日本からの「独立論」強まる沖縄 描く青写真は
2015/06/29 16:00
6月23日、沖縄は戦後70回目の「慰霊の日」を迎える。だが、人々の心は癒えることがない。米軍基地がもたらす「ゆがみ」が、いまも沖縄と本土を分かち、沖縄の人々の仲を引き裂いている。
5月16日、琉球民族独立総合研究学会の公開シンポジウムが、沖縄県宜野湾市の沖縄国際大学で開催された。大講堂を埋めた数百人の聴衆には、沖縄風に髪を結う男性も目立つ。
高揚感が漂うなか、パネリストの一人、高良沙哉・沖縄大学准教授が声を詰まらせながら語りかける。
「植民地が独立するのは、きわめて自然な流れです。昔、独立学会に入ったと言うとヤマトの人に寂しそうな顔をされた。でも最近は、独立したほうがいいと言われるようになった。どちらにしても、独立するかしないか、私たちの判断であって、ヤマトの人がどうこう言うことではないですよね」
大きな拍手が会場に響く。
自己決定権を貫こう。民族自決が大事だ。琉球は独立国だった。いまもヤマトの植民地だ──そんな激しい言葉が飛び交った。主張は基地反対とも強く結びつく。学会の主要メンバーの友知政樹・沖縄国際大学教授は、シンポジウムでこう語った。
「琉球独立に向け、琉球の島々からすべての基地を撤去するのが、学会の掲げる大事な目標。だが、日本政府は基地撤去を認めない。琉球を平和な島々に戻すためには、琉球が自治権を確立し、独立するしかない」
琉球独立への意欲は本物だが、それでは独立に向け、どんな青写真を描いているのか。
『琉球独立論』(バジリコ)の著者で、同学会の共同代表を務める松島泰勝・龍谷大学教授は、こんなプランを説明する。
(2)登録後、国連監視下で住民投票し、独立が決定すれば独立を宣言する。
(3)世界にいる50万人の琉球出身者の協力も得ながら、各国に働きかけて国家承認を求める。
松島さんによれば、南太平洋にある人口1万人のツバルや2万人のパラオも戦後、独立を達成している。
2005年にある学者が行った調査によれば、独立支持者は25%。経済的自立が確かならば、5割に達する結果だった。一方、今年5月末の琉球新報などの世論調査によると、沖縄の将来について、現行通り日本の一地域(県)のままが66.6%、特別自治州などが21.0%、独立は8.4%だった。調査によって数字にばらつきがあるようだ。
しかし、この数年、琉球独立論が県民にとって「共通の話題」の地位を獲得しつつあることは間違いない。
今後の琉球独立論の行方を松島さんは「辺野古問題の成り行き次第です」と見る。
「日本政府が辺野古の海を埋め立てるほど、独立の時期が早まると思います。日本政府が辺野古移設を断念し、普天間も嘉手納も返還するとなれば、一時的には沖縄で独立の雰囲気は弱まるでしょう。つまり日本政府が琉球を選ぶのか、米軍基地を選ぶのかが問われているのです」
※AERA 2015年6月29日号より抜粋
【おまけ】
細谷慶大教授「沖縄紙、中国からお金を貰っている」
名指しもされていないのに自ら名乗り出た沖縄タイムス。
図星だった!
「沖縄紙に中国資金」と誤記 米有力研究機関報告書 慶大教授発言を引用
米有力シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)がまとめた「日本における中国の影響力」と題した報告書に、中国政府が「沖縄の新聞に資金提供し影響力を及ぼしている」との誤った記述が含まれていることが分かった。政府の審議会委員などを務める日本人研究者の発言で、研究者は「誤解を招きかねない表現になった。中国が沖縄の新聞に資金提供しているという根拠や認識はない」と説明した。(2面に関連)
報告書は7月23日に公表された。米国務省でプロパガンダ対策を担うグローバル・エンゲージメント・センターの支援で、コロンビア大教授などを歴任した国際政治学者のデビン・スチュワート氏が、専門家40人のインタビューなど2年間に及ぶ調査結果をまとめた。
スチュワート氏は「メディアを通した中国の影響力行使の最も重要な標的は恐らく沖縄だろう」と記述。慶応大の細谷雄一教授(国際政治学)の発言として、「中国は日本に影響を及ぼすため間接的な手法を採用している。例えば沖縄独立と米軍撤退を追求するため沖縄の新聞に資金提供し、影響を及ぼすことを通じて沖縄の運動にも影響を及ぼすような非公然ルートがある」と引用した。
スチュワート氏は本紙取材に対して「細谷氏には報告書の発言部分の記述を確認してもらった」と説明。事実関係を自身が確かめたかどうかなど、その他の質問には答えなかった。
細谷氏は本紙に対し、「中国が大きな予算を使って対日世論工作を展開していて、米軍基地がある沖縄が主戦場なのはよく知られた事実だが、手法はあくまで間接的だ」と述べた。CSISには「よりニュアンスが伝わる形での修正を求めた」という。
(平安名純代・米国特約記者、編集委員・阿部岳)
提供の事実ない
本紙 訂正求め
沖縄タイムス社は「本社が中国政府から資金提供を受けている事実はない。著名なシンクタンク、研究者が根拠のない見解を公表していることは残念で、訂正を求めたい」とコメントした。
※細谷教授は、「間接的資金提供」と述べ、訂正を拒否している。