毎日、1000件以上のアクセス、4000件以上の閲覧がある情報発信ブログ。花や有機農業・野菜作り、市民運動、行政訴訟など
てらまち・ねっと



 福島原発事故に関して、東電幹部を不起訴にした検察の判断に対して、法律に基づいて市民で構成する「東京第5検察審査会」が「起訴すべき」の議決をした。
 原発事故だからというだけでなく、ここ岐阜の事件で2度「不起訴不当」の議決をもらったことがあるので、なお、興味を持っている案件。

 昨日公表された「議決書」の要旨から以下。
 ★《グループ会社の東電設計が算出した最大値で高さ15.7メートルという津波の試算結果は、原子力発電に関わる者としては絶対に無視できない》
 ★《適切な安全対策を検討し、合理的かつ適切な津波対策が講じられていれば、今回の事故のような重大事故、過酷事故の発生は十分に回避することができた。3人には結果回避義務が認められる》
 ★《安全対策よりも経済合理性を優先させ「万が一にも」「まれではあるが」発生する可能性のある災害について予見可能性があったにもかかわらず、それに目をつぶって何ら効果的な対策を講じようとはしなかった東京電力の3人の姿勢について適正な法的評価を下すべき》

 ということで、今日のブログには「福島原発告訴団」のページにリンクし、「起訴議決を受けての団長声明」や議決書を見る。
 他には、次を記録。

●“原発”めぐり東電旧経営陣3人強制起訴へ/読売テレビ 07/31
●東電元会長ら3人、強制起訴へ 検審が2度目の議決/朝日 7月31日
●福島原発事故:東京第5検察審査会の議決要旨/毎日 7月31日
●社説:東電元幹部起訴へ 裁判で問う意味はある/毎日 8月01日

●注目の人 直撃インタビュー  福島原発告訴団の河合弁護士「日本が滅ぶとしたら戦争と原発」 世界で一番、原発を稼働させてはいけない国/日刊ゲンダイ 2014年9月8日 世界で一番、原発を稼働させてはいけない国

人気ブログランキング = 今、1位
人気ブログランキング参加中。気に入っていただけたら ↓1日1回クリックを↓
 ★携帯でも クリック可にしました →→ 携帯でまずここをクリックし、次に出てくる「リンク先に移動」をクリックして頂くだけで「10点」 ←←
 ★パソコンは こちらをクリックしてください →→←←このワン・クリックだけで10点

 ●福島原発告訴団
2015年7月31日金曜日 【強制起訴へ!】 議決書、団長声明
  起訴議決を受けての団長声明   2015年7月31日福島原発告訴団 団長 武藤類子

私たち福島原発告訴団が2012年に14,716人で行った告訴・告発事件について、東京第五検察審査会は本日7月31日、被疑者勝俣恒久、武黒一郎、武藤栄の3名について起訴議決としたことを発表し、3名は強制起訴されることとなりました。
未だに11万人の避難者が自宅に戻ることができないでいるほどの甚大な被害を引き起こした原発事故。その刑事責任を問う裁判が開かれることを怒りと悲しみの中で切望してきた私たち被害者は、「ようやくここまで来た」という思いの中にいます。

この間、東電が大津波を予見していながら対策を怠ってきた事実が、次々に明らかになってきています。これらの証拠の数々をもってすれば、元幹部らの罪は明らかです。国民の代表である検察審査会の審査員の方々は、検察庁が不起訴とした処分は間違いであったと断じ、きちんと罪を問うべきだと判断したのです。今後、刑事裁判の中で事故の真実が明らかにされ、正当な裁きが下されることと信じています。
福島原発告訴団は、この事件のほかにも汚染水告発事件、2015年告訴事件によって原発事故の刑事責任を追及しています。事故を引き起こした者の刑事責任を問うことは、同じ悲劇が二度と繰り返されないよう未然に防ぐことや、私たちの命や健康が脅かされることなく当たり前に暮らす社会をつくることに繋がります。その実現のために、私たちは力を尽くしていきます。これからも変わらず暖かいご支援をどうぞ宜しくお願い致します。

東京第五検察審査会  議決の要旨ダウンロード(PDF・1MB)
・・・・・・・(略)・・・

●“原発”めぐり東電旧経営陣3人強制起訴へ
          読売テレビ 07/31
 福島第一原発事故をめぐり、東京電力の旧経営陣3人を起訴すべきかどうか審査を続けていた検察審査会は31日、「強制的に起訴すべきだ」との議決を発表した。今後、原発事故の刑事責任を問う裁判が始まることになる。

