司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

自筆証書遺言のデジタル化,法制審議会の議論がスタート

2024-04-17 10:39:53 | 民法改正
NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240416/k10014423861000.html

 法制審議会民法(遺言関係)部会が設置され,昨日(4月16日)から自筆証書遺言のデジタル化に関する議論がスタートした。
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「全血・半血(民法900条4号ただし書)に関する一考察」

2024-04-17 10:34:42 | 民法改正
 「戸籍」令和6年2月号(テイハン)48頁以下に,本山敦「全血・半血(民法900条4号ただし書)に関する一考察」が掲載されている。

 養子縁組後に養子がなくなり,その相続人が実家及び養家双方の兄弟姉妹である場合の全血 or 半血の問題を検討したものである。

民法
 (法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
 一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
 二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
 三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

 上掲論文で問題とされている事実関係は,

・甲男乙女夫婦の間に子A(被相続人)及びYがあった。
・Aは,丙女の養子となった。丙は,その後,Xを養子とした。
・甲,乙,丙の順に死亡した。
・Aが死亡し(配偶者も子もいない。),相続人は,X及びYの2人である。

 この場合のX及びYの法定相続分は如何が問題となっているものである。

 具体的事案としては,家庭裁判所における遺産分割調停において,X及びYの法定相続分を1:2ということで進行している途中で,念のために管轄登記所に照会したところ,「本件においては,民法第900条第4号ただし書の適用はない」との見解が示されたとのことである。

 条文を素直に読めば,確かに,一理あるような・・・。

 ところで,例えば,甲男乙女夫婦の間に,子ABがあり,甲男死亡後に,乙女がCを養子にした場合に,乙女,A(子なし)の順に死亡したときの被相続人Aに係る相続人及び相続分は,B3分の2,C3分の1である。

 仮に,Aが丙男丁女夫婦の養子となった場合に,丙男と丁女の間に子Dがあり,丙男死亡後に丁女がEを養子にした場合に,丁女,A(子なし)の順に死亡したときの被相続人Aに係る相続人及び相続分は(ひとまず実家の相続関係は,御放念を。),D3分の2,E3分の1である。

 ここまでは,異論のないところかと。

 すると,被相続人Aの相続に関して,相続人が上記実家と養家の双方である場合,被相続人Aに係る相続人及び相続分は,B(6分の2),C(6分の1),D(6分の2)及びE(6分の1)となりそうである。ここで,「民法第900条第4号ただし書の適用はない」というわけにも行かないであろう。

 この相続分の関係が理に適ったものであるとすると(BとEの相続分の差異がやむを得ないものであるとすると),仮にDが最初から存在しなかった場合,B(4分の2),C(4分の1)及びE(4分の1)となり,さらに仮にCが最初から存在しなかった場合,B(3分の2)及びE(3分の1)と考えるのが合理的であるような・・・。

 このように考えると,上記論文の事実関係のように,Aが丙女のみと養子縁組したという場合であっても,やはりY(3分の2)及びX(3分の1)と考えるのが合理的であるような・・・。

 しかし,これは,養子縁組後,養家との間で親密な親族関係及び財産関係を形成し,実家との間では疎遠な親族関係であった場合の被相続人Aの合理的意思に合致するものとはいえず,不合理な感は,拭えない。

 そもそも民法第900条第4号ただし書は,養子縁組後の兄弟姉妹相続の場合を想定していないのではないかと。

 上掲本山論文は,民法第900条第4号ただし書に関して,立法当時の事情や諸外国の立法例を踏まえて詳細に検討した上で,「全血/半血の判定は,《親の数》だけで単純に決定されるべき事柄ではない」として「本件の共同相続人X・Yが全血/半血という関係に該当しないとの結論に到達することが可能である」と考察している。

 また,「法定相続分は,共同相続人による遺産分割の基準にとどまらず,相続債務の承継割合(民法902条の2)や相続分の譲渡(民法905条)などを通じて,相続債権者や第三者にも作用する重要な規範である。したがって,本件規定の適用の有無が問題となるような案件が僅少に過ぎないかもしれないとしても,本件規定の適用の有無という論点は,重要な意味を有していると思われる」と結ばれている。

 養子は,子なしの場合,きちんと遺言を残しておかないと,実家及び養家双方を巻き込んだ深刻な相続問題を生じさせる,ということである。
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司法書士が押さえておきたい最新相続重要裁判例

2024-04-17 09:33:35 | 民法改正
 昨日(4月16日),京都司法書士会の研修会で,本山敦立命館大学教授に最近の相続関係の判例等についてお話いただいたので,取り上げられたものを紹介しておく。

1.最高裁令和6年3月19日第3小法廷判決
【判示事項】
相続回復請求の相手方である表見相続人は、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができる
cf. 令和6年3月19日付け「真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても,所有権を時効により取得することができる」

2.那覇家審令和5年2月28日判タ1514号250頁
 平成13年2月に開始した相続において,嫡出子及び非嫡出子の「法定相続分は等しい割合とすべき」としたもの。
cf. 非嫡出子の相続分差別規定を憲法違反とした最決H25.9.4の射程範囲
https://www.o-basic-souzoku.net/knowledge1/knowledge1-11/

3.最高裁令和5年5月19日第2小法廷判決
【判示事項】
1 共同相続人の相続分を指定する旨の遺言がされた場合における、遺言執行者と不動産の所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えの原告適格(消極)
2 相続財産の全部又は一部を包括遺贈する旨の遺言がされた場合における、遺言執行者と不動産の所有権移転登記の抹消登記手続又は一部抹消(更正)登記手続を求める訴えの原告適格(積極)
3 複数の包括遺贈のうちの一つがその効力を生ぜず、又は放棄によってその効力を失った場合、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときを除き、包括受遺者が受けるべきであったものは、他の包括受遺者には帰属せず、相続人に帰属する
cf. 令和5年5月23日付け「遺言執行者と不動産の所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えの原告適格」

4.静岡家審令和3年7月26日家判37号81頁
cf. 令和4年4月21日付け「改正相続法による「特別の寄与」に関する審判例」

5.最高裁令和5年10月26日第1小法廷決定
【判示事項】
遺言により相続分がないものと指定された相続人は,遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない
cf. 令和5年10月31日付け「遺言により相続分がないものと指定された相続人は,遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない」
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