司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

会社法第128条の存在意義

2024-04-23 09:57:24 | 会社法(改正商法等)
会社法
 (株券発行会社の株式の譲渡)
第128条 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。


 そもそも,株券発行会社が例外的な存在となっている現在,会社法第128条は存在意義を有しないのではないだろうか。

 株券発行会社において,株式譲渡の譲受人は,株券を手中にしていれば,譲受人単独で譲渡承認請求をすることができ(会社法第137条第1項),また譲受人単独で株主名簿記載事項の書換えの請求をすることができます(第133条第1項)。しかし,譲渡人と共同で手続をするのであれば,いずれも株券の提示は要しない(第133条第2項,第137条第2項)。株券が現実に発行されていることの実益は,この単独請求の可否程度ではないかと。本来は,株主であることの証拠的機能を有したわけであるが,株券不発行会社においては,株主名簿記載事項証明書で代替されているわけであるし,株券に拘る意味もないかと。

 株券発行会社であっても,現実に株券を発行している株式会社は少ないという事情に鑑みれば,端的に株券の授受がなくても株式の譲渡は有効である,という取扱いにするのが合理的であるように思われるのだが。

 会社法第128条を前提にすると,現状追認として株券の授受がないケースを有効と取り扱おうとする場合に,「誰が利益を受けるか考慮せず,違法な行為を一律に有効と解するのはおかしい」(江頭憲治郎「株式会社法(第8版)」(有斐閣)234頁))という議論にならざるを得ないという問題もある。
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登記簿の附属書類閲覧のデジタル化

2024-04-23 09:15:30 | 不動産登記法その他
官報
https://kanpou.npb.go.jp/20240422/20240422g00100/20240422g001000003f.html

「不動産登記規則等の一部を改正する省令」(令和6年法務省令第32号)が,昨日(4月22日)公布された。

 登記簿の附属書類閲覧のデジタル化(登記簿の附属書類又は登記申請書等の閲覧について,現在は登記官の面前でのみ閲覧をすることができるとされているところ,ウェブ会議システムを利用した非対面での閲覧も可能とする。)等に関する改正である。

 不動産登記規則第202条第3項,商業登記規則第32条第2項が新設された。以下については,準則,通達等に規定が置かれるものと思われる。

・ 請求人は、窓口又は郵送で登記申請書等の閲覧請求を行う。
・ 登記官は、ウェブ会議により請求人と面談して請求人の本人確認を行い、本人確認ができた場合には、端末のカメラを用いてウェブ会議の画面上に登記申請書等を映出し、請求人に閲覧させる。
・ 請求人は閲覧に際して、登記官の指示の下、録画等を行うことができる。


 施行期日は,令和6年6月24日(一部を除く。)である。
 
cf. 不動産登記規則等の一部を改正する省令案に関する意見募集の結果について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=300080308&Mode=1

【改正後】
不動産登記規則
 (閲覧の方法)
第202条 地図等又は登記簿の附属書類の閲覧は、登記官(その指定する職員を含む。第三項において同じ。)の面前でさせるものとする。
2 【略】
3 登記官は、法第百二十一条第三項又は第四項の規定による登記簿の附属書類の閲覧をさせる場合において、請求人から別段の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、第一項の規定にかかわらず、電子計算機を使用して登記官及び請求人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって閲覧をさせることができる。

商業登記規則
 (閲覧)
第32条 登記簿の附属書類の閲覧は、登記官(その指定する職員を含む。次項において同じ。)の面前でさせなければならない。
2 登記官は、申請人から別段の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、前項の規定にかかわらず、電子計算機を使用して登記官及び申請人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によつて閲覧をさせることができる。
3 【略】
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