 福島第一原発事故をめぐっては、検察審査会が去年、東京電力の旧経営陣3人を業務上過失致死傷罪で「起訴すべきだ」と議決したが、東京地検は「事故当時、10メートルを超える大津波の危険性を認識すべき状況だったとは言えない」として不起訴処分にしていた。

 これを受け、2回目の審査を行っていた検察審査会は31日、東京電力の勝俣恒久・元会長、武藤栄・元副社長、武黒一郎・元副社長の3人について「強制的に起訴すべき」と議決した事を明らかにした。

 議決の中で検察審査会は「3人は『万が一にも』『まれではあるが』10メートルを超える津波が発生する場合まで考慮して備えなければならない高度な注意義務を負っていた」「原発を停止して津波対策を取っていれば、東日本大震災による事故は防げた」と指摘した。

 その上で、3人を強制起訴すべきだと判断した理由について、「安全対策よりも経済合理性を優先させ、何ら効果的な対策を講じようとしなかった東京電力元幹部の姿勢について、適正な法的評価を下すべきだ」とした。

 勝俣元会長ら旧経営陣3人は今後、裁判所が選ぶ検察官役の指定弁護士によって強制的に起訴され、裁判で刑事責任の有無が問われることになる。

 これまで全国で強制起訴された8件の事件のうち、有罪となったのは2件にとどまっており、裁判で刑事責任があると認めるのは難しいとの見方も出ている。

●東電元会長ら3人、強制起訴へ 検審が2度目の議決
         朝日 2015年7月31日
 東京電力福島第一原発の事故をめぐり、東京第五検察審査会は31日、東電の勝俣恒久元会長(75)ら3人について、業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴すべきだとする2度目の議決を公表した。今後、裁判所が指定する検察官役の弁護士が3人を起訴し、裁判が始まる。同事故の責任が、刑事裁判で問われるのは初めて。

 議決日は7月17日。ほかに強制起訴されるのは、武藤栄(65)、武黒一郎(69)の両元副社長。事故には複雑な要因が絡むため、初公判までには1年以上かかりそうだ。

 3人は、福島第一原発の安全対策を講じる義務があったのにそれを怠り、2011年の東日本大震災での津波による原発事故で、周辺病院の入院患者を避難中に死亡させるなどしたとして、被災者らから告訴・告発されていた。

 議決は「原発事故は取り返しがつかない。勝俣元会長らは『万が一』にも備えておかなければならない高度な注意義務を負っていた」と指摘。東電が事故前に15・7メートルの津波を試算していたことを「絶対に無視できないもの」とし、事故は予測できたとした。そのうえで、試算をもとに「原発の運転停止を含めた対策を講じていれば、事故は回避できた」と結論づけた。

 また議決は「安全より経済合理性を優先させ、発生する可能性のある災害に目をつぶって、何ら対策を講じようとしなかった東電元幹部らの姿勢について、適正な法的評価を下すべきではないか」とも言及した。

 東京地検は13年9月に3人を不起訴としたが、昨年7月に同検審が「起訴相当」と議決。今年1月に地検が再び不起訴としたため、同検審が2度目の審査をしていた。

     ◇
 〈強制起訴〉 検察官の不起訴処分に対し、11人の市民からなる検察審査会が、「起訴すべきだ」と2度にわたって議決した場合、容疑者が強制的に起訴される制度。市民感覚を反映させる司法制度改革の一環で2009年5月に始まった。起訴すべきだと議決するには、審査員11人のうち8人以上の賛成が必要。助言役として弁護士が立ち会う。起訴するのは、裁判所から選任された「指定弁護士」で、裁判では検察官役として立証も担う。

●福島原発事故:東京第5検察審査会の議決要旨
         毎日新聞 2015年07月31日
 東京電力福島第1原発事故を巡り、東京第5検察審査会が東京電力の旧経営陣3人を「起訴すべきだ」とした議決の要旨は次の通り。

 ◆予見可能性
 原発事故が深刻な重大事故、過酷事故に発展する危険性があることに鑑み、その設計においては当初の想定を大きく上回る災害が発生する可能性があることまで考え、「万が一にも」「まれではあるが」津波、災害が発生する場合まで考慮して備えておかなければならない。このことは原子力発電に関わる責任ある地位にある者にとって、重要な責務といわなければならない。

 政府の地震調査研究推進本部(推本)の長期評価が、大規模な津波地震が発生する一定程度の可能性を示している以上、それを考慮しなければならないことは当然である。それに基づきグループ会社の東電設計が算出した最大値で高さ15.7メートルという津波の試算結果は、原子力発電に関わる者としては絶対に無視できない。

