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てらまち・ねっと



 政府は、今日15日に緊急経済対策を柱とした総額13兆1000億円の補正予算案を閣議決定する予定、という。
 しかし、安倍政権の経済政策、とくに公共事業の大幅増、超推進には、海外からも懸念が出されている。
 
 そこで、いくつかの報道や考え方を見て、認識を整理しておこう。
 
 ●ニュースフィア 社説比較/安倍政権の経済政策に賛否―諮問会議への期待とバラマキ批判―
 ●毎日新聞/アベノミクス・安倍経済政策:期待と課題 財政間違えたら奈落 慶応大教授・鶴光太郎氏 
 ●日刊ゲンダイ/こりゃヤバイ 3月NY株暴落危機 安倍バブルの落とし穴
 ●ニュースフィア・海外の報道/安倍内閣の経済対策への海外紙の評価と提案とは?
 ●ロイター・コラム/日本経済を蝕む「モルヒネ中毒」=河野龍太郎氏

 ともかく、動き出したばかりとはいえ、ここのところの政権は、3年間の野党時代にたまった「うっ憤」をはらし、と同時に蓄積した「経験」も発揮している雰囲気。
 
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●安倍政権の経済政策に賛否―諮問会議への期待とバラマキ批判―
         NewSphere(ニュースフィア Sat. January 12, 2013 社説比較 
 12月より発足した安倍政権の経済政策が注目されている。安倍首相は「政策の一丁目一番地は経済の再生」「デフレと円高からの脱却が決定的に重要」と語り、強い意欲を示している。
基本方針としては、縮小均衡再配分から成長による富の創出への転換を掲げる。そのために、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」を同時展開し、強い経済を取り戻すとしている
 具体的な施策として、11日には20兆円規模の「緊急経済対策」を閣議決定。これを含めた補正予算案は15日に閣議決定される見込みだ。さらに9日には「経済財政諮問会議」を復活させ、中長期的な「骨太の方針」を今年半ばまでにまとめる予定だ。
 各紙は、安倍政権のこうした動きを、それぞれの視点から評価している。

 朝日新聞は、「緊急経済対策」を含んだ大型補正予算を、「昔の自民のまま」で、「政権復帰に浮かれたかのような大盤振る舞い」と酷評。
経済成長を目指し短期的には柔軟、中長期的には規律をもつ、という安倍政権の方針には理解を示しつつも、「まず金額ありき」な施策に違和感を示している。特に、今年度中に使いきれるはずのない公共事業、ミサイル購入費なども含むこと、ムダな便乗支出の増大を懸念。財務省まで歩調を合わせる現状に対し、大型補正で景気を押し上げ、増税を確実に実現する意図もあるのではと疑いを投げかけている。

 読売新聞は、経済財政諮問会議の再開を評価している。まず、景気の回復(のための財政出動)と財政健全化の両立という難題に対し、中長期的に観点から経済財政政策のシナリオを描く存在として期待を寄せている。そして、首相と日銀総裁定期的に議論する場たることで、デフレ脱却に向け政府と日銀の協調を深めることができると評価している。そのうえで、マクロ政策を議論する諮問会議と、ミクロ政策を検討する「日本経済再生本部」を連携させること、首相・経済財政相がリーダーシップを発揮し実効性の高い政策を速やかに実施することを求めた。

 産経新聞も、諮問会議の発足を評価している。読売新聞が日銀と協調した金融政策に重きを置いているのに対し、産経新聞は、「大胆な構造改革」が重要との主張だ。成長を実現するためには、規制緩和などを通じ、民間に活力を与えることが必要との主張は明快だ。また財政規律については、小泉政権下の諮問会議でまとめられたように、社会保障費抑制が重要と主張。最終的には、新規国債発行額の上限なども含め、具体的な改革をどこまで進められるのか、安倍首相の指導力次第だとまとめた。

