東京高裁平成24年11月28日判決(判例タイムズ1389号256頁)が,株式の準共有者間において何ら協議を行わず,意思統一も図らないままに準共有者の1名が行った議決権の行使に関して,会社法第106条ただし書に照らし不適法である,と判示している。
判例要旨は,次のとおり(旬刊商事法務2013年8月25日号62頁参照)。ただし,原審の東京地裁は,適法としており,これを覆したものである。
「会社法第106条ただし書を,会社側の同意さえあれば,準共有状態にある株式について,準共有者中の1名による議決権の行使が有効になると解することは・・・相当とはいえない」
「同法ただし書についても,その前提として,準共有状態にある株式の準共有者間において議決権の行使に関する協議が行われ,意思統一が図られている場合にのみ,権利行使者の指定及び通知の手続を欠いていても,会社の同意を要件として,権利行使を認めたものと解することが相当である」
「準共有者間に本件準共有株式の議決権行使について何ら協議が行われておらず,意思統一も図られていないことからすれば,株式会社の同意があっても,準共有者の1名が準共有株式について議決権の行使をすることはできず,本件準共有株式による議決権の行使は不適法と解すべきである」
「本件の各決議は,本件準共有株式に議決権の行使を認めた点において決議の方法に法令違反があり,取消事由があると認めることができる」
立案担当者による解説は,次のとおりである(相澤哲編著「論点解説 新・会社法」(商事法務)492頁)。
「株式会社は,株式が複数の者に共有されている場合において,権利行使者の指定がないときであっても,特定の共有者に権利行使を認めることができる(106条ただし書)」
「・・・同条ただし書を新設し,その通知がない場合であっても,株式会社が自らのリスクにおいて共有者の1人に権利行使を認めることができることとしている。この場合,実際に共有者間で権利行使者として定められた者以外の者の権利行使を会社において認めてしまったときに他の共有者が被った損害については,一般原則に従い,会社が賠償責任を負うべきこととなる場合がある」
「会社としては,権利行使者の通知のない共有株主に議決権を行使させる場合には,あらかじめその協議内容等を確認すべきである・・・会社が,その確認を怠って,協議内容と異なる議決権の行使を許したとしても,共有者の議決権の行使自体には瑕疵がないので,決議取消事由には該当しないものと解される」
法律の解釈については,「最終的には裁判所が判断する」のであるが,立案担当者が,「このような意図で条文を新設した」とする立法意図を裁判所が覆すことは,果たして妥当であろうか? 東京高裁の判決によれば,会社法第106条ただし書の規定は,空文であると言わざるを得ない。
上告の有無は,不明であるが,甚だ疑問を感ずる判決である。
cf. 平成22年9月27日付け「株式が相続により準共有となった場合の権利行使者の指定等が権利の濫用に当たるとした大阪高裁判決」
判例要旨は,次のとおり(旬刊商事法務2013年8月25日号62頁参照)。ただし,原審の東京地裁は,適法としており,これを覆したものである。
「会社法第106条ただし書を,会社側の同意さえあれば,準共有状態にある株式について,準共有者中の1名による議決権の行使が有効になると解することは・・・相当とはいえない」
「同法ただし書についても,その前提として,準共有状態にある株式の準共有者間において議決権の行使に関する協議が行われ,意思統一が図られている場合にのみ,権利行使者の指定及び通知の手続を欠いていても,会社の同意を要件として,権利行使を認めたものと解することが相当である」
「準共有者間に本件準共有株式の議決権行使について何ら協議が行われておらず,意思統一も図られていないことからすれば,株式会社の同意があっても,準共有者の1名が準共有株式について議決権の行使をすることはできず,本件準共有株式による議決権の行使は不適法と解すべきである」
「本件の各決議は,本件準共有株式に議決権の行使を認めた点において決議の方法に法令違反があり,取消事由があると認めることができる」
立案担当者による解説は,次のとおりである(相澤哲編著「論点解説 新・会社法」(商事法務)492頁)。
「株式会社は,株式が複数の者に共有されている場合において,権利行使者の指定がないときであっても,特定の共有者に権利行使を認めることができる(106条ただし書)」
「・・・同条ただし書を新設し,その通知がない場合であっても,株式会社が自らのリスクにおいて共有者の1人に権利行使を認めることができることとしている。この場合,実際に共有者間で権利行使者として定められた者以外の者の権利行使を会社において認めてしまったときに他の共有者が被った損害については,一般原則に従い,会社が賠償責任を負うべきこととなる場合がある」
「会社としては,権利行使者の通知のない共有株主に議決権を行使させる場合には,あらかじめその協議内容等を確認すべきである・・・会社が,その確認を怠って,協議内容と異なる議決権の行使を許したとしても,共有者の議決権の行使自体には瑕疵がないので,決議取消事由には該当しないものと解される」
法律の解釈については,「最終的には裁判所が判断する」のであるが,立案担当者が,「このような意図で条文を新設した」とする立法意図を裁判所が覆すことは,果たして妥当であろうか? 東京高裁の判決によれば,会社法第106条ただし書の規定は,空文であると言わざるを得ない。
上告の有無は,不明であるが,甚だ疑問を感ずる判決である。
cf. 平成22年9月27日付け「株式が相続により準共有となった場合の権利行使者の指定等が権利の濫用に当たるとした大阪高裁判決」