寒い冬だった。いや、その寒さは今も続いている。異常な寒さを感じたのは、83歳の年寄りだけではなかったようで、だれに会っても寒さを訴えていた。しかし、季節は必ず移ろう。
散歩コースにしている松澤病院一周の一角にある公園の早咲き桜が、いつの間にか3,4分咲きとなっており、その下を黄色い菜の花が満開を誇っていた。
家に帰ると、娘が雛人形を飾っていた。しかも、音楽室のグランドピアノの上と、リビングのテレビの横、それに玄関の3ケ所に飾っていた。ピアノの上のお飾りには、以前はぼんぼりやお供え物がついていたが、それらは省略されいたが私の心は和んだ。ともすれば失われがちな伝統行事を、守り続けるというのは大変なことかもしれない。
「いいものだなあ~」と私がつぶやくと、娘は、「…しかし、心にゆとりがないと出来ないこと…」と言った。実は、昨年は雛人形は飾られなかった。娘の心にゆとりができたのだろうか? それとも、無理をしてでも伝統を守ろうとしたのだろうか?