tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本経済の安定成長を考える 2

2023年06月26日 14時31分28秒 | 経済
<賃金、物価、生産性、為替レートの関係の基本から>
前回の第1回に、最近の日本経済の特徴をいくつか挙げ、日本経済が変わり目にあることを見てきましたが、総じていえば、良い方向に動いている事は明らかなようです。

しかし、種々アンバランスな点もありますので、そのあたりを「本来あるべき姿」に持っていく事が必要でしょう。

政府・日銀は、物価上昇2%という指標を重要な判断基準としていますが、これは物価(消費者物価)が0だったころに掲げられたもので、現在はもう3%を超え、国内要因の部分の上昇は4%を超えています。

政府も日銀も、これから下がると言って放置していますが、それでいいのでしょうかという問題もあります。

そこで、政府・日銀が何故そう考えているのかも含めて先ず、物価が何によって動くのかの基本を見てみます。

海外要因は後から付け加えるとして、国内要因による物価の形成は、基本的には、賃金と生産性の関係によって決まります。

生産性が3%上がれば、賃金を3%上げても、利益も3%増え、労使ともに安心です。生産性上昇が3%なのに賃金が5%上がれば企業は利益が出ませんから、企業、は販売価格を2%上げ、売上高も5%増にし、利益も5%上昇で、2%インフレ経済にするでしょう。

政府・日銀が2%インフレ目標を決めたのはゼロ成長ゼロインフレのころで、日本経済は低迷でしたから、2%ぐらいのインフレになれば、何となく景気が良い感じで、経済が上手く回るのではないかという事で、そう決めたのでしょう。

これは欧米主要国では年に2~3%のインフレは普通という現実から、現実の経済として妥当な目標と判断したのでしょう。

そして、賃金を高めに誘導し、2%程度のインフレを起こし、消費者は値上がりする前に買おうと購買意欲を高め、企業は、値上りと売り上げ増で経営を積極化し、結果的に徐々に景気が良くなるという動きを期待し、賃上げ奨励、官製春闘を演出しました。

しかし、この目論見は外れ、消費者は将来(老後)不安から生活防衛の貯蓄に走り、労働組合の賃金供給にも点火せず、目標は棚晒しになったままで、当時の黒田日銀はゼロ金利を続けざるを得なかったという事でした。

これが変わったのが、コロナ明けで消費が動き始めたこと、消費不振で値上げをせずに我慢していた生活関連物資・サービスの生産流通分野で、この際値上げしないともうやれないというる切羽詰まった気持ちでの一斉値上げの動きだったのでしょう。

一斉値上げが始まったのは2022年の春からです。折からの原油価格高騰による輸入物価の高騰、アメリカ、ヨーロッパの急激なインフレもあり、一斉値上げは波状的に起こり、まだ続いています。

この状況は、労働組合の賃上げ要求態度にも影響し、欧米のインフレ抑制のための高金利と日本のゼロ金利継続による円安の急進行で潤う企業が賃上げ容認の姿勢を示したこともあり、(それにしては小幅でしたが)春闘賃上げ率も1%程度高まることになりました。

それぞれの動きはちぐはぐですが、今迄の、長期不況に縛られた意識から脱出したいという雰囲気が広汎に出てきたというのが現状でしょう。 
問題はこの不揃いな動きをどうするかです。これが次回の課題になります。