先ごろ知り合ったヨット仲間から、「今の仕事は何をしているの?」と聞かれた。
ぼくの会話の返事は、どうも、打てば響くというリズムとは全く次元の違うものらしい。つまり、頭の回転が人よりも鈍いせいなのだが、考えながら話すから言葉に詰まりがちになる。だから、「技術屋さんでしょ?」と決めうちされての質問だった。
もちろん、「企業秘密」といこともあって、軽々しく現在の仕事の内容を詳しく話すわけにはいかないのだが・・・・・・。
なので、今の仕事、「触媒」が話題になった。
光触媒、環境、エネルギー問題。こうした触媒に関係する関心は総じて高いようだ。
そばで聞き耳を立てていた、大学で日本近代文学を専攻していたという女性が、寺田寅彦に触媒の名を冠した本があると言う。気になってネットで調べてみたら、青空文庫にあった。いまは、著作権の切れた小説などをボランティアの入力によるテキストでWEBで閲覧が可能になっている。いい世の中になったものだ。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/42227_16355.html
著者名は寅彦のペンネーム吉村冬彦。心に残ったのは、「異質触媒作用」という随筆のなかの「ドライヴ 」という作品。
”三時間か四時間だけ自動車を一台やとって、道路のいい田舎へ出かけてどこでも好きなところで車を止めて土が踏みたければ踏み、草に寝たければ寝る”
特に目的もなく、郊外に近頃流行のドライブを試み、田舎の景色を見て帰ってくると、見慣れた街が異様に美しく眺められる。いつもとは
まるで違った別の街に見えた。という話。
その上で、”馬鹿を一遍通って来た利口と始めからの利口とはやはり別物かもしれない”と書いてある。「馬鹿を一遍通る」。これが、「異質触媒作用」の意味するところだ。すなわち、漫画オタクが現世に復帰したときにはじめて、リアル世界の良いところが新しい目で見直せるかもしれないということか。どうなんだろう。麻生太郎首相どの。
さて、自分にとって、「馬鹿」とはなんなのだろう。単なる「馬鹿」なら、一遍ならず、毎日やっている自信がある。だが、一向に利口になる気配はない。やはり、もともと「利口」でなければ「馬鹿」をしても、意味がないのだろう。ということは、「利口」になるための努力を、もっとしなければならないということか。
こんなことを、ブログに書いている「馬鹿」な努力を重ねれば、少しは「利口」になっていくことを期待せずにはいられない。
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