『メアリと魔女の花』を手がけたスタジオポノックによる3本の短編からなるオムニバス形式のアニメーション。
大嵐の濁流にのみ込まれたサワガニ一家の父親のトトを捜すため、兄のカニーニと弟のカニーノは生まれて初めて旅に出る(『カニーニとカニーノ』)。
たまごアレルギーのシュンは、母の留守中にたまごの入ったアイスクリームを食べてしまう(『サムライエッグ』)。
いつも通りアパートを出た青年は、透明人間だった。自動ドアもATMも反応せず、重力に見放された彼は、空に飛んでいってしまう(『透明人間』)。
+++++ +++++
本作の鑑賞は全く予定外。Movixで情報を得たのは6月ごろ。面白そうだと感じていた。
3作はそれぞれ短編映画である。ストーリーは、少しでも書くとネタばれになるので慎む。でも、感心したところは書きたいと思う。
カニーニとカニーノについては、事前に木村文乃さんと鈴木梨央さんがCVということは知っていた。この2人、基本的にカニ語である。2人の両親も当然カニ。ただし、4人(4カニ)は人の姿をしているので、妖精のようでもある。
本作、「水」の表現がすばらしいと思う。実写とアニメを被せているかのように見えた。帰宅後調べると「キャラクターは手書き、それ以外はCG」とのこと。「水」は実写でも、手書きでもなくCGということになる。その美しい舞台装置の中で、カニの兄弟がヒーローになる。
ホンワカしたエンディングで面白かった。
シュン君。ひどいたまごアレルギーである。それ以外はホントに普通の小学生。ものがたりにはアナフィラキシーショック、エピペン等も出てくる。
必死に子どもを守るお母さん、たまごアレルギーと向かい合わざるを得ない息子。どこにでもあるものがたり。つらい経験の中で、シュン君は成長していく。
劇場には幼稚園・小学生低学年の子どもを連れた親子が10組くらいいたが、子どもたちが一番シ~ンとしていたのが本作。お母さんのCVが尾野真千子さん。ピッタリだった。
透明人間の彼に、自動ドアは反応しない。でも、バイクには乗れる。存在はするけど、質量がないようだ。
周りに気がつかれない彼は、どうしてヒーローたり得たのか。
気がつかれない孤独は、なんだか現代の社会を反映していると思えた。なお、ほとんど話さない透明人間のCVは、オダギリ・ジョーさんである。
米林宏昌・百瀬義行・山下明彦3監督が描くそれぞれのヒーロー像。3作共通のイメージをエンディングテーマの「ちいさな英雄」(木村カエラさん)がまとめている感じがした。
なお、英語版タイトルはMODEST HEROES。modestは「慎み深くて、派手でない、質素な、控えめな、(質・量・程度など)あまり多くない」の意味。3作品の英語タイトルは順に、Kanini & Kanino、Life Ain't Gonna Lose、INVISIBLEである。
エンドロールに高畑勲監督への献辞がある。
直観には従うべきだと再認識。おすすめの作品である。