●アベノミクス・安倍経済政策:期待と課題 財政間違えたら奈落 慶応大教授・鶴光太郎氏
         毎日新聞 2012年12月28日
 −−小泉政権などで経済財政諮問会議の裏方を務めました。

 ◆小泉政権では、諮問会議に(各省庁や与党内の)「抵抗勢力」を登場させて激論を重ね、財政健全化目標をまとめた。前回の安倍政権も小泉構造改革路線の継承を掲げて発足した。しかし、郵政民営化に反対し自民党を離党した造反議員を復党させるなど、権益を持つ勢力の反対を押し切ってまで改革を進める意欲は次第に薄れた。当時は景気が良く、厳しい取り組みから逃げた印象だ。

 −−第2次安倍政権は諮問会議を復活させ、日銀総裁も出席します。金融緩和をめぐる激論が交わされるのでしょうか。

 ◆繊細な金融政策の議論は出席者の発言内容が公表される諮問会議にはなじみにくい。諮問会議に日銀総裁が出席する意義は、政府の考え方を日銀にきちんと伝えることにある。安倍政権は諮問会議で日銀を「抵抗勢力」に仕立て、緩和を迫ることは考えていないと思う。そんなことをすれば、あからさまな日銀への政治介入で、日銀の独立性が崩れる。

 −−諮問会議をうまく機能させるコツは。

 ◆諮問会議という透明性の高い舞台で抵抗勢力をあぶり出し、議論を戦わせた上で結論を出すことで、首相に求心力が生まれる。経済財政担当相がお膳立てをし、首相が大きなテーマについて政治決断する見せ場を作れるかどうかがポイントだ。この肝心な点を理解しなかった民主党政権は似たような会議(国家戦略会議)を作ったが機能しなかった。

 −−小泉政権は諮問会議を舞台に公共事業費など歳出削減を進めましたが、安倍政権は逆に増やす方針です。

 ◆歳出抑制の目安である新規国債発行額の上限(44兆円)を安易に緩和することには「何を考えているんだ」と言いたい。国債発行は限界まで来ており、財政を改善しなければ、国債価格は暴落(金利は急騰)する。今の財政運営はサーカスの綱渡りのようなもので、一歩間違えば奈落の底だ。「デフレ」という仮想敵にやみくもに突っ込んで財政拡張を進めるような政治手法には、危うさを感じる。【聞き手・久田宏】=随時掲載

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 ■KeyWord ◇経済財政諮問会議
政府が経済財政政策を決定するにあたり、首相がリーダーシップを発揮して各省庁の利害を超えた政策を推進するよう、01年1月に内閣府に設置した。首相が議長を務め、官房長官や経済財政担当相、財務相ら関係閣僚のほか、日銀総裁、民間メンバー(財界人2人、学者2人)で構成。小泉政権では郵政民営化や歳出・歳入一体改革を打ち出すなど、政策運営の司令塔となり、官邸主導の象徴的な存在となった。民主党政権では休眠状態となったが、政権復帰した安倍晋三首相は復活させる方針。「日本経済再生本部」も新設し、諮問会議が政策の大枠を、再生本部が成長戦略などの具体策を練る。諮問会議は、日銀総裁との連携強化の場としても位置づける。

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 ■人物略歴 ◇つる・こうたろう
 84年東大卒、英オックスフォード大で経済学博士。経済企画庁(現内閣府)、日銀金融研究所などを経て12年から現職。06〜07年の小泉、安倍政権の経済財政諮問会議で経済財政担当相の補佐役を務めた。52歳。

●こりゃヤバイイ 3月NY株暴落危機
                   こりゃヤバイ 3月NY株暴落危機 安倍バブルの落とし穴 (日刊ゲンダイ2013/1/11)
安倍バブルの落とし穴
昨年11月16日の衆院解散から、2カ月足らずで1600円も値上がりした日経平均株価。きのう(10日)の終値は1万652円だった。市場は「1万2000円までいく」とイケイケだ。
しかし、このまま上がり続けるのか。投資のプロたちは安倍バブルの“落とし穴”を懸念しはじめている。

