tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

輸入インフレは終局へ、残る消費者物価指数の動向

2023年06月13日 12時36分13秒 | 経済
昨日、日本銀行から、5月分の輸出入物価と企業物価(昔は「卸売物価指数」と言いました)が発表になりました。

マスコミの報道でも輸入物価の動きが収まり、日本の物価への影響も小さくなってきたといった解説がされています。

このブログでも、海外物価が上がれば日本の輸入品の物価が上がり、それが企業物価を押し上げて、最終的には消費者物価の上昇になるという立場から、このところ毎月輸入物価指数、企業物価指数、消費者物価指数と3つの主要な指数を一覧のグラフにして観察して来ました。

       主要3物価指数の推移(消費者物価指数は東京都区部速報)

                       資料:日本銀行、総務省       

ご覧い頂いた方には、この3つの物価がどんな関係にあるかを、毎月発表されるごとに、じっくり見て頂けたことと思います。

輸入物価指数の巨大な山の高さ、それに引き換え、大分なだらかな企業物価指数の山、遅れてじりじり上がる消費者物価指数、高さの違い、時間的なずれ、それに影響を持つ国内事情なども随時取り合上げたつもりです。

主要3物価指数の低前年上昇率 (%)

                      資料:上に同じ

輸入物価も国際資源価格の落ち着きで当面大きな問題はなさそうな状態、それを反映する企業物価、それにしても、日本自体の事情の反映でしょうか、なかなか上昇の収まらない消費者物価の動きというのが、この所の日本の主要物価指数の動きです。

ロシアのウクライナ侵攻問題、OPECの原油減産問題、穀物の主要生産国における干ばつ、水害、山火事などの異常気象問題など、国際資源価格に関わる問題はいろいろありますが、現状、何とか一応の安定という事でしょうか。

今後も、この主要3物価については、状況により発表の都度取り上げていくつもりですが、今回は、国際的な物価問題も何とか落ち着いて、後はそれぞれの国の国内問題としての物価問題になって行くのだろうと見ていますので、このブログでは、今後は消費者物価指数の追跡に一層力を入れて行きたいと思っています。

国際紛争の種は尽きないようですが、紛争や戦争は、それを引き起こすリーダーにとっては当面気が済むのかもしれませんが、現実に起きるのは物的・人的な悲惨な破壊だけで、人類社会にとってはマイナスばかりでしょう。

人間が作り上げたものを人間が破壊するような事がなければ、物価や経済の分析もずっとやり易くなって、より人々の役に立てるのに、などと思いながら、数字を追い、グラフを書いています。

最近の日本経済、些か異常では?

2023年06月12日 11時47分09秒 | 経済
今日は月曜日、週明けの東京市場は150円ほどの上昇から出発し、徐々に上値を切り上げているようです。

何故こんなに上がるのでしょうか、それまで上下を繰りかえすだけの日経平均が今年に入って1月の26,000円から6月は32,000円という急騰で、まだ上るといわれています。

上っているのは株価だけではありません。昨年来、消費者物価はじりじりと上がって来ていますが、このブログでも最近指摘していますように「生鮮食品とエネルギーを除く総合」、いわゆる「コアコア指数」の上昇は、この所少し異常な水準まで上げて来ています。

アメリカやヨーロッパが8~10%といったインフレで、アメリカのFRBやEUのECBなどの中央銀行は、金利の大幅引き上げでインフレ退治に動いたのはご承知の通りです。

その結果、国内要因で起きたインフレである上記「コアコア指数」はアメリカでは7%近かったものが5%近くまで下がり、金利引き上げも終わるかとみられています。

しかし日本の場合は昨年来の食料、飲料や、調味料、日用品などの一斉値上げが収まらず「コアコア指数」が昨年春の1%以下から5月(東京都区部)では3.9%まで上がり、更に上がる気配です。

日米の消費者物価の長期の観察では、インフレ体質のアメリカは日本より上昇率が2%程度高いという差が常態ですので、今の日本のコアコア指数の上昇は些か異常に感じられます。

アメリカのFRBがインフレに敏感になり、金利引き上げでインフレ退治に躍起になったのに引き換え、日本銀行は、インフレは次第に収まると楽観的で、異次元金融緩和のままで静観でいいのでしょうか。今後も電気料金をはじめ、公共料金の引き上げに刺激されての物価上昇が懸念されます。

