公共事業と市民とのかかわりは深いもの。
時に、意見の相違から社会問題やトラブルも起きます。私も随分経験。 例えば
市民運動型でいると、公共事業を見直すのに話し合いや運動も大事ですが、税金の使い方を問う住民監査請求や住民訴訟を使うことも効果的。
ここに絶好の最高裁判決が出されました。
『将来の公金の支出についても,住民監査請求の対象の特定として欠けるところはない』
最高裁が変わってきていると、先日、朝日新聞がほぼ1ページをさいて特集していましたが、この判決にもそれを感じます。
過去や単年度のお金なら、制度に馴染むのですが、将来、何年も、何十年も先までの一連の公共事業に対しては、それができるのかできないのか、なかなかすっきりした判例がありませんでした(私が調べてきた限り)。
例えば、 岐阜県の県営住宅建設の問題。10年先までの3期にわたって130億円での建設計画。
提訴してもう5年目。
県の代理人弁護士は、「そんな先のことまでは制度として住民監査請求の対象にできない」と、大部分について、門前払いを主張。
「そうじゃない」と、こちらは言い続けて来ました。
だけど、明確な判例がない、というか、判例はどれも直近の支出までのものしかない・・・
ところが、先の4月25日、画期的な判決が出たのです(私がそう思うだけかな)。
こちら山県市では、市民のゴミ処理施設建設に関して、非常に不効率で高額な事業を進めているので、3月に住民監査請求しました。将来20年先までの費用の問題を整理する この件、今日、岐阜地裁に提訴します(その詳細は、あらためて報告)。(⇒6月7日提訴・訴状など)
私たちには、この判決はピッタリ。もちろん、この2日間で作った訴状にも引用しました。
ということで、今日はまず、その最高裁の判決を紹介します。
「将来の長期にわたる事業の全部が違法だからやめるように」という主張の住民監査請求について、東京地裁、東京高裁は支出が特定できていないと門前払い。
しかし、最高裁は、ずっと先のこと(約25年間の事業)で「個々の支出が特定されていなくても、事業は特定できている」と、逆転判決。地裁に審理を差戻したのです。
市施行の土地区画整理事業が違法であると主張して同事業のために支出された公金の返還及び同事業に対する公金支出の差止めを求める住民監査請求が請求の対象の特定に欠けるところはないとされた事例
要点を抜粋
地方公共団体が特定の事業(計画段階であっても,具体的な計画が企画立案され,一つの特定の事業として準備が進められているものを含む。)を実施する場合に,当該事業の実施が違法又は不当であり,これにかかわる経費の支出全体が違法又は不当であるとして住民監査請求をするときは,通常,当該事業を特定することにより,これにかかわる複数の経費の支出を個別に摘示しなくても,対象となる当該行為とそうでない行為との識別は可能であるし,当該事業にかかわる経費の支出がすべて違法又は不当であるという以上,これらを一体として違法性又は不当性を判断することが可能かつ相当ということができる。
また,当該行為を防止するために必要な措置を求める場合には,これに加えて,当該行為が行われることが相当の確実さをもって予測されるか否かの点についての判断が可能である程度に特定されていることも必要になるが,上記のような事案においては,当該事業を特定することによって,この点を判断することも可能である場合が多い。したがって,そのような場合に,当該事業にかかわる個々の支出を一つ一つ個別具体的に摘示しなくても,住民監査請求の対象の特定が欠けることにはならないというべきである。
(2) ・・・本件事業に関する平成13年度以降の一切の公金の支出を対象として,既支出分の返還と今後の支出の差止めの措置を求めているのであって,本件事業にかかわる公金の支出を全体として一体とみてその違法性又は不当性を判断するのを相当とする場合に当たる。
そして,上告人らが本件監査請求において返還を求めるべきであるとした平成13年度の1億0451万9714円の支出が,監査請求書に添付された前記決算書(写し)に「羽村駅西口地区整備事業に要する経費」として記載されているものを指すことは明らかであり,対象外の支出との区別は可能である。本件監査請求において対象となる各支出行為の年月日や金額等が具体的に摘示されていなくとも,監査委員としては,当該事業を担当する区画整理課への確認,同課からの書類提出等により本件事業に関する各支出行為を明らかにさせることによって,本件監査請求の対象である各支出行為を容易に把握することができるものというべきである。
・・・・・本件事業の位置付けや本件事業のための経費に関する予算上又は決算上の会計区分は変動するとしても,本件事業の同一性が失われるものではなく,本件事業のための経費支出の特定性が失われるとも考えられないのであって,本件事業を特定することにより差止めを求める対象となる公金の支出の範囲も識別することができるものということができる。
さらに,本件監査請求の時点では土地区画整理法上の事業計画の決定及び公告がされていなかったとはいっても,土地区画整理事業の都市計画決定がされて施行区域も定まり,羽村市の本件事業に関する事業計画(案)も縦覧に供され,施行規程も制定されるという段階に至っている以上,本件事業及びこれに伴う公金の支出がされることが相当の確実性をもって予測されるかどうかの判断を可能とする程度の特定性もあったということができる。
事業計画の正式な決定前であるため,その後に本件事業の基礎的事項に変更があり得るとしても,上告人らの主張する違法性ないし不当性の内容からして,その変更が本件事業及びこれに伴う公金の支出の適否等の判断に大きく影響するものとは考えられない。したがって,将来の公金の支出についても,住民監査請求の対象の特定として欠けるところはないということができる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全文は以下からどうぞ・・・・・・・・・・
最高裁の上記判例概要にリンク 全文はこちら
平成16(行ヒ)312 公金支出差止請求事件 平成18年04月25日判決 最高裁判所第三小法廷
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