全英連参加者のブログ

全英連参加者の、言葉やその他諸々についての雑感... 不定期更新です。

平成30年度埼玉県公立高等学校入試 英語リスニングテスト分析

2018-08-25 04:00:00 | 教師の仕事 2018

 今年も英語実音テスト問題の音源CDを借り受け、リスニングテストの分析を実施した。分析ポイントは、前年度問題形式との比較。変更の有無、wpm*の確認である。

***** *****

 3月1日(木)14時40分、英語学力検査の開始チャイムが鳴る。その数秒後「放送を聞いて答える問題」が始まる。この問題が終わらなければ、他の問題に手をつけることは、実質的に不可能である。
 平成30年度入試も、試験は全部で7問、求められる解答数が11である。

 問題1から問題3
 会話を聞き、質問に対する答えとして最も適切なものを選ぶ問題である。四者択一、ヒントのイラスト、地図がついている。
 問題4と問題5
 それぞれ「ある場面」を説明する英文を聞き、質問に対する答えとして最も適切なものを選ぶ問題である。四者択一で、英文の答えが出ている。
 問題6
 中学生のEmmaとクラスメートのSatoshiの会話を聞き、内容に関する三つの質問に日本語で解答する記述問題である。
 問題7
 今年の大きな変更点は、問題7である。指示が英語で読まれるだけなのだ。試験開始で問題冊子を開いた受検生たちは、おどろいたことだと思う。指示は以下の通り。

***** *****

 使用音源
 平成30年度 英語録音CD1枚

 計時使用機材
 WMPと一般的なCDプレーヤーを使用。
 計時はWindows 10のWMPによる。ストップウオッチも使用。
 ・・・毎年同じ作業である。

 分析手順
 ①語数とセンテンスの数をカウント。
 ②何度も聞き直し、各英文の時間を計測。
 ③問題~問題の間のポーズを計測。
 ④はじめから、「以上で問題は終わりです」までの実時間を計測。
 ⑤前年の数値と比較。

 ①から④は手作業(耳作業)である。
 ・・・ここも昨年と同じである。

+++++ +++++

 以下、音源CD構成と計時データ

 トラック1 音量調整のための放送
 試験当日朝に試聴のために用いる。
 (試験とは関係ない。)

 トラック2 無音
 トラック1をかけたままにしていると、注意される。
 (間違えて、問題を誤放送させない配慮。)

 トラック構成も昨年度と同じである。

 トラック3(0:35)
 0:00- 「放送を聞いて答える問題」のアナウンス。

 トラック4(1:08) 問題1
 0:01- 問題1から問題3の解答方法の説明
 0:25 問題1放送 1回目
 0:37 問題1放送 1回目終了
 0:39- 問題1 Question1回目
 0:47 問題1放送 2回目
 0:59 問題1放送 2回目終了
 1:02- 問題1 Question2回目
 問題1は、AとBの会話である。A→Bが2回。12秒で話者2、総語数34語である。
 このペースで会話が続いたとすると、15秒は1分の20.0%なので、34を0.2で割る。
 170wpmとする。(160)
 カッコ内は、H.29データである。以下同じ。

 トラック5(0:52) 問題2
 0:02 問題2放送 1回目
 0:18 問題2放送 1回目終了
 0:20- 問題2 Question1回目
 0:27 問題2放送 2回目
 0:43 問題2放送 2回目終了
 0:45- 問題2 Question2回目
 問題2も、AとBの会話である。A→Bが2回。クラスの生徒がどの季節が一番好きかについて。16秒で話者2、総語数40語。
 このペースで会話が続いたとすると、21秒は1分の35.0%なので、57を0.35で割る。
 150wpm(163)

 トラック6(0:49) 問題3
 0:02 問題3放送 1回目
 0:15 問題3放送 1回目終了
 0:18- 問題3 Question1回目
 0:26 問題3放送 2回目
 0:39 問題3放送 2回目終了
 0:58- 問題3 Question2回目
 問題3も、AとBの会話。A→Bの回数も同じ。英語の授業がどの教室で行われるかについて。13秒で話者2、総語数39語。
 このペースで会話が続いたとすると、13秒は1分の21.6%なので、39を0.21で割る。
 180wpm(145)

 トラック7(1:05) 問題4
 0:01 問題4と問題5の解答方法の説明
 0:22 説明終了
 0:25 問題4放送 1回目
 0:34 問題4放送 1回目終了
 0:37- 問題4 Question1回目
 0:45 問題4放送 2回目
 0:54 問題4放送 2回目終了
 0:57- 問題1 Question2回目
 この問題は「ある場面」についての説明文を聞き、それについて解答を求めるものである。9秒で話者1、総語数28語、センテンス数3。
 このペースで発話が続いたとすると、9秒は1分の15.0%なので、28を0.15で割る。
 187wpm(135)
 なお、この問題は聞き取るセンテンスの数が前年度の4から3になっている。

 トラック8(0:43) 問題5
 0:02 問題5放送 1回目
 0:11 問題5放送 1回目終了
 0:14- 問題5 Question1回目
 0:23 問題5放送 2回目
 0:32 問題5放送 2回目終了
 0:35- 問題2 Question2回目
 問題5も問題4と同じパターン。9秒で話者1、総語数27語、センテンス数4。
 このペースで発話が続いたとすると、9秒は1分の15.0%なので、27を0.15で割る。
 180wpm(168)
 なお、この問題は聞き取るセンテンスの数が前年度の3から4になっている。