 試算結果は少なくとも福島第1原発の建屋が設置された敷地を超えて浸水する巨大な津波が発生する可能性が一定程度あることを示している。そして東京電力自体が過去に2回の浸水、水没事故を起こしている。推本の長期評価、東電設計の試算結果を認識する者にとっては、巨大な津波が発生し、重大で過酷な事故につながることについて具体的な予見可能性があったというべきである。

 2008年3月18日に東電設計の試算結果が出され、その後も地震対応打ち合わせが回を重ね実施されていることからすれば、勝俣恒久・元会長と武藤栄、武黒一郎の両元副社長の3人は同日以降のいずれかの時点で、推本の長期評価とそれに基づく試算結果について報告を受けていることが強く推認される。

 勝俣元会長は報告を受けていない旨供述するが、地震対応打ち合わせは勝俣元会長への説明を行う「御前会議」とも言われ、津波対策を講じるには少なくとも数百億円以上かかる可能性があり、最高責任者である勝俣元会長に説明しないことは考えられない。

 3人には報告を踏まえ、敷地を大きく超える津波が「万が一にも」「まれではあるが」発生することについて具体的な予見可能性があり、最悪の場合、重大事故、過酷事故が発生することについて具体的な予見可能性があったというべきである。

 ◆結果回避可能性
 推本の長期評価に基づき東電設計で試算結果が出されて以降、福島第1原発では何らかの津波対策を検討する必要性が生じていた。適切な津波対策を検討している間に、福島第1原発の敷地を大きく超える津波が発生して原発が浸水してしまう可能性が一定程度あったといえる以上、被害を避けるために適切な津波対策を検討している間だけでも福島第1原発の運転を停止することを含めたあらゆる結果回避措置を講じるべきだった。

 福島第1原発は日本で最も津波に対する余裕が少ない原発だった。東京電力では推本の長期評価、それに基づく試算結果を踏まえ、既に敷地から約10メートルとなる防潮堤を設置する対策案は上がっており、今回のような規模の地震、津波についても浸水を回避することは十分可能だった。

 当時の東京電力には今回の事故のような非常時に対応するマニュアル等が存在しなかった。大きな地震やそれに伴う大きな津波が発生する可能性が一定程度あったにもかかわらず、それに目をつぶって無視していたに等しい状況である。

 適切な安全対策を検討し、その間だけでも運転停止を含めた合理的かつ適切な津波対策が講じられていれば、いつ今回の地震と同規模の地震、津波が発生しても今回の事故のような重大事故、過酷事故の発生は十分に回避することができた。3人には結果回避可能性があり、結果回避義務が認められる。

 検察官は当時の状況で運転停止はできなかったと考えているようである。しかし、ひとたび発生すると取り返しのつかない事態になる原発事故では何の説得力も感じられない。

 運転停止を含めた対策を講じることはできなかったとの主張は、津波によりひとたび原発に重大事故が発生すると、放射性物質の大量排出による周辺地域への放射能汚染を招き、ついには人類の種の保存にも悪影響を及ぼしかねない事態に至ってしまうという事柄の重大さを忘れた、誤った考えに基づくものと言わざるを得ない。

 甚大な被害を及ぼした結果から振り返って思うのは、安全対策よりも経済合理性を優先させ「万が一にも」「まれではあるが」発生する可能性のある災害について予見可能性があったにもかかわらず、それに目をつぶって何ら効果的な対策を講じようとはしなかった東京電力の3人の姿勢について適正な法的評価を下すべきではないかということである。

 ◆被害者
 建屋の爆発によりがれきに接触するなどして負傷した東京電力の関係者及び自衛官等13名の負傷は事故との因果関係が認められる。双葉病院に入院していた患者44人は、長時間の搬送、待機等を伴う避難を余儀なくされ、既往症を悪化させ死亡したと認められ、被害者とするのが相当。

●社説:東電元幹部起訴へ 裁判で問う意味はある
         毎日新聞 2015年08月01日
 甚大な原発事故を防ぐ手立てを尽くさなかった東京電力元幹部の責任は、刑事事件の法廷で問われるべきだ。福島第1原発事故をめぐり、検察審査会が出した結論である。

 市民から成る審査員11人が「起訴すべきだ」と判断した。2度目の議決により、勝俣恒久元会長と武藤栄、武黒一郎両元副社長の3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴される。

 事故の3年前の2008年の時点で、最大15.7メートルの津波が発生するとの試算が出され、3氏はその事実を知ったのに責任者として適切な対応を取らず、重大事故を未然に防止する注意義務を怠った−−。それが起訴議決の理由だ。