ズバリ米国株だ。タダウ平均は1万3471ドルと、07年10月につけた過去最高値の1万4198ドルに迫っている。高値圏に突入しているNY市場が暴落する恐れが強まっているのだ。すでに一部のヘッジファンドは、リスク資産への投資を減らしているという。
「米国株の不安材料は3つあります」と、東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏がこう言う。

1つ目は、歳出削減と減税停止が同時にやってくる〈財政の崖〉です。取りあえず減税停止は決着したが、歳出削減は、決着を2月に先送りしてしまった。結果によってはNY市場に打撃を与えるのは間違いない

2つ目は〈連邦政府の債務上限〉問題です。法律で約16兆ドルまでしか借金できないが、すでに上限に達している。スムーズに上限を引き上げられるかどうか。こちらも2~3月に問題が表面化するでしょう。2011年にも上限引き上げを巡って小浜政権と共和党が対立しています。もし、混乱したら米国債が格下げされるのは確実です」

3つ目は〈金融緩和の停止〉だ。現在、FRBは住宅ローン担保証券を購入することで通貨の供給を増やしているが、FRBが3日に公表した議事録で、FRB内部で資産買い入れに対する懸念が強まっていることが分かった。複数の委員が“買い入れ停止”を主張したという。

「心配なのは、投資家の不安心理を示す“恐怖指数”が2007年以来の低い水準になっていることです。アメリカの投資家は、かなり楽観している。しかし、恐怖指数が低い時ほど危ない。株高のピークとなっている可能性が高いからです」(斎藤満氏)
 外資は昨年11月から日本株を買いはじめ、すでに相当な含み益を出している。米国株が危ないとなったら、一気に日本株を売って利益を得るのは間違いない。ヤマは3月にやってくる。日本の個人投資家がババを引くことになりそうだ。

●安倍内閣の経済対策への海外紙の評価と提案とは?
       NewSphere(ニュースフィア/ Thu. January 10, 2013 /海外の報道
 政府は8日、新設した「日本経済再生本部」(本部長・安倍晋三首相)の初会合を開催した。安倍首相は、今後の経済政策の方針を「3つの矢」と表現し、柔軟な財政政策、大胆な金融政策、経済成長戦略をテーマとして掲げた。具体的には、緊急経済対策として、復興・防災対策、成長による富の創出、暮らしの安心・地域活性化の3分野に注力する方針だ。中でも、公共事業は国費ベースで5兆円超と半分を占める見通し。

 海外各紙は、安倍内閣の経済政策への懸念と報じるとともに、日本の経済成長のカギは何かという視点からの分析も行った。

 まず、公共事業の大幅な拡大について、歳出の拡大に伴い、国債の不安定化が懸念されている。
フィナンシャル・タイムズ紙は、過去自民党が行なってきたバラマキ政策の再現となることを懸念。

ただ一方で、公共事業の拡大によって実際に2%程度の経済成長が見込めるとするエコノミストの分析も紹介している。

 より構造的な課題への指摘も報じられている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、少子高齢化と人口減少が進む日本では、女性や高齢者の労働環境を向上させ、労働人口の増加を図るべきと論じている。
さらに、OECD諸国の中でやや低い水準にある、労働生産性を向上することが重要とも指摘。雇用規制などの緩和を指摘した。
 またTPPに関しても、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は参加するべきとの論調だ。農業など規制に守られてきた産業を、海外との競争に参加させることで、競争力のある製品を残すべきとの意見を紹介している。。

●コラム:日本経済を蝕む「モルヒネ中毒」=河野龍太郎氏
             ロイター 2012年 12月 14日
[東京 14日 ロイター] わずかな例外を除き、日本では過去20年にわたって、財政政策も金融政策も緩和方向に偏った極端な政策運営が続けられている。軽微な景気減速の際にも追加財政や金融緩和が発動され、さらに最近では日本銀行による財政赤字のファイナンス(マネタイゼーション)を可能とすべく、財政制度や中央銀行制度を変更すべきだとの前代未聞の提案まで聞かれるようになった。残念ながら、日本経済が患う「モルヒネ中毒」は悪化するばかりである。

