tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

1月の平均消費性向下げ続く、昨年1月比マイナス3.4ポイント

2019年03月08日 18時00分24秒 | 経済
1月の平均消費性向下げ続く、昨年1月比マイナス3.4ポイント
 昨日発表の「景気動向指数」が下げても、麻生さんは「「緩やかな回復基調」としか言いませんが、消費は長期にわたり低迷を続け、企業設備投資の片肺飛行で来た景気ですから、やはり先行きは厳しそうです。
 
 昨年1月は、消費性向が思いがけず上がって、「これは!」と思わせましたが、全くの糠喜び。その後は 昨年末まで低迷状態でした。家計の将来不安は相変わらず強いようです。

 今日発表になった「家計調査報告」の2人以上の勤労者所帯の平均消費性向を見ますと、84.8で、これは昨年1月の88.2から3.4ポイントもの低下です。

  昨年1月が、一昨年1月より3ポイント上がって糠喜びをしたので、今年1月はその反動で下がるかとは見ていましたが、結果は昨年1月より3.4ポイント、一昨年の1月に比べても0.4ポイント低下という残念な結果でした。

 平均消費性向については毎月取り上げ、いつになったら消費マインドが改善するかと待ち望んでいますが、その可能性はかなり薄いようです。

 世界トップクラスの1800兆円の個人貯蓄を持ちながら、国民の多くが将来の生活不安を心配し、金利もつかない貯蓄に励んでいるということは、やはり経済的にも社会的にも異常でしょう。

 1800兆円といえば、日本国民1億人として、1人当たり1800万円です。そんな貯蓄はないよという方が多いとすれば、貯蓄は偏在しているということでしょう。
 年代別の貯蓄は家計調査でも出ていますが、偏在は明らか、所得だけでなく、貯蓄でも格差社会化が進んでいるのです。

 政府は今日現在のことにばかりご執心で、財政赤字はいつまでも拡大しそうですから、国民は何時かは大変なことになりそうだと、将来不安にさいなまれるのでしょう。

 格差社会化の進行、財政のプライマリー・バランス回復のめどが立たないといったこの2つだけでも、将来不安の材料としては十分でしょう。
 1月の平均消費性向の報告をしながら、また余計なことを書いてしまいました。

2019年1月の景気動向指数発表、下降局面入り濃厚

2019年03月07日 23時36分24秒 | 経済
2019年1月の景気動向指数発表、下降局面入り濃厚
 今日、2019年1月分の「景気動向指数」が発表になりました。景気動向指数については、このブログではあまり取り上げてきませんでしたが。今回はまたアベノミクスという政治的な判断に絡んで、種々論争になりそうなので、取り上げてみました。

 折しも、アベノミクスによる景気上昇がこの1月で戦後最長になり、リーマンショック直前までのいわゆる「いざなぎ越え」より長くなるかどうかという政府の「面子」に関わるような様相でもあり、今日の官房長官の説明を聞いても、「下降局面とは意地でも言わない」といった雰囲気が見られるので、多くの人に「本当はこんなところでは」との判断を頂く一助になればと思っています。

 景気動向指数は昔はDI(ディフュージョン・インデックス)が中心だったと思いますが、今はCI(コンポジット・インデックス)中心のようです。
 基本的の見方はDIの場合、数字が50を「下から上に切る時点」が景気の谷、同じく50を「上から下に切る時点」が景気の山となります。
 一方CIの方は、数字そのものが景気の高さを表すように合成(コンポジット)されたものですから、数字が下がり始めたところが景気の山の終わりを示すものです。
 ということで、ここ1年のDIとCIの動き(一致指標*)をみてみます(昨年1月から今年1月まで)。

景気動向指数:CIとDIの推移

内閣府:「景気動向指数」

 CIの方では、ずっと高原状態で来て、このところ下がり気味、といった様子ですが、動きの激しいDIでは結構上下動を繰り返し。この1月は14と大きく50を切っています。

