苦しみながら公演に辿り着いたミャゴラトーリの『ドン・カルロ』(演奏会形式)は、素晴らしい出来栄えで参加者の絶賛を浴びた。私のような素人にも、歌手たちが120%の実力を発揮したのではないかと思えるくらい感動した。
ヴェルディ晩年のこの大作(原作シラー)は、長大かつ難解なテーマであるが、司会者の適切な解説と、素晴らしい字幕が観客の理解を助けた。何よりも歌手たちの圧倒的な歌唱力が、聴く者の心を打った。
私は、ミャゴラトーリにこのような力を持った歌手たちが集まっていることを心から嬉しく思った。加えてこの演奏会の成功には、公演に至る過程を身近に見てきた者として代えがたい喜びがあった。
思えばこの企画は、コロナですべての演奏の機会を奪われた歌手たちが、我が家の音楽室で始めた勉強会に端を発する。「こんな機会に、じっくりと基礎的勉強に取り組みたい」、「できることなら難しい課題に挑戦したい」と選んだ曲が『ドン・カルロ』であったと聞く。
夏のさ中、三々五々集まって続けた勉強会の成果は、やがて文化庁の認めるところとなって、その支援も得て今回の演奏会になった。我が家の小さな音楽室が何らかのお役にたった、ということも、この老体の喜びの一因であったのである。
カーテンコールで観客の拍手に応える出演者
参加者と懇談するテラッチ(寺田宗永)さん
10年ぶりミャゴ出演のジョン・ハオさん(右)