筆者が常々指摘していることだが、財政政策や金融政策など裁量的なマクロ安定化政策そのものに、新たな付加価値を生み出す力はない。マクロ安定化政策が企図するところは経済変動の平準化であり、消費水準のボラティリティを抑えることで家計部門の効用を高めることである。消費水準そのものを高めることが企図されているわけではない。マクロ安定化政策だけで潜在成長率を引き上げ、消費水準を恒常的に高めることは不可能である。もしも、そうした政策だけで潜在成長率を高めることが可能だとすれば、古今東西、あらゆる国がすでに豊かになっていたはずである。

マクロ安定化政策が一見して経済成長率を高めるように映るのは、財政政策を通じて「将来の所得の先食い」が、金融政策を通じて「将来の需要の前倒し」が可能になるからだ。無から有は生み出せない。上がった分だけ、将来、所得や支出は落ち込み、時間を通して見れば、効果はゼロになる。それどころか財政・金融政策が資源と所得の配分の歪みを作り出すことを考えると、真の効果はマイナスとなる可能性もある。これは、財政政策だけでなく、金融政策についても当てはまる。

しかし、議論はいつの間にかすり替わり、「低成長は裁量的な財政・金融政策が足りないからであって、まずは追加財政と金融緩和で成長率を高めることが先決」となってしまう。マクロ安定化政策は、財政・社会保障改革を先送りするための言い訳として体よく使われるのである。

その際、財政政策については、有用な公共事業を選べば、弊害は小さく、効果は大きいという「ワイズ・スペンディング」論が幅をきかすことが多い。確かに、財政の役割は、所得再配分とともに市場の失敗によって民間では対応できない公共サービスを提供することで、資源配分の効率性を高めることにある。だが実際には、経済対策を短期間でまとめようとすると、費用対効果が十分に検討されない事業ばかりが盛り込まれる。近年の経済対策を見ても、予算策定の際に却下された事業の復活が目立つ。ワイズ・スペンディング論は、机上の空論だ。

ちなみに、日本では1960年代以降、社会インフラの整備が急速に進んだため、今後はそれらの更新時期が徐々に訪れる。維持管理費や更新費用を賄うと、新設に振り向ける資金をねん出することは早晩難しくなる。20年後には、維持管理費・更新費を全てねん出することはできなくなるため、どの資本ストックを残すのかという選択を迫られる。社会インフラを新たに作ると、毎年の予算の中で維持管理費が大きな負担となるだけでなく、将来、莫大な更新費が必要となることは十分理解されているだろうか。大型の公共事業など拡張的な政策を支持する政治家たちは、誰がその費用負担を強いられるのか、十分に考え抜いて発言しているのだろうか。

もちろん、近視眼的な財政・金融政策の大盤振る舞いが政治家によって志向されること自体は、何ら驚きではない。潜在成長率の低下を認めず、必要な改革を先送りし、裁量的政策を駆使することで目の前の経済状況の見栄えを良くするという政治手法は、欧米諸国でも長く用いられてきた。将来世代に負担を先送りする選択がなされやすいことは、洋の東西を問わず、代議制民主主義を採用していることのコストだと言えよう。

政治家は、落選すれば「ただの人」になる。低成長を前提とした制度改革は、増税や社会保障給付のカットを通じた歳出削減など有権者に新たな負担を強いるだけなので、回避へのインセンティブが強く働く。だからこそ、先進国はいずこも将来世代への負担押しつけの結果として公的債務の山をこしらえてしまうことになるのだ。

