tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

防衛装備品と子育て支援:経済学の理論と現実

2023年06月10日 17時57分42秒 | 経済
会期末の国会で防衛費の財源確保について与野党の議論の激化が予想されています。

国会では大いに議論し、国民も大いに関心も高めてほしいと思います。今後問題になる少子化対策の財源も頭に入れての議論をしていただきたいと思うところです。

このブログの今回の視点は少し違っていて、GDPの計算をする国民経済計算の中で防衛費や少子化対策費はどんな扱いになっているのかという事です。

一口でいえば、防衛装備品については、確か2016年頃に扱いが変わって、それまでは防衛装備品を買うのは「消費」だったのが「投資」に変わっています。

戦車、軍艦、飛行機、大砲などは固定資本形成に入るとのことで、弾薬などは在庫品の扱いだそうです。

一方、政府はこれからは人間に投資する事が最も重要だと言っていますが、少子化対策、子育ての支援は総て消費支出に計上されるのでしょう。

確かに、経済学では保育費も教育費も学用品も総て消費支出ですが、これは人への投資で、これが充実すれば、出生率も上がり、教育レベルも向上、その結果、技術革新などもレベルもスピードも上がり、人びとの生活も社会の高度化も進んで経済社会の発展が進むのですからこれはどう考えても確かに投資です。

では、防衛装備品は、本当に投資でしょうか。
戦車も軍艦も飛行機も大砲も、どう見ても固定資産ですから、固定資本形成になったのでしょうが、これらが物の生産や技術開発のために活用れるという話は聞いた事がありません。

これらは戦争という破壊活動のために使われるだけですから、使われる時は物の破壊と人的損傷が随伴するもので、生産という役割とは全く無縁ですから、固定資産の様に見えても、やっぱり消費物資でしかないはずです。そういう意味で、以前は消費物資に分類されていたのでしょう。

理論的には、やっぱりその方が正しいと思うのですが、第二次大戦後、平和が長く続き、いわゆる兵器がが破壊活動に従事することが少なくなって、折角カネをかけて作ったのだから固定資産にして経済建設に役立つと区分してもいいのでは、といった気持が湧いてきたのでしょうか。記念建造物や装飾品並みという事でしょうか。

更には核弾頭の様に、使ったら大変ですが、「持っているだけで」核戦争の抑止力になるから、平和維持に役立っているという理屈も生まれるのかもしれません。

然し使うと必ず巨大な破壊をもたらすことが明白なものですから、そう言ってもあまりまともな議論には聞こえません。

今の岸田内閣の政策のなかでは、この2つの、投資のように見えて消費でしかないものと、消費のよう見えて実は最大の投資であるという2つのものが、限られた予算の分捕り合戦をやっているという様相です。

国会で議論する先生方も、国民の皆様方も、この問題、一体どんな風にお考えなのでしょうか。