は「上から=グローバル」からの構想を展開します。読書会は2本セットで議論をしました。
2.山本論文の「余剰エネルギー」をキーワードにした現代文明批判「近い将来、社会が利用できる余剰エネルギーが恒常的に減少し始めるという現代文明はじまって以来の未体験ゾーンが顕在化してくる可能性は高い」との指摘は、「原油埋蔵量の枯渇」以前の「余剰エネルギー」の減少による文明崩壊を警告するものです。多くの気候変動問題の論者が、エネルギー消費の結果としての温室効果ガス排出と地球温暖化を論じていることからすると、エネルギー供給からアプローチした古典的な問題提起ですが、逆に新鮮に感じられました。しかし、エネルギーの定義が広汎すぎて曖昧だとの感想も出されました。
3.「電話モデル」=中央集権的・集中型と「インターネット・モデル」=自律・分散・協調型のアナロジーから、国家システムの東京一極集中型と地方分散・自立協調型を描こうとしているのは、説得的。そして「ニュー・ローカル」。今後、「松本市基本構想2030」を素材に、山本氏には、具体的・実践的な「ニュー・ローカル」論を展開してほしい。
4.上村論文の「世界政府」の評判が悪い。「2045年までに世界政府を設立」と言われると、一同に「眉唾」と反応しました。編集者のいう「政治的想像力を磨くため」と思っても、過去の世界政府設立の議論や運動が、ことごとく失敗し雲散霧消してきたことから、「世界政府」という言葉自体に、うさん臭さを感じるようです。
5.グローバル・タックス国際連帯税については、EU先行による航空券連帯税や地球炭素税の実現、法人税率15%の国際課税ルールの合意達成など一定の前進があり、「世界政府」とは違って現実感が極めて強い。上村論文の言う「グローバル・タックスを財源とする国際機関は拠出金を財源としないので、純粋に地球公共益を追求できる。さらにそれは自主財源を持つことを意味するので、政治的にも、財政的にも国家からの自立性が高まる」との指摘は、説得力があり希望を持つことができます。「国連+国際連帯税」での未来構想こそが、胸躍らされわくわく感のある方向性ではないか、と思います。
東大作『アフガン政権崩壊―失敗の教訓と平和つくりへの課題』
1.アフガニスタンにおける英・ソ・米の歴史的敗北と、米国のベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争とつづく敗北の歴史。「民主主義を守る」とか「社会主義を守る」といった旗を掲げても、侵略戦争は失敗する、という歴史的教訓。
2.「タリバン=野蛮なテロリスト」というメディアが流し続けてきたイメージにとらわれ、米国=アフガン政府の統治能力の低さと、タリバンのアフガン伝統に根差した統治能力の高さの側面を、私たちは見失っていた。国連要員の立場からの筆者の証言は、タリバン理解にとって貴重。
3.緒方貞子氏「02アフガン復興会議」日本主導「12アフガン復興会議」中村哲「ペシャワール活動」などのの貴重な遺産を継承し、「現地の「人間の安全保障」に配慮しながら、その国の人々自らのオーナーシップによる統治の改善と、持続的な平和づくりを息長く支援していくこと」は、 平和憲法をもつ日本ならではの貢献として自信をもってすすめるべきです。
4.しかし、日本がインド洋上にて米軍への原油の補給活動という兵站を担い、間違いなくアフガン戦争へ加担していたことを記憶にとどめるべきだと指摘されました。日本社会における平和主義と軍国主義のせめぎあい、あるいは二面性。
今回の共通テーマは、
○(1).脱成長
①山本達也「ニュー・ローカルの設計思想と変化の胎動」
②上村雄彦「グローバル・タックス、GBI、世界政府」
○(2)東大作『アフガン政権崩壊―失敗の教訓と平和作りへの課題』
でした。
◎ 富岡の雑誌『世界』を読む会、11月例会 の予定
●日 時 11月17日(水)
●場 所 高崎市吉井町西部コミュニティセンター
吉井町長根174-6
●時 間 午前9時半
●持ち物 雑誌『世界』11月号
○共通テーマ
(1)特集1反平等
メイン 酒井隆史 『反平等という想念』
サ ブ 新村 聡 『平等と公平はどう違うのか』
大沢真理 『生き延びるためにジェンダー平等』
(2)国谷裕子 『人が人らしく生きていける社会を』
です。
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