しかし、こうした姿勢が行き過ぎれば、財政危機を招く。特に心配なのが、日本の一部でマネタイゼーションへの安易な期待が広がっていることだ。

中央銀行はマネーという特殊な負債を発行することができるため、マネタイゼーションによって極限まで財政ファイナンスを行うことができる。だが、臨界点に達すれば、財政危機、金融危機、経済危機を招き、われわれの経済・社会制度に壊滅的な打撃を与えることは、歴史が証明している。そして、そうした歴史的教訓から得た知恵として、政治から相当程度独立した中央銀行制度を構築し維持してきた。中央銀行の独立性の目的は、広い意味では「インフレ・バイアスの遮断」だが、より本質的には「マネタイゼーションの誘惑の遮断」であることを今一度思い起こすべきだ。

<歴史の知恵を軽視してはいけない>
もしかしたら、マネタイゼーションを支持する人々は、筆者の理解を超えた経済政策を見出しているのだろうか。たとえば、正しい政策の目的と手段を兼ね備えた為政者が、その目的を実現するために、今はあえて中央銀行の独立性に制限を加え、マネタイゼーションを推進しようとしているのだろうか。しかし、百歩譲って、そのとおりだとしても、そうした行為は厳に慎むべきだと考えている。

まず、いったん変更を加えて、マネタイゼーションが可能になれば、制度を元に戻すのは容易ではない。代議制民主主義の下で選ばれる次代の為政者たちが、健全な財政・金融政策に復するとは限らない。現にわれわれは戦前にこの失敗を経験している。どのような為政者が選ばれても、彼らがマクロ経済や社会に対して致命的な失敗を犯すことを避けるために、われわれは中央銀行に政府からの独立性を付与し、同時にマネタイゼーションを厳しく禁じてきた経緯がある。歴史の知恵が生み出した社会制度の根幹に変更を加える際には、最大限慎重であらねばならない。

また、資産市場を通じて政策効果が広く波及することを考えれば、マネタイゼーションは新たなバブルを生み出す恐れがある。確かに、中央銀行のファイナンスによって、政府が支出を大規模に増やし始めた段階では、新たな所得や支出が湧き出てくるから、消費や投資は増え景気は活気を取り戻す。成長率も高まるだろう。しかし、繰り返すが、それは先食いにすぎない。効果が一巡すれば、増加していた支出は減少し、成長率も大きく落ち込む。後に残るのは、さらに膨らんだ公的債務と収益性の低い政府主導の過剰ストックである。要はバブル現象と変わらない。

そして、成長率の低下を避けるために、再び中央銀行のファイナンスによって、財政支出を増やすというプロセスが継続される。あたかもモルヒネ中毒のように、マネタイゼーションはいったん始まれば、歯止めがきかなくなるのである。

危機に陥る過程を想像してみよう。まず長期金利上昇を抑えるために、中央銀行は市場での国債買い支えを迫られるようになる。だが、次第に効かなくなり、政策そのものが事態を悪化させる。国債を買い支えるために供給するマネタリーベースの価値の裏付けが、中央銀行が保有する国債だからだ。国債が紙くずとなれば、マネーの価値が失われる。長期国債の市場での発行は困難となり、最終的には短期国債ですら買い手はいなくなり、中央銀行がほとんどを引き受けるようになる。

国内総生産(GDP)の2倍以上の公的債務を抱えている日本経済は、危うい均衡の上に立っている。低金利が続いているから財政破綻が避けられているとも考えられ、長期金利が急騰すれば、その途端に財政危機・金融危機が始まる可能性がある。そのような中で、資産価格に相当な影響を及ぼす極端な拡張的政策に打って出ることは、一か八かの賭けとなるのではないだろうか。

政策を決定する際には、少なくとも社会やマクロ経済に取り返しのつかない悪影響を与えないという、慎重な姿勢が必要である。マクロ経済の仕組みに関する限り、われわれが理解していないことのほうが、まだまだ多い。裁量的なマクロ経済政策が万能と考えることの危険性、あるいは進歩主義的な介入主義への過度な信頼に対する反省が、2000年代の世界的な金融危機から得られた教訓ではなかったか。

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。


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