tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

岸田内閣、新しい資本主義の閣議決定へ

2023年06月07日 16時37分30秒 | 政治
6月6日、岸田総理は「第19回新しい資本主義実現会議」を開催しました。
今春闘が「30年ぶりとなる高い水準の賃上げ」となったことを背景に、高い水準の賃上げの持続をめざし、「新しい資本主義」を実現しようという事で、盛りだくさんの中身です。

多様な分野でのスタートアップや技術革新を掲げ、先ずは「人への投資・構造的賃上げ・労働市場改革という事のようです。

欧米流の職務給中心の人事制度崇拝や、リスキリングという言葉、労働移動で賃金上昇が可能になるような表現は気になりますが、今、日本企業がやろうとしている政策の援助になると思われることも盛り込まれています。

岸田総理としては、確かに今年はコロナの終焉や、インフレの進行や経済界の反省もあり、多少高い賃上げになったが、来年はまた低くなってしまったというのでは恰好がつかないので、「構造的賃上げ」という言葉を使って、少しでも高い賃上げが続いてくれることを願っている所でしょう。

これは、岸田総理だけでなく、日本中誰もが望んでいる事ですから、岸田内閣の政策の結果がそうなって、日本もやっと30年の悪夢から覚めたかと言われたいところですが、些か気になるのが、閣議決定をしようと並べられた政策の中に「生産性」という言葉がない事です。

経済学でも、経営学でも、「賃金の上昇を生み出すものは何ですか」と問えば、人間の先生は勿論、どんな「生成AI」でも先ず「生産性の向上です」と答えてくれるでしょう。
正確に言えば「労働生産性」の向上ですが、この言葉がありません。

多分、そんなことは解っていて、ジョブ型賃金や、転職、リスキリング、スタートアップ、技術革新、投資促進などというような課題が掲げてあれば、それが生産性向上につながって、賃上げが実現すると考えるのが当然というのでしょう。

しかし、現実の企業活動というものは難しいもので、同じことをやったつもりでも、生産性向上という意識が常に働いていないと、自動的にそうはならない事が多いのです。

ですから日本は勿論、世界中の国々に生産性本部とか生産性機構というものがあって産業の現場の活動に直結した活動をしているのです。

岸田内閣の方針について言えば、日本の産業界で、欧米型の職務給(ジョブ型賃金)と日本型の属人給とをいかなる組み合わせにすれば、最も生産性が上がり賃金が上げられるか本当に解っているのでしょうか。

また、転職によって賃金が上がるのは、高度専門能力を持つ人たちの話で、多くの人々は企業内のOJTを中心にベテラン社員に育って生産性が上がり賃金が上がっていくのです。

来年の春闘で、また今年以上の賃金上昇を期待するためには、労働力人口はあまり変わらないでしょうから、実質GDPの上昇が必要条件です。
例え、1、2年は、財界や政府の気合で高めの賃上げが出来たとしても、経済成長(GDPの増加)がなければ賃上げは続かに事はアベノミクスの経験からも明白です。

今朝の日経産業新聞の1面は、中国に流出した日本の先端分野の研究者3人の紹介でした。、日本の針路を決める内閣と学問と研究開発の総本山である学界が仲が悪い状態がいつまでも続くようなことは、やっぱり心配が残ってしまいます。