tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

自己資本比率は多少下がる様相

2022年07月22日 16時35分53秒 | 経営
岸田総理が「成長と分配の好循環」を主張され、このブログでも、分配と成長の関係は経済・経営において最も重要な問題ですから期待していると書いた記憶があります。

ただ、その後も岸田政権の「成長と分配」についての解り易い説明がないので、先ずは「賃上げ」を期待されて分配の問題から入っていこうという事ではないかと受け止めてています。

マスコミや、評論家の中には、企業が内部留保を増やしながら、賃上げ率の方はなかなか上がらないので、一部には官製春闘と歓迎する向きもあるようです、筋から言えば、これは労使の仕事でしょう。

分配の問題も、賃上げばかりに矮小化しないで、低成長の元凶である格差社会化を止めいかにして格差の少ない社会にしていくかといった本質的な問題に早く迫って欲しいものですが、本質問題にはなかなか行き着かない様です。

ところで、異次元金融緩和で為替レートがまともな水準に回復してから企業の業績は回復してきました。賃上げもいくらかずつは改善してきていますが、この辺りは、矢張りもう少し労使に本格的な研究と論争をお願いしたいように思うところです。

経済・経営の方は、この所、先ずコロナ、それに国際経済の変調が続いて波乱の様相になって来ています。嘗て、長期不況の中で企業はサバイバルのために自己資本比率の向上に必死の努力をしてきました。当時は守りの経営で、B/Sの圧縮中心でした。

為替レートが正常化してからは、収益向上の成果、円安差益もあって、2017~18年頃までは、何とか順調な成長でしたが、19年には不況感が出、20年からはコロナ不況という事でしょうか。

上場企業などの数字を見ていても19年あたりから自己資本比率が下がり気味のような感じがしていたのですが、法人企業統計をみましたら、下図の通りで、日本企業の自己資本比率の長期の上昇もここにきて多少の下げに転じるようです。


                   資料:財務省「法人企業統計年報」

長期不況期の改善はB/Sの圧縮努力が大きかったのですが、最近の低下は、収益の低下と言うよりは、B/Sを膨らませた結果と言うふうに見えます。
下の図は自己資本と総資本の伸びを見たものですが、この所の動きでは収益低下から自己資本の伸びは鈍り、一方、総資本は増えていく、つまり負債の増加による(B/Sの膨張による)自己資本の低下という実態が見えてきます。

      自己資本、総資本の伸びの比較

                         資料:同上      

円高不況の2012年度はB/S圧縮(総資本圧縮)ですが、しかしその後は金融はゆるゆる、2020年度は、政府は赤字財政での大盤振舞いという事で、借金は簡単にでき、金利は異常に低いから負担にはならない。という状況に中での自己資本比率の低下という姿です。

さし当たって日銀の政策変更はないようですが、企業は矢張り気を許すべきではないように思います。いつまでも ゼロ金利ではないでしょう。
国も借金だらけだから金利は挙げられないというものでもないようで、コロナ禍のなかですが、身を引き締めた経営がやはり望ましいように思います。




2022年6月の消費者物価を見る

2022年07月22日 16時35分53秒 | 経済
今朝、内閣府から6月の消費者物価の発表がありました。

マスコミでも、先頃の参院選でも、物価問題は大問題という事になっていますが、アメリカ、ヨーロッパなど、またその他途上国の多くでもインフレはまさに大問題ですが、日本ではどうも、例外的に(安定とは言いませんが)物価問題の様相は違ったもののようです。

アメリカでもヨーロッパでも、インフレ率は7~9%などという高さになり、先ずアメリカでは、とても放置できないから、強烈な金融引き締めでインフレを抑制しなければならないという事になり、例えその結果が経済・景気にブレーキになっても、先ずはインフレ退治という姿勢です。

一方日本では昨日も日銀の黒田総裁が、異次元金融緩和政策を継続を明確にし、このまま物価上昇を放置しても年率にして2%台のインフレに 留まるだろうと発言しています。 

という事で現実を見てみましょう。毎月同じグラフを1か月づつ延長して掲載していますから、お馴染みの方も多いと思いますが、まず2020年基準の消費者物価の主要3系列のグラフです。

消費者物価指数主要3系列の推移 (2020年基準、原指数)

                         資料:総務省「消費者物価指数」
一見しての感じは、上昇傾向もそろそろピークに近づくのかなといった感じです。総合の数字は101.8で前月と変わらず、生鮮食品を除く総合は0.1ポイント上って101.7ですが、生鮮食品とエネルギーを除く総合は100.1で前月と同じ水準です。

此処から読み取れるのは,消費者物価を押し上げているのは矢張りエネルギー価格で、6月はは生鮮食品は少し下がったのかなという事です。

それならエネルギー価格も、そういつまでも上がることはないだろうし、ロシアにしても、その他の産油国にしても、売らなければ収入がありませんから、代替エネルギー転換が進まないうちにという事で、そろそろ値上げも限界かもしれません。

この消費者物価の3系列の動きを対前年同期比で見たのがこれもお馴染みの下図です。

     消費者物価指数主要3系列の対前年同月比推移 (単位:%)

                       資料;同上
総合は対前年6月では上昇率は前月に2.5%から2.4%に鈍化しています。生鮮食品を除く総合と、生鮮とエネルギーを除く総合は、前月横這いの後上昇に転じていますが、ここで注目すべきは生鮮とエネルギーを除く総合の方が0.2ポイントとエネルギーを入れた分より上昇幅が大きい事です。

つまり、エネルギーの上昇率より国内産の諸物価の値上がりの方が加速しているという事です。

多分原因は2つあって、これまでのエネルギー上昇の影響が末端商品価格に出てきたという事が一つ。
もう一つは、人件費も含め国内コストが上がって来たという可能性です。

アメリカやヨーロッパの場合には、エネルギーなど輸入物価が上がると、国内コストも便乗でどんどん上げることが多く、この緑色の線、アメリカではコアコア(物価の芯)という部分が大幅に上がって急激なインフレになるのです。

その点、日本人は真面目ですね。黒田さんが安心している理由もここにあります。
しかし世の中多数決ですから、真面目な日本人が例外的であれば、欧米基準で物事が決められ、真面目な日本が馬鹿を見ることもあり得ます。その辺も黒田さんに聞いてみたいところです。