 そうした結論に至った理由として、原発事故がひとたび起これば、重大、過酷なものになる危険性に議決書は何度も言及している。その考え方は理解できる。

 議決書は、原発を動かすに当たり、コストよりも安全対策を第一とすべきだと指摘する。海外での原発事故も例にひき、「万が一にも」「まれではあるが」津波が発生した場合に備えるべきだったと強調した。

 とはいえ、個人の刑事責任を問う業務上過失事件の立証に当たっては、「予見できたか」と「回避できたか」が焦点になる。議決書はまず、原発を動かす東電のトップにいた3人の責任を重くとらえた。さらに、3人は立場上、従来の想定を超える津波高の試算について報告を受けていたと認定した。ならば、対策がとれたはずだったと結論づけた。

 3人を不起訴処分にした検察は、試算の精度から「3人が具体的に危険を予見できたとはいえない」と判断したが、議決は「何の説得力も感じられない」と厳しく批判した。

 刑事責任の有無は今後の裁判に委ねられる。ただし、「罪を問うべきだ」と、市民たちが2度にわたり結論づけた意味は重い。

 政府や国会の事故調査委員会が解散し、継続して原因究明を求める声に応えないまま年月が経過する。

 東電関係者の証言なども一部が公開されたに過ぎない。「なぜ、事故は防げなかったのか」。多くの被災者が今も疑問を抱いている。

 3人の公判は事故の原因究明を目的とする場ではないが、証言を通じ被災者の疑問が少しでも明らかになることが期待できる。経営トップだった3人は、東電の中で自らが果たした役割を真摯(しんし)に語ってもらいたい。

 議決は、原発事故に伴う長時間の避難で死亡した入院患者関係者ら福島の被災者の告訴によるものだ。患者は被害者と認定された。多くの被災者が公判を注視する。公判を維持する検察官役の指定弁護士の責任は重い。検察の協力も欠かせない。

●注目の人 直撃インタビュー  福島原発告訴団の河合弁護士「日本が滅ぶとしたら戦争と原発」
             日刊ゲンダイ 2014年9月8日
世界で一番、原発を稼働させてはいけない国
「安倍首相は亡国の政治家です」――福島原発告訴団の先頭に立って闘う弁護士は言い切った。検察審査会は7月、東京電力元幹部3人の刑事責任を認めて、「起訴相当」の議決を下した。これを受けて検察は再捜査し、起訴すべきかを再検討する。もう一度、不起訴としても、検察審査会が再度、「起訴相当」の議決をすれば、強制起訴という運びになる。この議決の意味、今後の展開、原発再稼働に突き進む安倍政権の横暴など、多岐にわたって聞いてみた。

――検察審査会の議決、画期的ですよね。

 私は非常に感動しました。あれだけの事故を起こしながら、誰も責任を問われない。追及されないのはおかしいじゃないか、という市民感覚が、大企業寄り、権力寄りの検察の判断を覆したわけです。

――検察は大企業寄り、権力寄りですか?

そもそも検察がなぜ、東電幹部の刑事責任を問わず、不起訴にしたかといえば、やはり身内のかばい合いみたいなものがあると思う。東電は超巨大企業で権力そのもの。原子力ムラの中核ですから、起訴するのはマズイという、悪い意味での政治判断があったと思います。そこから出発していろいろな理屈をつくった。それで、津波の予見可能性がなかったということにしたのでしょうね。

――政府の地震調査研究推進本部は02年、福島県の津波地震の可能性を発表していたし、東電も08年、最悪の場合、津波水位が15・7メートルになると試算していました。

 そもそも、予見可能性がないのであれば、どんなに被害が大きくても、責任は問えないという検察の考え方が間違っています。まず被害の大きさを見て、それを防ぐためにどれくらいの注意義務を課すべきか。これを考えなければいけない。原発の運営責任者は、普通よりもずっと重い注意義務を課されるべきなのに、検察は花火工場と原発の注意義務を同じ目で見ている。花火工場が爆発しても周辺が少し壊れるだけですが、原発は違う。検察はこうした常識をわきまえるべきです。

――検察の再捜査についてはどう見ていますか?

