昨日のこの欄で「世界中にビールはある」と書いた。正にそのとおりで、北欧の旅ではウォツカを中心に飲むつもりで行ったが、どこの国でもビールも飲んだ。
まず最初の目的地ヘルシンキに向かうフィンランド航空の機中で「ビールのラピン・クルタはあるか」と聞くと、にっこり微笑んだステュアーデスが「フィンランドの most faimous beer だ」言って誇らしげに取り出してくれた。私は海外に赴く時、往路の機中では行き先の国の酒を飲むことにしている。できるだけその国の食生活に近づくために。帰りの機中ではたまりかねて日本酒を注文するが。
ラピン・クルタは度数4.5%、どちらかといえばのど越しで飲むビールで日本のビールに近かったが、次のタリン(大相撲の把瑠都の出身地エストニアの首都)で飲んだ「サク」は度数6.7%で重量感があった。次のサンクト・ペテルブルグだけはウォッカ一本で行こうと思っていたが、「ネブスコア」というビールを飲んだ。これも5.7%の、寒い国らしい重みのあるビールだった。
中でも「サクSAKU」の思い出をひとつ。
タリンに着いて最初の昼食をとったレストランで「サクはあるか」と頼むと、「当然サクを飲むべし」と言うような顔をして運んできた。見るとそのウェイトレスはSAKUのジョッキが描かれたTシャツを着ている。なんともかっこいいので写真を撮ったりしているうちに私の悪い癖でそのTシャツが欲しくなった。ついに勇気を出してレジに赴き、店主らしき男に「売ってくれないか」と折衝したところ、「とんでもない。これは商売用だ。あのTシャツを脱がせれば彼女は裸で仕事をしなければならない」ときた。これには私も引き下がらざるを得なかった。私は何も 彼女の着ている物を所望したのではなく、当然予備のものがあると思って頼んだのだが、「東洋から変なエロ爺さんが来た」と語り草になっているかもしれない。