とりあえず、帰国致しました。
まぁ、いろいろありましたが、タイの賄賂に関する話をひとつ。
いくつかの事情が重なって、中国から大量の荷物をタイへ運ぶことになった。
「もしかするとタイの税関で止められるかも…」
そんな予想が現実のものになった。
通常、タイの税関は外国人には寛容なようで、これまで荷物検査など一度も
されたことがなかった。まぁ、しかし荷の量が量だけに仕方がない。
パスポートを見ながら、一通り荷物を調べられた後、若い女性税関員が言った。
「関税を払ってください…」
「どのくらい?」と、答えると、若い男性職員を呼んで、ちょっと考えてからひとこと。
「ニジュウマンエン…」
「はっ!」
私が日本人だからか、親切にも円換算で答えてくれた。
何を根拠に20万円なのか、とも思ったが、「根拠って英語でなんていうのだろう…?」
などと考えながら、これは、予想以上に時間がかかりそうだと思い直し、気合を入れる
ことにした。
「なぜ、20万円なのか?」と、とりあえず聞くと、逆に「これはいくらなのか」と聞い
てきた。
もっともである。
そもそも、質問の順番が逆だったのだ。まず、いくらなのか聞いて、それから関税額を伝
えるのが普通だ。
「これは、商品ではないし、タイで売るのもではない。これからもし可能なら、タイで
商品化するものだから今の時点では値段などはない」と説明する。
すると、ここでは何だからと別室行きになる。
別室では、担当が大変流暢な英語を話す、いかにもエリートそうな男性に変わった。
ほんとうにやっかいなことになってきた。
こちらは、先ほどの説明を繰り返す。しかし、このエリート係官は、正式な内容証明がない
以上、これほどのモノを持ちこませる訳にはいかないと、大変、わかりやすい言葉で説明し
てくれる。やはりエリートはこれまでのタイ人とはあきらかに対応が違う。
パスポートの痕跡で中国からのモノだとは解られている。しかし、こちらも、一度、あの
ように説明してしまった以上、中国でいくらいくらで購入したとは言えない。
しかし、あちらはあちらで、終始、無税では持ち込ませないという感じである。
しばらく、堂々巡りが続いた。時間はすでに捕まってから1時間は経っている。夜の10時を
回っていた。
しばらくすると、最初に対応した若い男女の係官が入ってきた。そしてこのエリート係官と何
やら話をした後、エリート係官は部屋を出ていき、若い男性係官だけが残った。
今思えば、あのエリート係官の帰宅時間だったのかもしれない。そして、「お前に任せるよ」
とでも言って帰って行ったのかもしれない。
そして若い係官がひとこと、「では、ジュウマンエンでどうか…」と一気に10万円値下がる。
こちらは「ノー」を繰り返すが、向こうは「10万」を譲らない。少し経って、少々弱気になり
かけ「領収書は出るのか?」と聞くと「もちろんだ!」と答える。
こちらも「10万は高いが、せめて3万くらいなら払ってもいいかな…」などとと思い始めた
矢先、「領収書が無くていいなら、ディスカウント出来る…」などと言うではないか。
一瞬、「何をいうのか…」と思ったが、すぐにこれは「賄賂」だと気がついた。
ここがタイだと言うことを、すっかり忘れていた。というか、ここ数年でタイをいう国がマトモ
な国だと思いこんでしまっていたのかもしれない。
一気に追い風が吹いてきたと思った。向こうは金が惜しいのだ。あとは金額交渉だけである。
「領収書は要らない、いくらになる?…」と聞くと。
「5,000バーツ」でいいという。現金なもので、一気に単位がバーツに変わった。
今回は近年にない円高で、およそ13,000円である。「まぁ、これくらいならいいかな」、とも思った
が、ここからが「交渉」である。
こちらは「2,000バーツなら払ってもいい」と伝える。
向こうはすぐに「4,000バーツ」になり、その後、すぐに「3,000バーツ」にまで下がった。
しかし、こちらは、「2,000バーツ」を譲らなかった。
それから、すぐに、「2,000バーツ」(およそ、5,000円)で交渉成立となった。
税関から解放されるまで1時間半が過ぎていた。
その後、ホテルに着いたのが、夜の11時を回っていた。
何だか疲れていたにもかかわらず、頭が冴えてしまっていてすぐには眠れず、コンビニに普段は
飲まないビールを買いに行った。
久しぶりに飲んだ「ビアチャン」が妙に美味しく感じた。
そして、まだタイがタイであったことにちょっとホッとし、またさらにタイが好きに
なった気がした。
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