 どう判断するかといいますと、CIでは常識的に、3か月下げ続ければ下降局民でしょうし、DIなら「もう50を切り上げることはなさそうだ」という時点で下降局面と判断されるでしょう。

 もし2月以降、また数字が回復するようであれば、下降局面入りの判断は先送りになるでしょうし、2月、3月と下げ続ければいよいよ下降局面ということになるのでしょう。
 今回の場合は「正直言って」もう少し様子を見てというところかもしれませんが、米中問題、日米FTA交渉などを考えれば、危ない可能性が高いとみる人は多いでしょう。

 従来も景気の反転する時は、グラフがギザギザの形になることは多いですから、結果的に「やっぱりココだったか」と判断出来るのは少したってからということになるでしょう。

 真面目に正直にものを言うとすれば、国際情勢を含め客観情勢は危ない可能性が高いけれど、米中関係もまだわからないところもあるし、日本企業も頑張っているのだから、もう少し様子を見て判断しましょう、といった所でしょうか。

 *)指数には、先行系列、一致系列、遅行系列があって、最終的にはすべてを使っての判断になります。

中国、全人代で成長目標引き下げへ

2019年03月05日 23時20分15秒 | 国際経済
中国、全人代で成長目標引き下げへ
 中国では、今日開かれた全人代で、経済成長率の目標数値を昨年の6.5%程度から6~6.5%と引き下げたというニュースが入ってきました。
 米中間の経済問題が簡単には片つかないといった状況の中での苦しい選択といった解説が目につきます。

 李克強首相が、汗を拭きふき演説する映像も一緒でしたが、このところの中国の行動様式を見ていますと、アメリカのごり押し方式とは裏腹に、何か大人の態度で、ソフトに受け流し、事を荒立てないという形が特徴的な中国です。
 南沙諸島の問題では国際仲裁裁判所の命令を「紙屑」と切って捨てた態度とはかなり違うようです。

 アメリカが問題とする知的所有権問題についても、中国は「尊重する国になる」ことを強く主張しています。
 
 今後の米中貿易交渉を見ていかなければ解りませんが、経済問題では、中国は何か自信を持ち始めたのではないでしょうか。
 「中国製造2025」から、さらに2035、2045といった30年先までの計画を持って、まさに「愚公山を移す」といった粘りで、世界の製造業の中心になるという見通しに少しずつ自信を持ち始めたのではないでしょうか。

 一方、アメリカは、ラストベルトの再開発も見通しは立たず、輸出するのは農産物とシェールオイル、あとは防衛装備品という状態で、工業製品はほとんどが中国をはじめとして外国で作っているというのが昨今の現実です。

 今のトランプ方式の「アメリカを偉大な国に」するという政策では、製造業においては、すでに勝負あった、という見方すらありそうです。

 歴史は浅いが、老大国になりつつあるアメリカと、歴史は超長いが、今や青年期の成長途上の中国という見方をする人もあるようです。

 日本はその狭間で、頼りの「アベノミクス」は何をしようというのでしょうか。
 幸い、日本経済は、平成長期不況を脱出して、これから本格的に頑張ろうという企業、そこで働く勤勉で生真面目で、エネルギーレベルの高い労働力に支えられて、何とか頑張っていますが、始まった通常国会での議論を聞いていると、どうも「政低・民高」の感じが強く、政治がブレーキになるのが心配です。杞憂でしょうか。

平成という時代を改めて振り返ってみましょう:3

2019年03月04日 23時14分46秒 | 経済
平成という時代を改めて振り返ってみましょう:3
<「いざなぎ越え」は努力の成果の見えた時期>
 2002年から始まった、いわゆる「いざなぎ越え」という景気上昇期は、企業にとっても、家計にとっても「ほとんど好況感など無い」と言われた景気上昇です。
 結果的に「いざなぎ景気」を越える長さになったので、この名前が付いたのですが、「景気下降ではないが・・・」というのが実感というところでしょう。

