玉城デニー知事は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府に緊急事態宣言の適用を求めた。医療体制が逼迫(ひっぱく)する状況に強い危機感を抱き、全県一斉での強い自粛措置が必要と判断した。一方、政府は緊急事態宣言は「最後のカード」と位置付ける。宣言の前に酒類の提供自粛など県がまん延防止等重点措置で最大限の措置を講じるべきとの考えで、県の宣言要請には不信感も募る。変異株に加え大型連休の多くの人の流れが感染急拡大につながっており、連休前の県の情報発信の弱さ、危機管理の脆弱(ぜいじゃく)さを指摘する声もある。(政経部・大野亨恭、又吉俊充、川野百合子)=1面参照

 感染状況を示す国の七つの指標で、県は四つが最悪のステージ4、三つがステージ3。医療機関での患者の受け入れが困難になるなど、コロナ以外の医療にも影響が出ている。県は「来週には必要な人が入院できない事態になる」と強い危機感を抱き、「医療非常事態」を宣言した。

 一方、今回の感染急拡大の根源は大型連休中の活発な人の動きだ。全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)グループ4社合計の連休中の沖縄路線の旅客数は約17万人で前年比8・7倍だった。

 知事は昨年の大型連休前は「今は来県を控えてほしい」と強いメッセージを発したが、今年は感染拡大地域からの来県は「厳に慎んでほしい」と述べるにとどめた。

 謝花喜一郎副知事は「連休は稼ぎ時。ベストではないがベターなメッセージを発した」と県の対応は適切だったと強調。県幹部は、昨年の知事の発信には観光業界から強い反発が上がったとした上で「観光業界も県民。全ての命を守るのが県行政の仕事だ」とぎりぎりの判断だったと明かした。

 一方、県は経済界の反対で酒類提供の自粛は見送り、政府の宣言で「強い自粛の網」を掛ける策を選択した。謝花氏は時短要請に応じている店と応じない店で「不平等感やあつれきが生じる」と懸念を示し、業界からも「むしろ緊急事態宣言で休業要請をしてもらった方がいいとの意見があった」と説明した。

 ただ、業界内には県への批判が渦巻く。関係者は「守らない店への命令、店舗名公表、罰金は重点措置下で可能なのに知事は一切踏み込んでいない。この甘い対応が不平等感を生んでいる」と指摘。緊急事態宣言で自粛の網を掛ける県の考えに「国へ責任の丸投げではないか」と疑問を投げかけた。

(写図説明)会見で記者の質問に答える謝花喜一郎副知事(奥)=19日、県庁(代表撮影)

(写図説明)緊急事態宣言を巡る想定スケジュール