こんなことを今さら真面目に論じるのも無粋のようだが、この2曲の類似性の意味を考えてみたい。
まず、どこが似ているのか。
髪飾りの名称を含むタイトルが似ている。
ノスタルジックな導入部から、元気のいい金管楽器に遷移するイントロが似ている。
ビキニの水着を着て踊るプロモーションビデオが似ている。
夏の初めに、片思いの同級生の女の子と海に行くという歌詞の内容が似ている。
同じ(または類似した)語彙も、多数使われている。
「太陽」「(T)シャツ」「着替え(衣替え)」「風」「~より早く」「友達」「振り返る(振り向く)」「笑顔(微笑む)」「長い髪(カチューシャ)ほどく」「波」「変わらないで(少女のままで)」「君が好きだ言葉にできない(好きなんて言えやしない)」。
ポニーテールを「恋の尻尾」、カチューシャを「天使の輪っか」と例えているところも共通している。
ここまで似ていると、もはやこの2曲は双子と言っていい。
異なっている点も挙げておく。
『ポニーテールとシュシュ』の歌詞を聴いていると、2人で海辺を走っていて、アイドルの古典である南沙織の『17才』のようだ。ところが、2コーラス目に入ると様子は一転、2人で海へ行ったのは男の子の夢、妄想だったことが判る。秋元康得意の妄想デートだ。(『脳内パラダイス』『恋のPLAN』『ウィンブルドンへ連れて行って』など事例多数)終いには、2人で一緒に走るのではなく、「君は君で、僕は僕で走る」ことになってしまっている。少し悲しい片思いの歌だったのだ。
一方、『Everyday、カチューシャ』は微妙だ。
状況は『ポニーテールとシュシュ』の1年後と思われるが、どうも今年は、妄想ではなく現実に2人で海に行っているように思われる。「2人の足跡消えてしまう」「君と来年も海に来られたら」というフレーズがその根拠である。1年で現実に海に誘えたのは、大進歩だ。
でも、まだ「友達のまま」と言っている。このまま一気に恋人になってしまえばいいのに、欲がない。
「来年もこの海に来られたら、確かなものなど何もほしくはない」と歌っている。確かなものなどない、恋人になってもずっと続く保証はない、だから恋人になってしまうのは怖いという、若い逡巡が表現されているこの部分こそ、この曲の核心である。
では本題。なぜこのように類似した曲を、わずか1年しか空けずに発売したのだろうか。
私の推理では、それは「AKB48の新たな代表曲がほしいから」。
第3回選抜総選挙の投票権が封入されるこの『Everyday、カチューシャ』が、100万枚以上売れることは確実だった。それがどんな曲であれ、間違いはなかった。
どんな曲を書いても売れるとしたら、書きたい曲を書くというのが自然だろう。だから秋元康は、一番書きたいテーマを書いたのだと思う。
AKB48の楽曲で繰り返し歌われているテーマに「好きならば好きだと言おう」というものと「片思いも悪くないよね」というものがある。正反対のテーゼだが、どちらも真実だろう。
前者では『会いたかった』という代表曲が既にある。仮に、今AKB48の活動が終了したとして、30年後に代表曲とされるのは『会いたかった』だと思う。売上枚数ではないのだ。
一方、後者については、前述の『ポニーテールとシュシュ』はじめ妄想デートものなど多数の曲で表現しているが、まだ代表曲と言えるものはない。そこで駄目押しのように、去年の続編をぶつけてきたのだと推理した。
例えば、岩崎良美にはデビュー後数年間に素敵なヒット曲が多数あるが、代表曲は後年のアニメ主題歌の『タッチ』ということになっている。酒井法子も、10代の頃は元気な青春応援ソングを続けて歌っていたが、結局代表曲は『碧いうさぎ』とされることが多い。
逆に、デビュー曲のインパクトが大きくて、それを越える代表曲が遂に出なかったという例もある。斉藤由貴の『卒業』。松本伊代の『センチメンタル・ジャーニー』。そしておニャン子クラブの『セーラー服を脱がさないで』もそうだ。
全盛時の曲が代表曲になるとは必ずしも言えないのだ。
キャンディーズの代表曲は『春一番』と思うが、『微笑がえし』『年下の男の子』という、違ったタイプの曲で第2、第3の代表曲と言える曲があるのは幸せなことだ。
AKB48の第2、第3の代表曲候補としては、違ったタイプの曲で、既に『ヘビーローテーション』『Beginner』もあるが、果たして30年後に多くの人々の脳裏に残っているだろうか。ファンの記憶に強く刻まれるという点では、むしろそれは『初日』かもしれない。
そうした中、勢いが一番ある今、作詞家として最も伝えたいメッセージを込めた曲を、『会いたかった』と並ぶ2曲目の代表曲として残したいと、秋元康は考えたのではないか。
『ポニーテールとシュシュ』との類似性など問題ではない。ピッチャーだって、ここぞという所では、自分の一番いい球の連投で勝負するではないか。
そう考えれば、わざと『ポニーテールとシュシュ』との類似性を強調することで、これが俺の勝負球なんだということを宣言していると解釈できる。
なお、『Everyday、カチューシャ』の歌詞には、『ポニーテールとシュシュ』以外にも、いろんな曲を連想させる小道具が忍ばせてある。プロモーションビデオだけではないのだ。
「バスに乗り」→『ビーチサンダル』(友達のままでバスに乗ってたら)
「心の隣で同じ景色見ながら」→『心の端のソファー』
「Everyday」→『Glory days』(Everyday Every time 僕は今日も生きてる)
「僕は長い恋愛中」→『ただいま恋愛中』
