tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃金決定の主役は誰?自民政権の勘違い

2022年07月13日 17時03分10秒 | 労働問題
今の日本経済の不振の原因が消費の伸びない事にあるという見方は、かなり一般的になっているようです。

消費が伸びないのは、賃金が上がらないからだというのがアベノミクスの考え方で、安倍さんは就任以来春闘に介入して賃上げを主導しようとし、「官製春闘」などという言葉も生まれました。しかしこの政策は結局成功しませんでした。

安倍さんの登場と軌を一にして黒田日銀総裁が誕生、異次元金融緩和政策を導入して円レートを$1=¥120という正常な範囲に戻したので、多くの人はこれで日本経済も立ち直るだろうと考えたようです。

それまでは円高でコストカットが第一の日本経済でしたから賃金は上げられないのが当然でしたが、120円という円レートではもう日本はコスト高でも物価高でもないので、普通に賃上げできる経済ですから、春闘も活発になって、経済成長も戻ってくると皆思っていたのではないでしょうか。

ところがそれが上手く行かなかったのです。上手く行かなかったことの理由の一つに、どうも賃金決定についても政府が主導権を取ろうとして、政府が労使双方を呼んで「賃上げをしなさい」と言い出した(2013年)ことがあるように思われるのです。

賃金決定というのは労使の専管事項で、政府が口を出すべきものではないというのが世界の常識ですが、アベノミクスでは「決める政治」などといってなんでも政府が決めるのが正しいと思っていたふしがあります。

当時のことを思い返してみますと、1980年代後半からの、政府・日銀の政策の失敗のせいで日本は異常な円高を強いられ、コスト削減だけがサバイバルの道と必死の努力をしてきていました。その日本の労使に、「ハイ今年から賃上げをしなさい」と言ったのですから、労使ともに白けてしまって、「労使が責任もってやることに余計な指図をするな」(連合、経団連)という感じでした。

経営側では、労使問題の専管団体であった日経連がなくなり経団連が労働問題に関心が薄かったという事もあるのでしょうが、労使の話し合いも、更に政労使の本音の話し合いの場(かつての産労懇の様な)もなく、頭の上から政府の腰だめの方針ばかりが示されても、コミュニケーションと相互理解のない所に実りのある結果は出なかったようです。

これからもそうでしょうが、政府・日銀は環境条件を整えます、労使はその専管事項である賃金決定には責任を持って、企業経営、日本経済に適切な交渉結果を出して下さい。よろしくお願いします。必要な情報は何でも提供します。といった形の政労使3者の十分なコミュニケーションが必要なのでしょう。

日本の為替レートが正常な範囲に入ってから(2013,2014年以降)、日本の政労使三者の間に、そういった合理的な関係があれば、日本の賃金決定はもう少し違ったものになっていて、日本経済の姿も、そう少し生気のあるものになっていたのではいかなどと考えてしまう所です。

さて、これからの岸田政権はどんな態度で、労使関係、賃金決定に、どんな態度を示していくのでしょうか確り見ていきたいと思っています。