株価が異常な上昇を示し、一部に地価やマンション価格の高騰が言われる中で、日々の生活に関わる消費者物価の上昇が日本としては異常な水準に達しているという現実は、放置できるのでしょうか。

株高で日本が豊かになったような感覚を作り、消費者物価の上昇を放置し、来年はさらに高い賃上げをしようというムードを作り、かつてのバブルの再現を思わせるような状態の中で、財源のない防衛費の増額や少子化対策の財源を作ろうという方向に「明確な意識もないままに」進んで行く危険性が感じられるのではないでしょうか。

これは現政権のとっては都合のいいことかもしれません。現政権が頼るアメリカにとっても都合のいいことかもしれません。

そういえば、株価の上昇は、ウォーレン・バフェットが来日して、「これからは日本株」といったことも大きな影響があったようですし、この所、急にPBR(蓄積過多で株価が低い)などというアメリカ型の企業評価が言われたり、何か、かつてのバブル前の「前川リポート」(労働時間短縮、内需拡大、金融緩和を推奨)を彷彿させるような雰囲気があります。

煽てられてバブルをやると、その咎めは大きい事を日経平均のピーク38,000円が教えてくれている事にも十分気を付けた経済、金融政策が必要なように思われますが、如何でしょうか。

防衛装備品と子育て支援:経済学の理論と現実

2023年06月10日 17時57分42秒 | 経済
会期末の国会で防衛費の財源確保について与野党の議論の激化が予想されています。

国会では大いに議論し、国民も大いに関心も高めてほしいと思います。今後問題になる少子化対策の財源も頭に入れての議論をしていただきたいと思うところです。

このブログの今回の視点は少し違っていて、GDPの計算をする国民経済計算の中で防衛費や少子化対策費はどんな扱いになっているのかという事です。

一口でいえば、防衛装備品については、確か2016年頃に扱いが変わって、それまでは防衛装備品を買うのは「消費」だったのが「投資」に変わっています。

戦車、軍艦、飛行機、大砲などは固定資本形成に入るとのことで、弾薬などは在庫品の扱いだそうです。

一方、政府はこれからは人間に投資する事が最も重要だと言っていますが、少子化対策、子育ての支援は総て消費支出に計上されるのでしょう。

確かに、経済学では保育費も教育費も学用品も総て消費支出ですが、これは人への投資で、これが充実すれば、出生率も上がり、教育レベルも向上、その結果、技術革新などもレベルもスピードも上がり、人びとの生活も社会の高度化も進んで経済社会の発展が進むのですからこれはどう考えても確かに投資です。

では、防衛装備品は、本当に投資でしょうか。
戦車も軍艦も飛行機も大砲も、どう見ても固定資産ですから、固定資本形成になったのでしょうが、これらが物の生産や技術開発のために活用れるという話は聞いた事がありません。

これらは戦争という破壊活動のために使われるだけですから、使われる時は物の破壊と人的損傷が随伴するもので、生産という役割とは全く無縁ですから、固定資産の様に見えても、やっぱり消費物資でしかないはずです。そういう意味で、以前は消費物資に分類されていたのでしょう。

理論的には、やっぱりその方が正しいと思うのですが、第二次大戦後、平和が長く続き、いわゆる兵器がが破壊活動に従事することが少なくなって、折角カネをかけて作ったのだから固定資産にして経済建設に役立つと区分してもいいのでは、といった気持が湧いてきたのでしょうか。記念建造物や装飾品並みという事でしょうか。

更には核弾頭の様に、使ったら大変ですが、「持っているだけで」核戦争の抑止力になるから、平和維持に役立っているという理屈も生まれるのかもしれません。

然し使うと必ず巨大な破壊をもたらすことが明白なものですから、そう言ってもあまりまともな議論には聞こえません。

今の岸田内閣の政策のなかでは、この2つの、投資のように見えて消費でしかないものと、消費のよう見えて実は最大の投資であるという2つのものが、限られた予算の分捕り合戦をやっているという様相です。