 しかしこの時期は、日本の企業労使が本気で努力し、何とか円高の克服に成功し始めたという、ある意味では貴重な経験の時期だったようにも思われます。
 ということで、まず有効求人倍率の動きを図にしてみました。

厚労省:職安業務統計

 平成の期間を一覧できるようにしましたが、見て頂きたいのは平成14年から20年(20年はリーマンショックの影響が多少入ります)、つまり好況感なき上昇と言われた「いざなぎ越え」の時期です。
 この間、企業の求人意欲は明らかに高まり、景気回復への期待をうかがわせます。

 次に円レートを見てみましょう。


プラザ合意で$1=¥240から120円という2倍の円高になりましたが、その後は一進一退、すみませんこちらの図は西暦で「いざなぎ越え」の2005~2007年あたりは110円から120円がらみになり、企業はこれで景気回復につながると自信を取り戻した時期でした。

 当時、わたくしも大学などの就職関連の講座などに出講、「いよいよ就職氷河期も終わるようでよかったですね」などと話したことを覚えています。

 当時アメリカの住宅ブームをベースにし、金融工学を駆使した長期好況が2008年リーマンショックで終わりを告げると予想した人はほとんどいなかったでしょう。
 日本企業も、110~120円という円レートでは収益は思うに任せませんが、経営効率化、コストカットで、もうひと頑張りすれば、超円高を何とか乗り切り、明日はよくなるという気概と期待があったといえるでしょう。

 企業の経常利益率を見てみますと「いざなぎ越え」の平成14年度から19年度までは現状の5~6%にはとても及びませんが、着実に上昇基調を維持しています。

   財務省:法人企業統計年報

 まさにリーマンショックなかりせば、日本経済は自力で超円高を克服し、安定成長への道を着実に歩み、企業は自信を回復し始めていたという状態だったのでしょう。
 さらに、非正規従業員比率や、企業の人件費に占める教育訓練費の比率などについても、「いざなぎ越え」の期間は、緩やかですが回復(復元)の傾向が見られます。

 そうした意味で、「あんなのは景気回復でも何でもない」などと言われた「いざなぎ越え」の期間は、日本企業が、それまでの日本的経営の延長線の意識を持ちながら、未曽有の円高不況から、自力経済回復への自信を持ち始めた時期といえるのではないでしょうか。

 しかし残念ながら、日本経済は、アメリカのサブプライムローンバブルの崩壊(リーマンショック)で、新たな苦難と変質を迫られることになってしまいました。
 その惨状は次回以降で見ていきたいと思います。

新入社員入社まで1か月、初任給2題 その2

2019年03月03日 22時58分26秒 | 労働
新入社員入社まで1か月、初任給2題 その2


厚労省:「賃金構造基本統計調査:所定内賃金」

前回述べましたように、初任給は、社会人、サラリーマンになって、初めて手にする給与、自分が社会の役に立っていることの証拠として受け取るものです。
 カネを払って勉強するという役割から、社会に貢献してカネをもらうという180度の大転換のスタートです。

 ところで、欧米流の賃金システムは通常、職務給ですから、日本で言えばパートと同じで、新卒でも高齢者でも同じ仕事に付けば同じ賃金です。
 では日本の初任給というのは何でしょうか。
はっきり言えば、「まだ仕事はなにも解っていないけれども、此の賃金でスタートして年々習熟に従って賃金が上がっていきます。頑張りましょう」という賃金でしょう。

 ではこれから年(勤続)と共に「賃金はどんな風に上がっていくのか」というのが標準的な賃金カーブという形で会社ごとに決まっています。会社ごとのものは、その会社の賃金規則や賃金協定になっているわけですが、日本中の会社の平均はどうなっているのかは厚労省の「賃金構造基本統計調査」でわかります。

 上の図は、同統計の最新版、平成28年版(27年6月調査)からで、ここでは典型的なものを示すという意味で、産業計、規模計(10人以上企業)男子大卒、標準労働者(新卒採用でずっと勤続している人)を取り上げています。
 初任給は大体20万円強、年々ほぼ直線的に上がって行って、50-54歳の所でピークになります。(これは所定内賃金、賞与は別)

