想田和弘監督作品の「演劇Ⅰ」「演劇Ⅱ」の上映決定、今からワクワクしている
台風17号が近づいている。進路の先には、日本がある。まさに直撃して列島を縦断する可能性大だ。このままだと稲やリンゴなどの果物は大変なことになる。心配でたまらない。「どうか、どうか、外れて欲しい」と、心から祈る。
さて、ナレーションや音楽を一切使わず、「観察映画」と冠した独特のスタイルの作品で知られる想田和弘監督の観察映画最新作「演劇1・2」を、11月17日(土)から上映されるとのフライヤーが、昨日のシネマクレールに置かれていた。この映画は是非とも観たいと思っており、もし岡山での上映がないのなら、大阪まで観に行こうと考えていただけに、上映決定は嬉しい。今からワクワクしている。
この「演劇1・2」は、劇作家・演出家の平田オリザと、彼が主宰する劇団「青年団」を扱っている。4年の歳月と、300時間以上の映像素材から生まれた2部作となっており、上映時間は合計で5時間42分にも及ぶ力作とのことだ。
雑誌「演劇ガイド」では、次のように紹介している。「演劇1」では、「青年団の制作現場に密着。戯曲の執筆、稽古、照明、美術、劇団運営の実際など、あらゆる活動に密着し、その哲学や方法論、組織論を描き、『人間とは“演じる生き物”である』と語る平田の世界を解剖する」。
そして、「演劇2」では、「公的な芸術関連予算が縮小傾向にある中、“演劇が社会にとって必要不可欠であること”を世に訴えるため、さまざまな現場へと奔走する平田の姿を追いかける。芸術と社会の関係を問う作品となっている」とのことだ。5時間42分、しっかりと想田和弘監督&平田オリザと向かい合いたいと思う。
ところで、想田和弘監督はそのブログ「観察映画の周辺」に、「橋下ノンポリ説第二弾」をアップしている。想田監督の文章には、いつも刺激を受け学ばせてもらっている。今回の文章の中の「ノンポリ論」は、これまた納得の文章で、またまた目が開かれた感じ。浅学非才の私には、驚愕ですらある。
「ノンポリの特徴は、そのときどきに必ずメジャーな意見の側に立つということです。意見の内容いかんに関わらず。つまり常にマジョリティを形成するので、政治的に無自覚でいられる。人間が自らの政治性を自覚するのは、往々にして自らがマイノリティとして抑圧される経験をするときです」とある。
一度「観察映画の周辺」を訪れて、考えてみては如何。と同時に、想田和弘監督作品の「演劇1・2」を、あなたにも是非とも観て欲しいと思う。
記録映画「ニッポンの嘘」を観た、写真家・福島菊次郎の生き様に魅せられた
正直に告白するが、私は福島菊次郎という写真家について、知識は皆無だった。しかし昨日観た記録映画「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」の冒頭から、圧倒された。まずはその風貌である。胃がんを手術しているとのことで、体重は37㌔。そして「法を犯してはならない。しかし問題自体が法を犯したものであれば、報道カメラマンは法を犯してしてもかまわない」と平然と、カメラ教室の講義で語る。
その福島菊次郎のカメラマンとしての出発は、ヒロシマのヒバクシャの撮影。一人の漁夫である被爆者をカメラで追い続け、写真集「ピカドン ある原爆被災者の記録」を発表。日本写真批評家賞特別賞を受賞し、その後プロとして活動するため上京している。しかし一方では、その撮り続けた方が亡くなられた後に、ご家族から厳しい言葉を投げつけられ衝撃を受ける。
原爆投下を「人間の歴史に類のない殺人」と言い切り、その後権力との対峙は続く。「この国を攻撃しながら、この国から保護を受けることはできない」として、年金受給を巨費。その時々の原稿料などで暮らす。すざましい生き方だ。25歳でヒロシマのビバクシャの撮影を始めて、今や90歳。その福島菊次郎は、昨年の3・11以降にフクシマに行き撮影もする等、自らの信念を貫き通して、カメラマンとして生きる姿は崇高である。帰宅して早速、写真集や著書の予約カードを書いた。
そうした福島菊次郎の姿を追い続けた映画「ニッポンの嘘」は、素晴らしい記録映画だ。こうした映画が製作されたことを嬉しく思うし、この映画が観られるのもシネマクレールがあればこそだ。しかし、昨日の私が観た回の観客は、私を含めて6人だった。より多くの方が観て、時代の嘘と真実について考えてみては如何。と同時に、シネマクレールで映画を観て欲しいと願う。