※ 朝日新聞記事のリンクURLを誤っていたので,訂正しました。
朝日新聞記事
http://www.asahi.com/business/update/0308/OSK201103080167.html
些か旧聞に属するが,日本公認会計士協会が,会社法上の大会社でありながら違法に会計監査人を選任していない株式会社が散見されるとして,注意を呼びかけているという記事である。
日本公認会計士協会から日司連に対しても,「会計監査人の氏名又は名称等が登記事項であることについて」の周知依頼があったようなので,取り上げておく。
平成17年改正前商法下においても,旧商法監査特例法上の大会社に該当する株式会社は,会計監査人を選任しなければならない,とされていたが,監査法人等と監査契約を締結することにより相応のコストを負担しなければならないこととなるため,大会社に該当しながら,違法に会計監査人を選任しないままである株式会社が散見されると見られていたところである。当時は,会計監査人に関しては登記事項でなかったので,選任の有無が登記から判別できなったことも一因であったと考えられる。
会社法においては,株式会社が選択した機関設計を登記により開示することとされており,会計監査人を設置したことも登記事項(会社法第911条第3項第19号)とされている。そして,会社法上の大会社(会社法第2条第6号)に該当する場合には,会計監査人を置かなければならず(会社法第328条),当然に会計監査人設置会社(会社法第2条第11号)の規律に服することになっている。
したがって,会社法施行後は,違法に会計監査人を選任しない株式会社が激減した,と思われたが,そうでもないようだ。それは,大会社の要件のうち,資本金の額基準(5億円以上)は,登記から判別することが容易であるものの,負債総額基準(200億円以上)は,登記から判別できないため,看過されやすい嫌いがあるからである。記事にある株式会社のように,資本金の額は1億円だが,負債総額は1300億円に上るようなケースの場合,会社法の専門家が貸借対照表を見れば,会社法上の大会社であることは一目瞭然であるが,そうでない者が見ても,看過されて終わりなのである。
司法書士は,取引の安全と法人制度の信頼を維持するため,真正な登記の実現に努め,商業登記及び法人登記制度の発展に寄与し(司法書士倫理第55条),また登記手続を受任し又は相談に応じる場合には,依頼者に対して,法人の社会的責任の重要性を説明し,法令を遵守するように助言しなければならない(同第56条)。
この観点からすれば,司法書士が株式会社から商業登記の依頼を受けるに際しては,当該株式会社が会社法上の大会社の要件に該当しているか否かについて留意すると共に,大会社の要件に該当しながら会計監査人を選任していない場合には,会計監査人を選任して登記をする必要があること,それが困難である場合には,資本金の額の減少の手続を行って,大会社の要件から外れるようにすべきであること等を助言する必要があると考えられる。
「御社の負債総額は?」と尋ねて,大会社の要件に該当するか否かを確認することも大事,ということである。
朝日新聞記事
http://www.asahi.com/business/update/0308/OSK201103080167.html
些か旧聞に属するが,日本公認会計士協会が,会社法上の大会社でありながら違法に会計監査人を選任していない株式会社が散見されるとして,注意を呼びかけているという記事である。
日本公認会計士協会から日司連に対しても,「会計監査人の氏名又は名称等が登記事項であることについて」の周知依頼があったようなので,取り上げておく。
平成17年改正前商法下においても,旧商法監査特例法上の大会社に該当する株式会社は,会計監査人を選任しなければならない,とされていたが,監査法人等と監査契約を締結することにより相応のコストを負担しなければならないこととなるため,大会社に該当しながら,違法に会計監査人を選任しないままである株式会社が散見されると見られていたところである。当時は,会計監査人に関しては登記事項でなかったので,選任の有無が登記から判別できなったことも一因であったと考えられる。
会社法においては,株式会社が選択した機関設計を登記により開示することとされており,会計監査人を設置したことも登記事項(会社法第911条第3項第19号)とされている。そして,会社法上の大会社(会社法第2条第6号)に該当する場合には,会計監査人を置かなければならず(会社法第328条),当然に会計監査人設置会社(会社法第2条第11号)の規律に服することになっている。
したがって,会社法施行後は,違法に会計監査人を選任しない株式会社が激減した,と思われたが,そうでもないようだ。それは,大会社の要件のうち,資本金の額基準(5億円以上)は,登記から判別することが容易であるものの,負債総額基準(200億円以上)は,登記から判別できないため,看過されやすい嫌いがあるからである。記事にある株式会社のように,資本金の額は1億円だが,負債総額は1300億円に上るようなケースの場合,会社法の専門家が貸借対照表を見れば,会社法上の大会社であることは一目瞭然であるが,そうでない者が見ても,看過されて終わりなのである。
司法書士は,取引の安全と法人制度の信頼を維持するため,真正な登記の実現に努め,商業登記及び法人登記制度の発展に寄与し(司法書士倫理第55条),また登記手続を受任し又は相談に応じる場合には,依頼者に対して,法人の社会的責任の重要性を説明し,法令を遵守するように助言しなければならない(同第56条)。
この観点からすれば,司法書士が株式会社から商業登記の依頼を受けるに際しては,当該株式会社が会社法上の大会社の要件に該当しているか否かについて留意すると共に,大会社の要件に該当しながら会計監査人を選任していない場合には,会計監査人を選任して登記をする必要があること,それが困難である場合には,資本金の額の減少の手続を行って,大会社の要件から外れるようにすべきであること等を助言する必要があると考えられる。
「御社の負債総額は?」と尋ねて,大会社の要件に該当するか否かを確認することも大事,ということである。