 検察内部でも意見が二分されていると聞いています。今度の議決には検察内部でも非常に大きな衝撃が走っていると思います。私は検察が起訴に踏み切る可能性もかなり大きいとみています。検察は信頼を取り戻すためにも、国民の支持を得るためにも、起訴すべきだ。そういう意見が内部でもあると聞いています。

――そうならなければ、国民の生命よりも原子力ムラと政府の利益が優先することになってしまう。これほどおかしな話はありませんね。

 私は二十数年前から反原発で闘っている。なぜ原発に反対するのかというと、日本は中規模以上の地震発生率が世界平均の130倍もあるんですよ。フランスやドイツにも原発はあるが地震はない。世界で最も原発が立ち並ぶのは米国の東海岸ですが、ここにも地震はない。地震が多い地域で原発を稼働させているのは日本だけです。裏を返すと、日本こそが世界中で一番、原発を稼働させてはいけない国なんです。

凍土壁もできないのにウソばかり言う安倍首相
――しかし、政府は原発がないと経済が成り立たないみたいなことを言う。

 震災後、日本は停電になると言われましたがウソでした。日本の水力、火力発電の設備能力を見れば、原発をゼロにしても火力の稼働率を50%から70%に引き上げるだけで十分、賄えるのです。で、最近では停電するぞ、という脅しは言わなくなった。その次に何を言っているかというと、原発を止めたことで、3兆6000億円の化石燃料の輸入代金が増加している。だから、国富が流出するというものですが、円安と化石燃料の価格上昇が輸入代金を押し上げているわけで、実際は1兆5000億円程度だし、輸入量自体は原発が止まった後もほとんど変わっていないのです。日本はGDPが600兆円あり、国富は3000兆円ある。海外資産も300兆円あります。年間1・5兆円が流出したところで、日本経済を揺るがすようなことにはなりません。CO2対策というのもひどい話で、CO2で国は滅びますか。日本だけ取り組んだって米国や中国が協力しなければ意味がありません。原発は違いますよ。日本だけの判断で止められるし、国民の生命を守るためにリスクを回避できるのです。

――政府は世界最高の安全基準だとか言っていますね。だから、それをクリアすれば、再稼働していいのだと。

 世界最高基準というのはウソ。そんなことを言っているのは安倍さんだけで、世界中の誰も認めていません。原子力規制委員会の田中俊一委員長だって、世界一ではない、あれは単なる政治的発言でしょうという趣旨のことを言っています。核燃料の再処理にも失敗しているし、こうなると、原発を続ける理屈はありませんね。

――それでも日本はなぜ、原発をやめないのでしょうか。

 原子力ムラが儲かるからです。電力会社はかかった原価の約103%を総括原価方式で電気代に転嫁できる。電力会社は気前のいい注文主なんです。だから、みんなひれ伏す。発電機メーカーも鉄鋼も商社もマスコミも。そこに無数の下請けと無数の労働者がいる。都合のいい意見を言う御用学者もいる。電力会社から研究費をもらえて、彼らが学生の就職の世話もしてくれるからです。政治家は献金をもらい、電力労組からは票が来る。国は電源三法交付金でカネをばらまき、自治体は言うがまま。つまり、お金の回し合いをやっているわけです。花見酒をして、飲めや歌えやとやっているようなものです。その酒はどこから来るのか。国民が払った税金と電気料金ですよ。

――その構造が3・11以後も全く変わっていないのが驚きです。

 裁判所の意識は変わってきたなと思いますが、この利権構造は岩盤です。依然として強大で今、再稼働、再稼働と巻き返しを図っている。その先頭に立っているのが安倍政権ですよ。私は安倍さんというのはウソつきだと思っている。汚染水の問題で、「アンダーコントロール」と言い切ったが、明らかなウソです。今だって毎日漏れて、凍土壁もできない。何がアンダーコントロールなんですか。そういうことをヌケヌケと言う。ウソツキ政治家です。世界最高の安全基準というのもウソ。わざと言っているのか、頭が悪くて知らないで言っているのか分かりませんけれど。

――そんな安倍政権が高い支持率を得て、イケイケです。

 私は仮に日本が滅びるとすれば、それは戦争と原発事故しかないと思う。自然災害や財政破綻は絶対立ち直ることができる。阪神淡路大地震でも、その後、被災地は前よりもきれいになった。東北も原発事故の影響を受けていないところは必ず立ち直ります。しかし、原発事故は違うのです。戦争と原発という一番危険な2つのことを推進しているのが安倍政権です。ヘタしたら国を滅ぼす。彼は亡国の政治家だと思います。歴史が判断しますよ。

▽かわい・ひろゆき 1944年生まれ、弁護士。東大法卒。さくら共同法律事務所所長。中国残留孤児の国籍取得を支援する会会長。NPO法人環境エネルギー政策研究所監事、浜岡原発差止訴訟弁護団長、大間原発差止訴訟弁護団共同代表。


コメント ( 0 ) | Trackback ( )