月刊登記情報2011年12月号「商業登記掲示板 泣き笑い千例集」(93頁)に「私の議長問題」があり,評議員会の議長を理事長が務めることの可否の問題が取り上げられている。
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」は,一般財団法人の評議員会の議長に関して,規定を置いていない。したがって,一般財団法人の定款等の定めがあれば,それにより,定款等の定めが存しなければ,会議の都度,選任すればよい。
確かに,「会議の議長は,会議の構成員がなるべき」という見解も有力ではあるが,そのような考えを絶対視するのであれば,不文律ではなく,法律に明文の規定を置くべきであろう。多くの旧民法法人において,評議員会の議長を理事長が務めてきた永年の慣行を無視して,「会議の議長は,会議の構成員がなるべき」を押し付けるのであれば,明文の規定を置くべきなのである。
この点に関して,熊谷則一著「一般財団法人・公益財団法人の評議員会Q&A」(全国公益法人協会)132頁においては,「議長を代表理事とすることは可能か」と題した項において,可とする立場で論じている。理由としては,理事には評議員からの質問に対して説明義務が課されており,議事を円滑に進めるためには,評議員からの質問に適切に対応することができる代表理事を議長とすることも合理性があると考えられる,としている。妥当であろう。
なお,上記には,「定款に議長についての定めを設けていない場合には,会議の一般原則によって議長を選ぶ必要があり・・・評議員会を構成する評議員の中から議長を選任することにな」る旨の解説もあるが,定款に議長についての定めがない場合においても,評議員会が議長として代表理事を選出することは可能と考えてよいと思われる。否定する理由もないからである。
法律に規定がない場合,常識(一般原則)で判断する必要があるが,「会議の議長は,会議の構成員がなるべき」は,絶対視すべきほどの「常識」ではないであろう。