サンケイスポーツ 2007年05月03日 更新
特待制度実施の申告は334校-甲子園優勝21校も
日本高校野球連盟が全加盟校に実施したスポーツ特待制度の実態調査が2日に締め切られ、同連盟は計334校が特待制度実施を申告したと発表。レッドソックス・松坂大輔投手(26)の母校・横浜(神奈川)など、甲子園優勝校21校が含まれていたことがわかった。横浜は出場が決まっていた関東大会の出場を辞退。なお申告校は3日、午後3時に最終的な発表がある。
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高校球界が最後まで大きく揺れた。西武裏金問題に関与した専大北上(岩手)で、日本学生野球憲章に抵触する特待制度が発覚したことを発端に、日本高野連は「野球部員であることを理由にしたスポーツ特待制度」の実態調査を実施。締め切りのこの日までに報告があった違反校は、軟式を合わせて延べ約4800の加盟校のうち、334校にまで上った。
その中には、レッドソックス・松坂の母校で春夏通算5度の甲子園優勝を誇る横浜や、04、05年夏の甲子園で2連覇した駒大苫小牧(北海道)、今春センバツ優勝の常葉学園菊川(静岡)など、全国優勝経験がある強豪校も多数含まれていた。
なかでも横浜はこの日、渡辺元智監督(62)が横浜市内のグラウンドで「ちょっとでも疑わしいのであれば、しっかりと襟を正そうと辞退しました」と説明。4日の県大会準決勝と、出場を決めていた関東大会への出場辞退を決断した。同校は19人(1年生5人、2、3年生各7人)の部員が入学金と授業料の免除を受けており、大半が主力選手。日本高野連の指導措置により小倉清一郎野球部長(62)は退任、平田徹コーチ(23)が新部長に就任する。
この日までに申告した334校は、制度適用を受けた選手が今月31日まで対外試合出場禁止となるが、チームへの対外試合禁止処分は科されない。ただ横浜のほか、センバツ準優勝の大垣日大(岐阜)など、春季大会は有力校の出場辞退が続出。夏の前哨戦となるはずが“抜け殻”の大会となってしまうのは確かだ。
それでも日本高野連が拙速の批判があるのも承知の上で大ナタを振るったのは、夏の甲子園にクリーンな形になって臨みたいから。6月から、例年通りの地方大会が行われることになる。
★いずれも私立高-高知は違反高なし
申告した334校はいずれも私立校。日本高野連に登録している私立校773校のうち4割強が申告することになった。2日午後5時までに集計がまとまらなかった都道府県連盟は東京と茨城で、高知からは「違反校なし」の報告があった。
◆日本高野連・脇村春夫会長
「非常に数が多いことに驚いている。学生野球憲章13条の順守を通達していたが、行き届かなかったことを高野連としても反省しなければならない。(特待生問題について)見直す考えはない。野球留学とも関連する問題であるし、今後も徹底していきたい」
★高体連、奨学制度在り方検討へ
野球以外の高校の競技を統括する全国高等学校体育連盟(全国高体連)の梅村和伸専務理事は「強豪校などがかなり入っていて重たい数字。社会的問題に発展し、高体連としても奨学制度の在り方を検討する必要がある」と述べた。高体連には奨学制度の明確な規定がなく、基本問題検討委員会で競技団体などの有識者も招いて討議するという。同専務理事は「特待制度の行きすぎや金目当てはいけないが、子どもたちを犠牲者にしたくない」と話し、特待制度の全面否定はしないとの立場を繰り返した。
★私立連合会、高野連へ要望書
日本私立中学高等学校連合会が、全国調査を実施した日本高校野球連盟に対し、締め切り延長などを求めた要望書を送付していたことが分かった。4月27日付の文書では、野球部員だけが特待制度を廃止するのはバランスを欠くなどと指摘。「現在在籍する生徒に影響がないように」と制度廃止時期の延長などを求めた。これに対し、日本高野連は29日付で文書を送付。高校野球の歴史を説明し「憲章はより厳しい基準で厳正な運用を心掛ける必要がある」とした上で申告期限が過ぎても理由を添えれば配慮すると回答した。