他にもまだあるはずなので、気づいた方はコメントで教えてほしい。
まず、どこが似ているのか。
髪飾りの名称を含むタイトルが似ている。
ノスタルジックな導入部から、元気のいい金管楽器に遷移するイントロが似ている。
ビキニの水着を着て踊るプロモーションビデオが似ている。
夏の初めに、片思いの同級生の女の子と海に行くという歌詞の内容が似ている。
同じ(または類似した)語彙も、多数使われている。
「太陽」「(T)シャツ」「着替え(衣替え)」「風」「~より早く」「友達」「振り返る(振り向く)」「笑顔(微笑む)」「長い髪(カチューシャ)ほどく」「波」「変わらないで(少女のままで)」「君が好きだ言葉にできない(好きなんて言えやしない)」。
ポニーテールを「恋の尻尾」、カチューシャを「天使の輪っか」と例えているところも共通している。
ここまで似ていると、もはやこの2曲は双子と言っていい。
異なっている点も挙げておく。
『ポニーテールとシュシュ』の歌詞を聴いていると、2人で海辺を走っていて、アイドルの古典である南沙織の『17才』のようだ。ところが、2コーラス目に入ると様子は一転、2人で海へ行ったのは男の子の夢、妄想だったことが判る。秋元康得意の妄想デートだ。(『脳内パラダイス』『恋のPLAN』『ウィンブルドンへ連れて行って』など事例多数)終いには、2人で一緒に走るのではなく、「君は君で、僕は僕で走る」ことになってしまっている。少し悲しい片思いの歌だったのだ。
一方、『Everyday、カチューシャ』は微妙だ。
状況は『ポニーテールとシュシュ』の1年後と思われるが、どうも今年は、妄想ではなく現実に2人で海に行っているように思われる。「2人の足跡消えてしまう」「君と来年も海に来られたら」というフレーズがその根拠である。1年で現実に海に誘えたのは、大進歩だ。
でも、まだ「友達のまま」と言っている。このまま一気に恋人になってしまえばいいのに、欲がない。
「来年もこの海に来られたら、確かなものなど何もほしくはない」と歌っている。確かなものなどない、恋人になってもずっと続く保証はない、だから恋人になってしまうのは怖いという、若い逡巡が表現されているこの部分こそ、この曲の核心である。
では本題。なぜこのように類似した曲を、わずか1年しか空けずに発売したのだろうか。
私の推理では、それは「AKB48の新たな代表曲がほしいから」。
第3回選抜総選挙の投票権が封入されるこの『Everyday、カチューシャ』が、100万枚以上売れることは確実だった。それがどんな曲であれ、間違いはなかった。
どんな曲を書いても売れるとしたら、書きたい曲を書くというのが自然だろう。だから秋元康は、一番書きたいテーマを書いたのだと思う。
AKB48の楽曲で繰り返し歌われているテーマに「好きならば好きだと言おう」というものと「片思いも悪くないよね」というものがある。正反対のテーゼだが、どちらも真実だろう。
前者では『会いたかった』という代表曲が既にある。仮に、今AKB48の活動が終了したとして、30年後に代表曲とされるのは『会いたかった』だと思う。売上枚数ではないのだ。
一方、後者については、前述の『ポニーテールとシュシュ』はじめ妄想デートものなど多数の曲で表現しているが、まだ代表曲と言えるものはない。そこで駄目押しのように、去年の続編をぶつけてきたのだと推理した。
例えば、岩崎良美にはデビュー後数年間に素敵なヒット曲が多数あるが、代表曲は後年のアニメ主題歌の『タッチ』ということになっている。酒井法子も、10代の頃は元気な青春応援ソングを続けて歌っていたが、結局代表曲は『碧いうさぎ』とされることが多い。
逆に、デビュー曲のインパクトが大きくて、それを越える代表曲が遂に出なかったという例もある。斉藤由貴の『卒業』。松本伊代の『センチメンタル・ジャーニー』。そしておニャン子クラブの『セーラー服を脱がさないで』もそうだ。
全盛時の曲が代表曲になるとは必ずしも言えないのだ。
キャンディーズの代表曲は『春一番』と思うが、『微笑がえし』『年下の男の子』という、違ったタイプの曲で第2、第3の代表曲と言える曲があるのは幸せなことだ。
AKB48の第2、第3の代表曲候補としては、違ったタイプの曲で、既に『ヘビーローテーション』『Beginner』もあるが、果たして30年後に多くの人々の脳裏に残っているだろうか。ファンの記憶に強く刻まれるという点では、むしろそれは『初日』かもしれない。
そうした中、勢いが一番ある今、作詞家として最も伝えたいメッセージを込めた曲を、『会いたかった』と並ぶ2曲目の代表曲として残したいと、秋元康は考えたのではないか。
『ポニーテールとシュシュ』との類似性など問題ではない。ピッチャーだって、ここぞという所では、自分の一番いい球の連投で勝負するではないか。
そう考えれば、わざと『ポニーテールとシュシュ』との類似性を強調することで、これが俺の勝負球なんだということを宣言していると解釈できる。
なお、『Everyday、カチューシャ』の歌詞には、『ポニーテールとシュシュ』以外にも、いろんな曲を連想させる小道具が忍ばせてある。プロモーションビデオだけではないのだ。
「バスに乗り」→『ビーチサンダル』(友達のままでバスに乗ってたら)
「心の隣で同じ景色見ながら」→『心の端のソファー』
「Everyday」→『Glory days』(Everyday Every time 僕は今日も生きてる)
「僕は長い恋愛中」→『ただいま恋愛中』
他にもまだあるはずなので、気づいた方はコメントで教えてほしい。