土地総合研究 第27巻第3号(2019年夏)
http://www.lij.jp/pub_t/pubt3_27_3.html
吉田克己北海道大学名誉教授「2018年相続法改正の意義と残された課題」においては,
「相続は、多数の者の利害が錯綜し、多くの法的問題もかかえた複雑な手続である。市民が専門家や公的機関の援助なしにそれを適正に処理するのは、きわめて難しい。その支援態勢、換言すれば相続のインフラストラクチャー整備が、どうしても必要である・・・根本的には、専門家による支援態勢を構築する必要があるであろう。西欧諸国の多くにおいては、公証人がその役割を担っている。特にフランスでは、その点が明確である。しかし、日本で公証人にこの役割を期待しても、それは難しいと言わざるをえない・・・日本ではむしろ司法書士にそのような役割を期待するほうが現実的だと思われる。しかし、そのためには、司法書士の専門家としての位置づけを再検討するという、これまた困難な課題を克服する必要がある」(上掲23~24頁)
と述べられている。そして,参考文献として掲げられている吉田克己「所有者不明土地問題と司法書士~司法書士の二つの魂~」(市民と法2019年2月号(民事法研究会))においては,
「相続プロセスへの関与に際しては,法専門職に全相続人を対象とする公平な調停官的役割が望まれるところ・・・司法書士に調停官すなわち裁判官的職務をも付与することが望ましい」
と述べた上で,
「司法書士は,簡裁代理権の獲得によって,登記の専門職という役割に加えて,いわば弁護士的な魂をも備えることになった。それとともに,所有者不明土地問題への対処という公共的課題との関連では,裁判官的な魂を備えることが望まれる。場合によって緊張関係を孕んだこの二つの魂をどのように調整し,両立させていくか。今後の検討が望まれる」
と結ばれている。
司法書士にとって,重要な問題提起ではないだろうか。