貧血で紹介された老女。
病歴聴取で、体質性黄疸Crigler Najjar 症候群 と診断されたということがわかりました。
診断確定は、今から50年以上前らしく、診断確定を知っているのは本人だけ。
姉妹ともに生下時の黄疸=新生児黄疸、両親が血族結婚 ということが診断確定の根拠だったらしいということが問診から判明し、科学的根拠に乏しい類推による診断であったらしいので、頭の片隅において、
虚心坦懐に新患として患者、家族からの病歴、血液検査データから、貧血の原因精査をすることにしました。
骨髄像、末梢血液像は、教科書的とはかけ離れた稀な像でした。
鉄代謝の異常を示す数値、
血液の古典的な検査も施行
生化学的データも軽度の変化を示しました。
遺伝性の肝代謝異常によるヘモクロマトーシス
次が面目躍如たる医師、宇塚善郎の考え方で、
患者は高齢まで、支障なく生きてきたので、効率の悪い徐鉄療法では回復は望めないだろうが、
子孫に対して、疾病予防対策指針を提示することが重要 とのことで
基礎知識から、核心に向けての文献検索での診断への方策を確認しながら、突き進まれました。
現状の医療保険制度の下では、労力に報われる報酬は得られないのですが、
診断確定、科学的真理への探究心、しかも単なる解明のためではない
子孫への対策をも考えた思考法にあらためて医師のモラルをみました。