<賃金、物価、生産性、為替レートの関係の基本から>
前回は物価を中心にみてきましたが、今回は生産性と賃金です。
生産性については「実質経済成長率」の数字で代替して問題ないと前回の最後に指摘しましたように総理府の発表する四半期GDP統計の数字を見て煮ます
最近時点の四半期GDP速報は2023年1-3月期の第2次速報です。
コロナ禍でマイナスになったりプラスになったりのGDP成長率でしたが、これによりますと、昨年1-3月期から今年1-3月期までの実質経済(GDP)成長率は順に0.5、1.8、1.5、0.4、1.9(%)という事で、2022年度の平均は1.4%です。
2022年度からは消費需要が安定してきているので、今年度は2%を超えるのではないかと期待されます。(今年度の政府経済見通しは実質成長率1.5と控えめです)
という事で当面の経済成長率は「2%」程度と考えてみましょう。日本国内で生産され消費されるモノやサ-ビスは、2%程度増えますから、日本人の賃金が2%ほど増えて、ちょうど購買力とモノ・サービスの供給の増加が一致して、経済は2%成長、インフレはゼロという均衡経済になります。
それでは賃金の方は如何なっているかですが、賃金の指標は、未だ春闘の賃上げ率しかありません。連合の集計結果は3.66%(6/5発表、加重平均方式)で、定昇などを除いたベア部分は2.33%と推計されています。
賃金上昇の最終結果は、これにボーナスや残業代が入ったり、定年年齢到達者の賃金減額があったりでGDPから支払われた人件費の総額はGDP統計の「雇用者報酬」として確定するのですが、春闘賃上げ率はその先行指標です。
ところで2022年度の雇用者報酬は、前年比2.1%で、昨年の連合の賃上げ集計は2.09%と偶然にもほぼ同じです。
以上の数字を並べてみますと、今年は経済成長率(生産性)は2%程度、賃上げ率は3.66%という事ですから、今年も賃上げ率と雇用者報酬の伸び率が「もし」同程度になれば、今年は、3.66%から2%を差し引いて1.66%の物価上昇になるという計算になります。
政府・日銀が望んでいるのは、多分、経済成長2%~3%、雇用者報酬4%~5%で、「4%-2%=2%」あるいは「5%-3%=2%」で生産性上昇より2%ポイント高い賃金上昇で、いずれにしても2%程度の物価上昇という「軽インフレ社会」という事ですから、それに近づいてきているという事でしょう。
しかし現実は、前回指摘しましたように消費者物価の独歩上昇状態です。経済は必ずしも理屈のようには行かないのですが、この原因は、これまでの長い間、最低賃金をはじめ賃金も、輸入原材料も、農水産物の価格なども上がって来ているのに、消費不振で値上げ出来なかった我慢の分が、昨年来の輸入物価上昇で限界に達し、一斉値上げが波状的に起きたという事でしょう。
ですから黒田さんも現日銀総裁の植田さんも、この消費者物価上昇は早晩終わるので、それを待ちましょう、という姿勢です。
理論的にはその通りですが、物価には市場メカニズムの中に、売り手、買い手の心理状態が反映して理論と乖離します。これは一種のムードのようなものです。
「値上がりの前に買おうと、買い急ぎ」
「生産性上げず、値上げで利益出し」・・・
この所の、株価の異常な上昇もこうしたムードに影響するかもしれません。
こんな状態になると、経済政策、金融政策は無視するわけにはいかないでしょう。
アメリカ、ヨーロッパでは、こんなムードが10%前後のインフレを呼び、金融引締め、金利引き上げ政策を生むようです。
「インフレだ! 賃上げストで取り返せ」
という動きも、労働側からすぐに起きるようです。
日本人は総てに慎重ですが、人間の心理は洋の東西を問いませんからそろそろ政府、日銀も気を付けた方がいいのではないでしょうか。
前回は物価を中心にみてきましたが、今回は生産性と賃金です。
生産性については「実質経済成長率」の数字で代替して問題ないと前回の最後に指摘しましたように総理府の発表する四半期GDP統計の数字を見て煮ます
最近時点の四半期GDP速報は2023年1-3月期の第2次速報です。
コロナ禍でマイナスになったりプラスになったりのGDP成長率でしたが、これによりますと、昨年1-3月期から今年1-3月期までの実質経済(GDP)成長率は順に0.5、1.8、1.5、0.4、1.9(%)という事で、2022年度の平均は1.4%です。
2022年度からは消費需要が安定してきているので、今年度は2%を超えるのではないかと期待されます。(今年度の政府経済見通しは実質成長率1.5と控えめです)
という事で当面の経済成長率は「2%」程度と考えてみましょう。日本国内で生産され消費されるモノやサ-ビスは、2%程度増えますから、日本人の賃金が2%ほど増えて、ちょうど購買力とモノ・サービスの供給の増加が一致して、経済は2%成長、インフレはゼロという均衡経済になります。
それでは賃金の方は如何なっているかですが、賃金の指標は、未だ春闘の賃上げ率しかありません。連合の集計結果は3.66%(6/5発表、加重平均方式)で、定昇などを除いたベア部分は2.33%と推計されています。
賃金上昇の最終結果は、これにボーナスや残業代が入ったり、定年年齢到達者の賃金減額があったりでGDPから支払われた人件費の総額はGDP統計の「雇用者報酬」として確定するのですが、春闘賃上げ率はその先行指標です。
ところで2022年度の雇用者報酬は、前年比2.1%で、昨年の連合の賃上げ集計は2.09%と偶然にもほぼ同じです。
以上の数字を並べてみますと、今年は経済成長率(生産性)は2%程度、賃上げ率は3.66%という事ですから、今年も賃上げ率と雇用者報酬の伸び率が「もし」同程度になれば、今年は、3.66%から2%を差し引いて1.66%の物価上昇になるという計算になります。
政府・日銀が望んでいるのは、多分、経済成長2%~3%、雇用者報酬4%~5%で、「4%-2%=2%」あるいは「5%-3%=2%」で生産性上昇より2%ポイント高い賃金上昇で、いずれにしても2%程度の物価上昇という「軽インフレ社会」という事ですから、それに近づいてきているという事でしょう。
しかし現実は、前回指摘しましたように消費者物価の独歩上昇状態です。経済は必ずしも理屈のようには行かないのですが、この原因は、これまでの長い間、最低賃金をはじめ賃金も、輸入原材料も、農水産物の価格なども上がって来ているのに、消費不振で値上げ出来なかった我慢の分が、昨年来の輸入物価上昇で限界に達し、一斉値上げが波状的に起きたという事でしょう。
ですから黒田さんも現日銀総裁の植田さんも、この消費者物価上昇は早晩終わるので、それを待ちましょう、という姿勢です。
理論的にはその通りですが、物価には市場メカニズムの中に、売り手、買い手の心理状態が反映して理論と乖離します。これは一種のムードのようなものです。
「値上がりの前に買おうと、買い急ぎ」
「生産性上げず、値上げで利益出し」・・・
この所の、株価の異常な上昇もこうしたムードに影響するかもしれません。
こんな状態になると、経済政策、金融政策は無視するわけにはいかないでしょう。
アメリカ、ヨーロッパでは、こんなムードが10%前後のインフレを呼び、金融引締め、金利引き上げ政策を生むようです。
「インフレだ! 賃上げストで取り返せ」
という動きも、労働側からすぐに起きるようです。
日本人は総てに慎重ですが、人間の心理は洋の東西を問いませんからそろそろ政府、日銀も気を付けた方がいいのではないでしょうか。