北京オリンピックも終わろうとしている。日本はメダルの数に湧いている。中でも金メダルを獲った3人は強さを示した。私が強さを感じたのは、いずれも最後の演技で勝利をつかんだからである。
小林陵侑選手のノーマンヒルも、最終滑走で勝利を確定したが、特にスノーボードハーフパイプの平野歩夢選手は、第二滑走で“誰もできない技”を演じながら2位に評価されると、三回目の最終滑走者としてその技をより美しく演じて逆転勝利した。並の強さではできないことではないか?
極めつきは高木美保選手で、5種目出場という超人的な滑走で銀メダル三つを稼ぎながらも金メダルの壁が破れなかったが、最後の種目1000メートルで勝利、しかもオリンピック新記録という記録に限りない強さを感じた。
反面、オリンピックのすさまじさを示すものは、むしろ敗者の中にある。
スノーボード女子ビッグエアで岩淵麗樂選手は、“今まで誰も演じてない”トリプルコークに果敢に挑み、見事に着氷したがバランスを崩し転倒、4位に終わった。しかし各国選手が駆け寄ってその勇気をたたえたシーンは瞼に残る。
三連覇を狙うフィギュアー界の王者羽生選手は、“王者としてどうしても演じなければならなかった”4回転半に果敢に挑戦、成功したかに見えたが着氷後転倒して4位に終わった。ⅠOCはこれを、史上初の4回転半演技に認定した。
4位と言えば、女子フィギュアのワリエワ選手(ROC)。彼女がは、恐らくこれまで一度も経験したことのないような数回の転倒を繰り返し、これまた4位に終わった。リンクから上がる彼女に、コーチが「なぜ戦いを放棄したのか?」と詰問していたが、ドーピング問題にまみれた15歳の少女の闘いの中は何があったかは闇である。
スポーツ界最大のドラマは、メダルと4位のはざまにあるのかもしれない。