 トラック9(3:02) 問題6
 0:01 問題6の解答方法の説明
 0:14 説明終了
 0:17 問題6放送 1回目
 1:29 問題6放送 1回目終了
 1:37 問題6放送 2回目
 2:49 問題6放送 2回目終了
 問題6は、最初の方にも書いたとおり、留学生のEmmaとSatoshiの会話である。72秒。総語数141語、センテンス数23。会話のやりとりが10回である。Satoshi→Emmaが5回である。
 このペースで会話が続いたとすると、72秒は1分の120%なので、141を1.2で割る。
 157wpm(148)

 なお、トラックの長さは3:02だが、録音は2:55で終わっている。最後の問題までの間10秒弱空白になる。

 トラック10(4:21) 問題7
 0:01 問題7の解答方法の説明(以下の英語による
 Listen to the speech about the experience of an ALT, Ms. Kean, and choose the best answer from A, B, C and D for questions 1, 2 and 3.  Then write your answer.  Let's start.
 0:17 説明終了
 0:20 問題7放送 1回目
 1:37 問題7放送 1回目終了
 1:40- Question 1
 1:52- Question 2
 2:05- Question 3
 2:16 問題7放送 2回目
 3:33 問題7放送 2回目終了
 3:36- Question 1
 3:49- Question 2
 4:02- Question 3
 問題7は、ALT Ms Keanのスピーチの内容について答える問題である。77秒で話者1、総語数212語、センテンス数12である。
 このペースでスピーチが続いたとすると、77秒は1分の128%なので、212を1.28で割る。
 165wpm(159)

 なお、問題7(トラック10)の4:12のところで、「放送を聞いて答える問題」の終了が告げられる。午後2時40分の英語試験開始のチャイムから、ここまでが12分半。残り試験時間が37分程度。
 リスニングテストの配点は100点満点中28点である。

+++++ +++++

 WPM比較

Questions   H27 H28 H29 H30  
1 words   59 44 40 34  
seconds   23 17 15 12   
wpm 164 153 155 160 170
2 words   41 57 57 40  
seconds   15 20 21 16  
wpm 145 164 171 163 150
3 words   50 48 53 39  
seconds   20 18 22 13  
wpm 136 150 160 145 180
4 words   26 50 27 28  
seconds   10 17 12 9  
wpm 161 156 176 135 187
5 words   32 32 28 27  
seconds   12 12 10 9  
wpm 151 160 160 168 180
6 words   158 158 141 188  
sentences   26 30 25 23  
seconds   60 64 57 72  
wpm 155 158 148 148 157
7 words   175 195 209 212  
sentences   19 18 18 12  
seconds   72 80 79 77  
wpm 153 145 146 159 165

 words:語数
 sentences:文の数
 seconds:英語の流れた時間(単位:秒)
 wpm:1分間でどのくらいの語数を聞き取ることになるか。

     は、平成24年度~平成26年度3年間の平均値である。
     は、平成29年度との比較。△は数値が増加したもの、▼はその逆である。

 平成29年度との比較は以下の通り。

 問題1:難化
 問題2:易化
 問題3:難化
 問題4: 〃
 問題5: 〃
 問題6: 〃
 問題7: 〃

 大幅な難化である。

 問題7の説明文(指示文)は39語16秒で読み上げている。計算すると166wpmなので、問題文とほぼ同じになる。説明文と問題放送の間に3秒ほど空きがある。

+++++ +++++

 試験当日も感じたことだが、全体的にwpmが増したように聞こえた。数字を比較してみても、聞き間違えではなかったようだ。
 問題6はまず単語数が多いことが上げられる。それに加え問題文の放送時間が72秒とかなり長い。これら二つへの対応はかなり厳しいと思う。
 問題7はセンテンス数が少ないことが目立つ。一文一文が長いことになる。

 「平成30年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施状況」(平成30年4月掲載)によれば、学力検査の得点は平均は以下のとおりである。

 5 平成30年度埼玉県公立高等学校入学者選抜学力検査結果(全日制の課程)
 受検者平均点【第9表】より

学力検査問題 学校選択問題
国語 社会 数学 理科 英語 数学 英語
H.30 52.8 55.9 44 51.7 55.9 43.7 58.9
44,362 44,362 34,560 44,362 34,560 9,802 9,802
H.29 53.3 60.6 44.4 48.5 52 43.2 71.9
46,455 46,455 36,513 46,455 36,513 9,942 9,942

 年度ごと、上段が平均点、下段が受検者数である。
 平成30年度は学力検査問題と学校選択問題の数学、英語の問題で前年度のような目立つ得点の差異はないと言える。

+++++ +++++

 なお、問題、正答、データ分析は、埼玉県総合教育センターウェブサイトで公開されている。
 http://www.center.spec.ed.jp/ (新しいウインドで開きます。)
 (メニューの「入試情報・説明会案内」から)
 ・平成28年度~平成30度の問題を公開中である。

 今年も分析をするために、東京新聞ウェブサイトの『首都圏公立高校入試特集ページ』を参考にした。問題を見るのならば、このサイトを利用するといい。関東地方の公立高校入試問題を、PDFでアップロードしている非常によくできたサイトである。毎年使わせてもらっている。特記する。
 アドレスはこちら。(新しいウインドで開きます。)
 http://www.tokyo-np.co.jp/k-shiken/index.html

 昨年のエントリはこちらです。
 2017-08-14
 「平成29年度埼玉県公立高等学校入試 英語リスニングテスト分析

 *このエントリにおけるwpmの出し方(考え方)については、以下を参照されたい。
 2010-03-11
 「wpm


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする