長いこと酒を飲んできた。その思い出はつきない。酒だけではなくて、飲みながらいろいろなものを食べた。飲みながらいろいろな話をした。時には高歌吟唱し踊りまくったこともある。酒は、その液体だけでは存在しえないものではないか?
飲み屋に入り酒を注文すると、酒と共に「つきだし」が出てくる。頼みもしないのに必ず出てくる。客もそれを当然のこととして、箸をつけ、盃を呷る。「つまみ」とか「あて」とか呼ばれ、それに続き注文する料理ともども、酒を飲むには欠かせない。
しばらく飲んでいると、それだけでは足りなくなる。店主や女将とたわいのないことを喋り、話が弾むと「もう一杯!」となる。同僚が居れば、話は会社の話になる。「だからうちの会社はダメなんだ!」、「あんな部長では、会社の将来に夢はない!」などと、悪口を言いながら酒が進む。
酒はさまざまな食べ物と共にあり、果てしない話題と共にある。つまり、「さかな」と共にあるのである。「さかな」とは何か? 広辞苑を引くと次のように書いてある。
「さかな … 肴、魚 酒菜の意」とあり、次の二つの説明が続く
① 酒を飲むとき、添えて食う物
② 酒席の興を添える歌謡や話題など
いわゆる「さかな=肴」とは、この二つの意味を含むのである。「さかな」と言えば何となく魚を意識し、魚介類を描くが、それだけでなく「菜」、つまり酒と共に食す料理一般を含み、もっと広く、「酒席を盛り上げる歌や話題」をも意味しているのである。
こうなると「お酒のさかな」は、単なる「つきだし」や「「つまみ」や「あて」などという言葉では収まらない。これまで飲んできた思い出と共に、「お酒のさかな」を辿ってみることにしよう。