会社の近くのコンビニもドトールも12時からしばらくは混雑するので、昼休みはいつも12時半頃まで時間をつぶしてから昼食を買いに出かける。12時半まではnetや雑談で過ごすことが多いが、ときどき、寝不足を解消するため昼寝をすることもある。以前はコンビニ弁当を食べた後に昼寝していたが、13時になって顔に跡がついたまま打ち合わせになってしまったり、ぼーっとしたままだったりした。そこで、食事と昼寝の順番を逆にしてみたら、顔についた跡はともかく、食後すぐに仕事をはじめても眠くならないので良さげだ。
今日も机につっぷして、たたんだハンカチを腕に乗せてそこを枕代わりにして寝ていたら、肩を揺すられた。驚いて顔を上げるとそこに総務の女の子。
「メル友から意味深なメールが来たんです」と彼女が言う。
「メル友って、例のペンパルサイト?」
「そう」
「意味深って・・・・・・。借金のお願いかなんかか?」
「ううん」
以前、英語の文献を読んでいるぼくを見て
「わたしも英語の勉強がしたいなあ」と言う彼女に、
「アメリカ人のボーイフレンド作れば一発だよ。英語も覚えられるし、1石2鳥」
「でも、アメリカ人なんて近くにいないじゃない」
そういう彼女に、昼休みにいっしょに行ったネットカフェでフリーのメールアドレスをとってあげて、海外のペンパルサイトを紹介したのは1ヶ月前だった。
その後、彼女から会社のぼくのメールアドレスにいくつかのメールが舞い込んだ。その度に、英語で返事を書いていたのだが、彼女からは一度もまともな英語で書いたメールは届かなかった。
彼女のメールは、最初のうちはどこからか手に入れたジョークウエアやら、動画のグリーティングカードだったり、あるいは、ウィルスだったりした。そのうち、日本語でLOLってどんな意味?とか、XXXOって文末にあったけど何のサイン?などと聞いてきた。だから、結構、盛んに海外のメル友とはメールのやり取りをしていたのかもしれない。
ちなみに、LOLはlots of laughとかlaugh out loudの略で、日本で使う"(笑)"とか"w"みたいな感じ。XXはKissで、XOXOでHugs and Kissesという意味かな。まちがっても、"executive officer"じゃないはず。
「で、意味深のメールってどういう意味?①ワケありっぽい、②なんとなくヤバそう、③意味わかんねー。このうちどれよ?」
むしろ、彼女の日本語の意味がよくわからないぼくは彼女に聞いた。すると彼女は
「3番目」と答える。
「英語の意味がわかんねーの?」
「そう」彼女はあっけからんと答える。
まあ、たしかに、ぼくは英語で何回か返事を書いたのだが、彼女から英語で書いたメールは一度も送られてこなかった。ちょっと顔を見ないと思っていたら、しょっちゅう海外旅行に出かけてた彼女のことだから英語なんてペラペラで、つまりは脳ある鷹なんだと思っていたけど・・・・・・。
「そのメールあとで転送してよ。訳したげる」
「プリントして持ってきたけど、読まないでね」 彼女は最初からそのつもりだったんだ。
「読まなきゃ訳せないよ」
「じゃあ絶対誰にも言わないでね」
「こう見えても、対人恐怖症だから口は固いよ。ブログにはすぐ書くけど」
「絶対内緒にしてよね」
彼女にはぼくが最後に言った言葉は聞こえなかったみたいだ。もっとも、彼女に聞こえないように言ったのだが・・・・・・。
メル友からのメールは次のような内容だった。
Sorry that I didn't write again earlier but I didn't want too much and intrude on your personal time.
Have you ever been to the states?
It is alright here but I grow weary of it because of the president and the many rude and inconsiderate people.
Here is the neighborhood I live in ***.
P.S. Sorry I couldnt give you an even exchange with the japanese language
で、ぼくは訳してあげた。
”もっと前に返事を書かないでゴメンね。でも、君の時間をあんまり邪魔したくなかったんだ。君はアメリカに来たことがある?こっちは大丈夫だけど、大統領や、たくさんのヤンキー(不良ども)や、思いやりのない人々のために嫌になって来たんだ。私の住んでる***に、その隣人がいる・・・ったく!
P.S. 日本語でやり取りさえ、できなくてゴメン・・・。”
彼女が言うような意味深なメールではないと思った。向こうの生活の状況を正直な感想で述べている。きっと、若い男の子なんだろう。アメリカのギャル特有の言い回しがない。彼の隣人はきっとDNQな奴なんだ。
ぼくは彼女に、日本の鯉のぼりのことでも返事してあげれば良いのではないかとアドバイスした。英語の勉強もかねて、できるだけ相手のペンパルを元気付けてあげれば、国際結婚も夢じゃない。・・・・・・と思う。彼女から、お礼にちっちゃな饅頭がたくさん入ったパックをもらった。
彼女のおかげで、午後の会議に顔に線をつけたまま出席しなくてすんだ。そのかわり、一日中、寝不足でぼーっと(ry。