旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

淳の七回忌(大分の旅)④ … 城下かれいハプニング

2021-11-26 10:32:14 | 

 

 この旅の目的の一つに、日出の名産「城下かれい」を食べることがあった。このかれいは学名を「眞子がれい」と言い体長40~50センチ、海浜の浅瀬に住んで海底から湧く真水を好んで生殖する。日出も、別府湾にせり出す暘谷城の城壁の下に湧く真水に稚魚を放流し養殖している。昔は、庶民は食べることのできなかった高級魚と言われている。

 私は大分県の食の名産は、臼杵のフグ(肝付き)、日出の城下かれい、佐賀の関の関アジ、関サバと思っているが、弟も義妹も食べたことがないというので計画したのだ。

 お店は日出の老舗割烹『幸喜屋』、刺身はもちろん最後の寿司まで城下かれいずくしの10品フルコース(お代は8000円)、酒は杵築の名酒「智慧美人(ちえびじん)」純米吟醸と純米酒、地元料理に地元酒と文句ない。
 宴は進み、かれいの形をしたお皿に刺身が盛られてくると、義妹が運んできた賄い婦に怪訝そうな顔で訊ねている。「この魚は何ですか?」、聞かれた賄い婦は「これが城下かれいです」と胸を張る。
 事件はこの時に起きた! 義妹が私に向かって言う。
「私は今まで、シロシタカレイというのはカレイライス(白舌カレー?)と思っていました。かれいって魚の鰈(かれい)ですか。私は、わざわざ食べに行くカレイライスとは相当なものだと思い、これまで出た料理は前菜だと思っていました」
 これには唖然とした。私はちょうど注ぎ足した盃を取り落そうとしたほどだ。彼女は城下かれいのフルコースをカレイライスの前菜と思って食べていたのだ。恐らく大した味もしなかったであろう。彼女は、たかがカレイライスの前菜に8000円支払ったのである。しかも、本体のカレイライスにもありつけなかったのである。私は今も、あの勘定を割り勘にしたことが気になっている。
 「何事も先達はあらまほしき事なり」と吉田兼好が諭しているが、私は先達の役を果たせなかったことを恥じている。

   
 写真は浩子さん提供
  
  前回訪問時(2010年4月)和弘撮影

     
  
   左純米酒、右純米吟醸


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