2012年度から埼玉県の公立高等学校の入学者選抜試験が1回実施になる。
読売新聞、埼玉新聞等が報じたことによれば、県公立高校入学者選抜方法改善協議会(県入選協)は9日、2012年度入試(現在の中学2年生)から、
①前後期制を廃止する。
②試験は「3月上旬以降、できるだけ遅い時期」
授業時間を可能な限り確保するため。
③「5教科の学力試験1回」だけ実施。
とする「改善案」をまとめた。これに基づき、県教育局は7月までに、12年度の実施方法や試験日を決める方針。公立高校入試が1回の学力試験に統一されるのは34年ぶり。
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今年の2月と3月はとにかく忙しかった。
前期募集の2月16日は3年生の卒業認定の最終決定の時期と重なる。2月始めに卒業内定者は決まるものの、どこの学校でも3年生で成績不振や出欠席の問題で卒業認定がペンディングになる生徒がいるものである。そんな生徒が1人でもいれば、入試... なかなか大変である。後期募集の3月4日なんて、卒業式直前で1年生2年生は進級のかかった学年末考査である。世間のみなさんはご存じないかもしれないが、入試の前後には書類チェック、採点があるのである。
試験日程について、9日に行われた協議会の会合では、合格発表を卒業式前または後とする案が示されたと記事にはあった。県内各市町村、さいたま市の公立中学校等の卒業式は毎年3月15日前後である。そんな時期に入学者選抜の結果がでて、不合格になった場合、後はどうせよと言うのだ。委員から「卒業式間近だと準備する時間がない」といった意見もあり(あたりまえだ)、2012年度については3月上旬となる見通しなのだそうだ。
提案・要求がある。
「中学校卒業式に間に合うように、合格発表ができる試験(合格発表)スケジュール」にしてほしい。日程については、県教育局が3月1日~13日までの間で決定する見込みと毎日jp.にでていたが、是非そうするべきである。
あまり遅い合格発表(次年度の新入生の確定)は、高等学校の学校運営に影響が大きすぎる。通常新入生の準備登校は、中学校の卒業式後にだいたい実施している。そこで、制服、体育ジャージ他の採寸をしている。保護者と生徒に対して、学校として様々な事柄を説明し入学に備えてもらっている。だいたいこの場で仮クラスも発表。課題なども支持されることが多い。これがもしも1週間でも遅れれば、かなり新年度準備に影響がでる。これらを新年度になってから実施となれば、入学式そのものを遅らせないと実務上無理がある。
現在入試は前期募集(定員の75%)、後期募集(定員の25%)である。これでもしも、後期募集で欠員がでれば、今年のスケジュールでも3月の半ば以降、遅い場合は4月ぎりぎりまで2次募集(いわゆる「欠員募集」)を「しなければ」ならないのである。これが「3月上旬以降、できるだけ遅い時期」で「1回だけの入試」となれば、入試スケジュールが全体的に後にずれる。そうなると欠員募集もその分遅れる。授業確保も大事だが、あまりカッコいいことばかり言ってはいけないのだ。それとも欠員募集にまわるような中学生はどうでもかまわないとでも言うのか。そうとられるような、勘ぐられるようなスケジュールの組み方を、現場(中高)に持ってくるような愚は犯してほしくない。
平成22年度入試の場合、欠員募集の細目(募集定員等)が決まったのは、後期募集が終わった3月10日だった。それから、中学校では受験先を生徒・保護者と先生たちが決める。その後出願準備である。高校は出願書類の受領、試験の後、合格発表になる。全日制普通科の場合ほとんどが3月24日ごろ、定時制になると4月になってしまう場合もある。欠員募集にはこれだけの事務処理をしなければならない。それがイヤなのではない。中学校を卒業してしまった生徒(入試で行き場が決まらない生徒)に、もそこまでして、負担を乗っける理由が理解できないのである。
東京新聞のウェブサイト(ここは関東地方の公立高校の入試問題をウェブサイトに掲出してくれる)を見ても、関東地方で最も遅く公立学校の入学者選抜を実施しているのは、今年の場合は群馬県の3月9日、10日である。この県は5教科を二日に分けて実施している。このあたりが、翌年度のことを考えると限度である。
それと、この際、「マークシート試験の導入」を検討してもらいたい。どうしても②にこだわるのならば。
5教科の試験をすべてマークシートにするのは難しいという意見もあるかもしれない。マークシートそのものに問題意識をもつ中高の先生や保護者の意見があることも重々承知している。学力を測るツールとしていかがなものかという意見は、確かに一部正しいとは思う。しかし、大学入試センター試験を受験するのと同じように、1度どこかの公立高校ですれば、不合格になってもその点数が持ち点にできる。そうすればその点数をもって、別の学校を受験(出願)できる。高校は学力検査得点と、中学校からの内申書得点、面接で合否を決めることもできる。1度落ちた中学生に、スケジュールを後にずらしてあまり過度な負担をかけることは、公立学校のすることとして、世の中に納得してもらえるのだろうか。改善できないはずはないのだ。そんなことを思う。僕たちも今のように採点日を確保し、授業を臨時休業にする日数が多いのはまずいのだ。1日でも余計に授業をしたい時期なのだから。
現在の5教科の入試については、県教委の各教科の採点基準にもあるように、部分点を認めることができる。英語の学力検査であれば、「内容に応じて部分点を認める」とか、英作文の場合、5文以上書くことになっていても、「5文に満たない場合でも採点の対象とする」ことができる。どのように採点の対象とするか否かは、学校ごと(受験生の集団の学力)にあわせて、それぞれの学校(の先生たち)が決めねばならない。これはありとあらゆる解答を予測できない以上、模範解答として統一的に例示できないので、これしか手段がないのである。つまり、同問題で同得点でも、受験した学校によっては、採点基準が違っているのが前提なのだ。学力の差があることが前提なのだ。だから、3月の欠員募集では、普通科高等学校においては全日制も定時制も改めて学力検査(テスト)を受験させているのである。1度受験しているのだから、その得点が持ち点として使えないのは、こういうわけなのだ。でも、今よりも入試の時期が全体的に後にずれたら、これは、やっぱり加重負担だろう。マークシートならば、全県的に統一的な採点ができる。ど~しても「3月上旬、できるだけ遅い時期」にこだわるのならば、」もちろん現在以上に公立学校の入試序列化を進めることはいいこととは思えない部分もあるが、やはり検討をすべきである。実態としてどの程度の学力の生徒が、それぞれの学校に入学しているかわかることは、高校にとっても悪いことだけではないはずだ。
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何でも、言われたままにでは、ひょっとすると公益を損ねるかもしれないから、意見は言っておきたい。
以上。