司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

設立時取締役等の選任の時期

2012-11-02 18:04:56 | 会社法(改正商法等)
 設立時取締役等は,発起設立の場合には,定款に定めるか,又は発起人の議決権の過半数により定めるべき事項である(会社法第38条,第40条第1項)。

 このように,会社法は,設立時取締役等の選任については,他の設立に関する事項の決定と異なり,資本多数決の原則を採用している。

 発起人のうち,その引き受けた設立時発行株式について一部出資の履行をしないものがあると,議決権の数が変動することもあることから,この選任行為は,出資の履行を完了した後に行うべきものとされている(会社法第38条第1項)。

 問題は,出資の履行を完了する前に,発起人全員の同意により,設立時取締役等を選任することが,会社法第38条第1項の規定により禁止されるのか,である。

 原始定款に定める方法により設立時取締役を定めることもできる(会社法第38条第3項)が,これは,当該定めが定款の内容を構成するというよりも,設立時取締役等の選任が,定款作成の機会に,発起人全員の同意をもってなされたことを示すにすぎない(江頭憲治郎「株式会社法(第4版)」(有斐閣)83頁)。

 この場合に,出資の履行が完了した時に,選任されたものとみなす(会社法第38条第3項)のであれば,同様に,出資の履行を完了する前に,発起人全員の同意により,設立時取締役等を選任することも許容されて然るべきであろう。

 明文の規定がないとはいえ,会社法がこれを禁止する趣旨とは考えられないからである。

 会社法では,「設立時発行株式の引受け」が「出資の履行」よりも前である限り,「定款の作成」及び「出資の履行」の先後に関する明文の規定は存しない。

 原始定款に定める方法により設立時取締役等を定めている場合に,「出資の履行」→「定款の作成」の順で行われたときは,どうなるのか? 会社法第38条第3項の規定により,遡及して,「出資の履行が完了した時に」選任されたものとみなすことはできないからである。

 この場合は,上述のとおり,「設立時取締役等の選任が,定款作成の機会に,発起人全員の同意をもってなされた」と解することとなろう。

 このように,会社法第38条第3項は,「設立時取締役等の選任が,定款作成の機会に,発起人全員の同意をもってなされた」ことを理由として,「定款の作成」→「出資の履行」の順で行われた場合であっても,有効な選任行為として認めている。この場合と同様に,「設立時取締役等の選任が,定款で定める以外の方法で,発起人全員の同意をもってなされた」場合についても,有効な選任行為があったものと認めても支障はないはずである。

 繰り返すが,明文の規定がないとはいえ,会社法がこれを禁止する趣旨とは考えられないからである。
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利益相反取引と不動産登記の添付書面(再掲)

2012-11-02 16:30:08 | 会社法(改正商法等)
 現今だに,くすぶっているようであるので,再掲しておく。



 株式会社所有の不動産について登記を申請する場合に,当該株式会社の取締役との利益相反行為であるときは,これを承認する取締役会議事録等を添付する必要がある。

 ところが,当該取締役が登記義務者であり,当該取締役が議事録に記名押印している場合,当該取締役の印鑑証明書は,添付を要求する根拠条文が異なるからということで,2通必要である,という取扱いが一部でなされているようである。

 平成16年改正不動産登記法が施行された直後には,確かにそのような議論があったが,終息したものと思っていた。しかし,一部の登記所では,現在だに,そのような取扱いがされているようである。

 平成16年改正前不動産登記法下においては,印鑑証明書の原本還付が認められていたが,改正により不可となったことから,顕在化した問題である。しかし,問題の根本(根拠条文が異なる。)は,改正前後を問わず不変であるのだから,従来1通のみで足りるとしていたものを,原本還付が不可となったからといって,2通必要であると豹変するのは,不可解である。原本還付の可否とは関係がない問題であるからである。

 また,同じ問題は,住民票を一連の申請で「住所の変更を証する書面」及び「住所を証する書面」として利用する場合にも生ずるはずである。この場合,根拠条文が異なるからということで,「前件添付」の取扱いをすることはできない(「原本還付」扱いをすればよい。)が,「住民票の原本を2通添付せよ」という話は聞いたことがない。

 登記実務は,善解理論により,極めて柔軟(ユーザー・フレンドリー)である場合と,不可解なほどに保守的である場合がある。理屈としては理解できなくもないが,ユーザー・フレンドリーに対応してよい問題であると考える。


 なお,議事録における記名押印の要否の観点からは,次のとおり解することもできよう。

(1)株主総会の承認を要する場合
 株主総会の議事録については,会社法上は署名等の義務はないが,不動産登記における添付書面としては,議事録の作成に係る職務を行った取締役の記名押印及び印鑑証明書が必要である。この理からすると,議事録の作成に係る職務を行った取締役以外の取締役の記名押印があったとしても,単なる余事記載とみることができ,極論すれば,これらの取締役の印鑑証明書は,不要と解することができよう。すなわち,2通に拘る理由がない,ということである。

(2)取締役会の承認を要する場合
 特別利害関係を有する取締役も,取締役会に出席していたとして,取締役会議事録の記名押印に名を連ねることも多いが,審議及び議決に加わらなかった当該取締役が,法的な意味で取締役会に出席していたといえるのかという問題もある。取締役会の場に在席したとしても,「オブザーバー」に過ぎないと考えられるのである。

 取締役会に出席した取締役に対して,議事録への署名等を義務付ける理由としては,議事録に異議をとどめない取締役について,その決議に賛成したものとの推定が働く(会社法第369条第5項)ことにあるが,これは,「取締役会の決議に参加した」取締役に及ぶ推定効であって,決議に参加しなかった特別利害関係を有する取締役には無縁である。
 
 したがって,審議及び議決に加わらず,単に在席していたに過ぎない取締役の記名押印は,法的には意味のないものと言える。当該取締役の記名押印は,会社法第369条第3項の射程外であり,単なる余事記載とみることができ,極論すれば,当該取締役の印鑑証明書は,不要と解することができよう。すなわち,2通に拘る理由がない,ということである。
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諸外国における保証法制及び実務運用についての調査研究報告書

2012-11-02 16:08:33 | 民法改正
諸外国における保証法制及び実務運用についての調査研究報告書の公表について
by 法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00118.html

 保証制度の改正を検討するための,諸外国における保証制度の内容とその実際の運用状況等についての調査研究報告書である。
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国際会計基準に関する会社法上の論点の調査研究報告書

2012-11-02 16:08:05 | 会社法(改正商法等)
国際会計基準に関する会社法上の論点の調査研究報告書の公表について by 法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00119.html

 (個別)計算書類に国際会計基準が適用された場合における,分配可能額規制の在り方を始めとする会社法上の問題点等についての調査研究報告書である。
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