● 金子勝「『地方創生』という名の『地方切り捨て』」について
須山敦行
《全体的な感想》
◎ 論の立て方が明快で、分かりやすい。
◎ 「脱成長」には、具体的ビジョンがない、という批判は当たっているのだろうか。
「脱成長」は雇用を生まないのだろうか。
筆者は、雇用を生むのに、あくまでも成長が欠かせないという見方になっているが、そうなのだろうか。
「成長至上主義」の見直しは、地球という視座や、人間のあり方にまで立ち入っていて、イノベーション志向からの脱出も視野に入っているのではないか。
◎ 筆者のような「六次産業化」論者と「脱成長」論者の、対論に注目していきたい。
《内容の要約》
論の立て方
産業構造と社会システムは
二〇世紀の「集中メインフレーム型」から二一世紀の「地域分散ネットワーク型」へ替わりつつある。
安倍政権は二〇世紀の「集中メインフレーム型」の発想から抜け出せないでいる。
「集中メインフレーム型」
大規模化によって効率化とコスト削減を図るやり方であり、大量生産・大量消費の経済社会システムを生み出した。
「地域分散ネットワーク型」
スパコンとICTの発達によって、一つひとつが小規模で分散していても、消費者のニーズを瞬時に反映させ、ネットワークを組めば、十分に効率的になる時代になった。
《 内橋克人 》
食と農業・エネルギー・社会福祉の自給圏を基礎に経済成長させるべき
フード・エネルギー・ケア=FEC
《 スマート化 》
スマート化とは、情報システムや各種装置に高度な情報処理能力あるいは管理・制御能力を持たせることである。
一般的には、スマート化は空調システムや送電網といったインフラ設備に情報処理能力、情報管理能力を搭載して高度な運用を可能にすることを指す場合が多い。社会インフラのスマート化はICT(情報通信技術)が実現を目指す目標の一つといえる。スマート化された送電網はスマートグリッド、地区全体においてスマート化が進んだ都市はスマートシティなどと呼ばれる。
《 六次産業化 》
地域単位で、一次産業(農業)、二次産業(加工・製造)、三次産業(販売、サービス)を垂直的に統合することによってコストを引き下げるともに、地域に雇用を創り出すことで所得の向上を図る方法である。
《 POSシステム 》
店舗で商品を販売するごとに商品の販売情報を記録し、集計結果を在庫管理やマーケティング材料として用いるシステムのこと。
《 エネルギー兼業農家 》
外部に依存する経済 → 自ら将来を決定できる経済
自ら投資し、地域の資源をどう使ってどのような農産物や再生可能エネルギーを生産するかを自ら決定し、自ら雇用や所得を作り出す。
「脱成長論」批判
「脱原発」と「脱成長論」のセットで、これに対抗しうるだろうか。
たしかに、「脱成長論」はこれまでの成長至上主義を見直すという意味では説得力があるが、地域においていかに若者の雇用を創出するかについて具体的ビジョンを語っていない。
筆者の主張
脱原発と再生可能エネルギーを突破口とする「地域分散ネットワーク型」の産業構造と社会システムへの転換こそは、
安倍政権のナショナリズムと戦争のできる国作りに真に対抗しうる、地域民主主義を基盤とした社会構想なのである。