小泉前首相が突如として原発即ゼロを主張し始めて各方面に波紋を投げかけている。従来の政治姿勢からしてどうもまゆつばものだと思っていたが、昨日の日本記者クラブでの発言などを聞くと、かなり真剣なようだ。
「エネルギー政策などの展望を欠いた無責任論」という批判に対しては、「核のゴミの捨て場も決まっていないで再稼働を続ける(つまりゴミを増やし続ける)方がよほど無責任だ」と切り返し、「政治的な方向さえ決めれば、エネルギーの補完策などいくらでも出てくる。専門家や官僚が総力を挙げて考えれば、新エネルギーなどいくらでも出てくる。輸入などで金がかかるというが、原発建設の金が浮くのでそれを向ければいい」と言うあたり小泉氏らしく小気味いい。
その矛先は安倍首相に向けられ、「首相が決断すれば『原発ゼロ』はできる。首相の判断力、洞察力の問題だ」と迫っている。(本日付毎日新聞一面)
加えて、「野党はおおむね原発ゼロだし、自民党内も半々だ」と情勢の読みまで示している。10日に行った毎日新聞の世論調査によれば、野党支持者の約7割は小泉氏の主張を支持しており、自民支持層も40数%で賛否が拮抗しているので、小泉氏の情勢分析は当たっているようだ。
「首相が決断すれば何でもできる」と、小泉氏と安倍氏の間で話されるのは、なんだかファッショ的なにおいがして怖いが、ここは何はともあれ『原発即ゼロ』の方向を固めてもらいたいものだ。