■日本高野連の指導措置
日本高野連が公立を含む全加盟校の校長から「選手または部員であることを理由としたスポーツ特待制度」の有無について文書で回答を求めた措置。実施校は5月2日までに所属連盟に制度の内容と適用部員の学年別人数を申告し、奨学金等の解約同意書を5月末までに提出する。実施校の野球部長は退任。ただチームは対外試合禁止にはならず、制度を適用していた選手が5月末まで対外試合出場が禁止される。申告の最終結果は3日午後3時に発表され、それ以降に憲章違反の特待制度が発覚した場合は、対外試合禁止など厳しい処分が科される。
■日本学生野球憲章
高校、大学の野球活動に対する基本理念。1946年12月に学生野球基準要項として制定され、50年1月の改正で現在の名称となった。スポーツ特待制度を禁止する項目は第13条第1項で、選手または部員はいかなる名義によるものであっても、部員であることを理由に、学費、生活費その他の金品を受け取ることができない、と定めている。違反があった場合は、日本学生野球協会の審査室に諮られ、警告、謹慎などの処分が科される。
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今日は憲法記念日で各紙とも社説・コラムとも憲法一色。
我が家の琉球新報も「声」欄も動員して憲法特集なので気が重いが憲法をスルーするわけにいかないと思っていたが・・・。
高校野球の特待生問題が騒がしい。
60年以上前に制定され時代に合わなくなった「日本学生野球憲章」13条を護るという連盟側の頑なな態度が奇しくも「護憲派」とダブって見える。
制定以前の反省の元に理想を掲げた点も、
それが時代に合わなくなった点も、
それを護り続けるという点でも「憲法論議」と同じ。
アマチュアリズムを理想とと掲げ「参加することに意義がある」といったことをまともに信じるものはいない。
オリンピックも今は既に様変わりしている。
変り行く現実について行けず、積み重なった矛盾を「解釈」で誤魔化すのは「日本学生野球憲章13条」と「日本国憲法9条」が双璧。
条文はお題目ではない!
憲法記念日、今日はこのくらいでお茶を濁そう。
【追記】10:40
お茶を濁しついでにもう一つ。
読売コラムが言いたい事を言ってくれていた。
5月3日付 編集手帳
江戸期の狂歌作者に元木網(もとのもくあみ)がいる。人を食った名前だが、平明で調べのきれいな歌もある。「あせ水をながしてならふ剣術のやくにもたゝぬ御代(みよ)ぞめでたき」◆侮られぬよう、隙(すき)を見せぬよう、汗水流して剣術の腕前を磨いているが、争いごとは望まない。日々の研鑽(けんさん)が無駄に終わる天下太平のありがたさは、身にしみて知っている、と◆国の守りも一首に尽きるのかも知れない。平和をめでる心を忘れて腕っぷしに執心すれば、北朝鮮のようになってしまう。さりとて稽古(けいこ)を捨てれば、無頼漢もいる世の中でわが身ひとつを守れない◆いまの憲法は一切の戦力保持を否定し、「竹刀には指一本触れません」と約束している。現実には自衛隊を抜きに国の備えは考えられず、憲法の規定は稽古を捨てたふり、いわば美しい虚構にほかならない◆制定の当時、時代劇でいう“凶状持ち”のような立場に置かれた敗戦国としては、それもやむを得なかっただろう。憲法施行からきょうで60年、「辻斬(つじぎ)り」や「道場破り」に無縁の国であることを内外に知らしめた歳月である◆憲法改正とは、虚構の部分を排し、裏も表もない正真正銘の平和憲法に書き直す作業をいうのだろう。平和のおかげで現在の繁栄を築き、「御代ぞめでたき」の心が骨の髄まで徹した国には、胸を張ってそれができる。
(2007年5月3日1時45分 読売新聞)