 これは、以前、日本企業の定年は55歳が普通で、年々賃金が上がっていくというシステム(いわゆる年功賃金:年齢と功労が標準的に上がっていく)は、若い時は働きより安い賃金、高齢になると働きより高い賃金というシステムで、55歳到達時にバランスがとれるようになっていたことから来ているものです。(旧定年年利後は55歳到達時点で清算〈企業によっては60歳〉で清算したのでその後は職務・能力に見合ったものにしていくべきだろうというのが現状の考え方です)

 ちなみに20-24歳~50-54歳の30年間に賃金がどのくらい上がるかと見ますと、2.54倍になっています。
 では、その間平均的に1年で何%上がっていくかを計算しますと年3.15%という事になり、これが定期昇給という事になります。(勿論大卒男子の場合です、また70歳以上の所が高いのは、この年代の多くは役員だからでしょう)

 新卒一括採用の場合、初任給というのは、ある意味ではこうした賃金のオートマティックな上昇を前提にしたもの(将来は上がりますよ)という事になるわけです。

 初任給の前提になっている此の「賃金カーブ」は極めて日本的なもので、同一労働同一賃金の原則に立つ職務給とは全く相容れないものです。

 この日本的な賃金システムが、今後崩れて、欧米流の職務給になっていくのか、定期昇給のある日本型の賃金制度が今後も生き延びていくのか、学者にも、企業の事務者にも、賃金評論家にも、なかなか読み切れない問題のようです。

新入社員入社まで1か月、初任給2題 その1

2019年03月02日 13時40分28秒 | 労働
新入社員入社まで1か月、初任給2題 その1

(日本経団連・東京経営者協会調べ)
 アベノミクスの働き方改革では、日本も同一労働同一賃金にして、学卒一括採用など止めて、欧米流の雇用制度にしたいようですが、企業も大学も学卒一括採用は止められないようです。

 特に、企業にとって、新規学卒で良い人材(素材)を確保しようという気持ちは、「企業は人間集団」と考える日本企業の本能的な欲求でしょう。
 そうした背景で見て来ますと「学卒初任給」というのは、賃金決定の中でも特別の意味を持つはずのものです。

 図は、経団連・東京経営者協会の調査による「新規学卒者決定初任給調査」の中から、平成不況になってからの「初任給を引き上げた企業の割合」を見たものです。
 平成不況になる前は、初任給は毎年なにがしか引き上げられるのもというのは企業の常識のようなものでした。

 ところで、初任給には「定期昇給分」はないのですから、初任給上昇はまさに「べースアップ」そのもので賃金全体を押し上げる可能性が大きいわけです。

そんなわけで、バブル崩壊の1991年(平成3年)以降少し様子が変わったようです。初任給水準は1995~1998年がピークで、その後は初任給も下がる年が多くなりました。

 その辺りの状況がこの「初任給を引き上げた企業の割合」でも見られます。
 2002年、バブル崩壊後の長期不況が響いて、初任給を引き上げた企業の割合は急減し、一桁にまで下がります(引き下げた企業の動きも調査されています)。

 その後、「いざなぎ越え」(好況感なき上昇)の時期に入り、「好況感なき」と言われている中でもそれでも半数近い企業が初任給を引き上げる状況まで回復しました。

しかし、リーマンショックで2009年からは、企業の9割は初任給据え置きか引き下げという状態を続けています。リーマンショックの深刻さが知られます。

 そして2014年以降は日銀の金融緩和政策で円安になった途端、初任給引き上げ企業の割合は50%水準にを回復します。
 その後、初任給水準は小幅ですが、上昇傾向をたどるようになっています。

 1か月後、新入社員になられる皆様の初任給も、昨年の初任給より高いという企業が多いのではないかと思います。
 初任給は、社会に役に立ち始めたことの証拠です。有効に遣いましょう。