国会で議論する先生方も、国民の皆様方も、この問題、一体どんな風にお考えなのでしょうか。

1-3月期GDP上方改定の中身

2023年06月09日 14時34分08秒 | 経済
昨6月8日、内閣府から今年、2023年1-3月のGDP第2次速報が発表になりました。

第1次速報(5月)では、対前期比の実質成長率は0.4%で年率換算1.6%でしたが、第2次速報では前期比0.7%の成長と大幅に高まって、年率換算では2.7%という事になり、政府も大喜びで発表することが出たという事でしょう。

昨年来のGDPの四半期別速報を、このブログでも毎回取り上げていますが、昨年来の傾向として見えて来ているのが個人消費の伸びが堅調になって来ているということです。

長い間日本経済は消費不振で成長しないと言われてきましたが、昨年からは様子が変わって来ています。

この傾向は、今年の1-3月にも続いているようで、このブログでもやっと日本経済も個人消費と企業設備投資の両肺健全化で成長軌道に乗るのではと予測しているところです。

ところで、1-3月の2次速報が一次速報から何が違って上方修正されたかという点を瞥見しておこうというのが今日の目的です。

経済活動をGDPの需要面から見れば、「内需」と「外需」から成り立っていますが、この所の貿易赤字続きからも解ります様に外需はマイナスで、内需が支えています。

第1次速報では、国内需要が0.7%の伸び(以下対前期)、海外需要が‐0.3%の落ち込みで差引き0.4%のプラス、年率換算1.6%(0.4%増の4乗)です。
第2次速報では外需-0.3%は変わらず、内需が1.0%になって計0.7%、年率換算2.7%の成長です。

では、0.7%の成長から1.0%の成長に押し上げたのは何かと見てみます。
動いている項目を見ますと、家計最終消費支出が0.6%から0.5%に下がっています。
第1次速報では入っていない3月に入ってからの消費が伸びなかったという事でしょう。

民間住宅は第1次の0.2%増から-0.1%に落ちています。マンション建設の減速でしょうか。

一方、民間企業設備は0.9%増から1.4%増に伸びています。これは法人企業統計季報が出て実態が解るという事で、企業活動の活発化の結果でしょう。
今回のGDPの大幅改定も企業の設備投資が予想より活発だったことが主因ということが見えてきます。

些か気になるのは企業設備の伸びの改定が(多分)在庫品増加を含む数字になっており、設備投資より在庫品増加が国内需要の増加に寄与しているとみられる点です。
GDP増加1%の寄与度の計算では設備投資の寄与度は0.2で変わらず、民間在庫の寄与度が第1次の0.1ポイントから第2次速報では0.4ポイントに増加しています。

以上は民間部門で、公的需要は第1次の0.4%増から0.3%増に下がっていますが、民間経済活動が活発になれば政府が引っ込むのは自然でしょう。

最後に消費需要で気になることは、3月に入っての消費支出が伸び悩んだことで、この原因として消費者物価の上昇が、生活必需品(光熱費も含む)で5%から10%に近づき、その騰勢が衰えないという問題です。

公共料金も含めて、家計の圧迫になるような値上げをさらに続けることは、折角の消費需要の回復をを阻害するレベルになっていると思われます。

ここまで消費者物価が上昇した段階では、改めて経営を値上げ依存で考えることは控え、生産性向上で収益を上げる方向への経営マインドの転換が必要な時期に入って来ていると考えるべきではないでしょうか。消費者物価上昇に警鐘が必要でしょう。

勤労者世帯の平均消費性向急落

2023年06月08日 15時55分46秒 | 経済
一昨日、6月6日、総務省統計局から4月度の家計調査(家計収支編)が発表になりました。
コロナが終息期に入り、3月末には春闘の集中回答日もあり、「大手企業の満額回答続出」などとマスコミに報じられていました。

政府もいよいよ今迄の経済低迷期からの脱出とおいった雰囲気を作ろうと躍起のようで、サラリーマン世帯の財布の収支にも影響が出るのではないかという気もあって、先ず、例月点検している2人以上勤労者世帯の平均消費性向を見ました。

      平均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯:%)

                    資料:総務省「家計調査」

昨年になってからは、前年比で上昇基調がほぼ続いている(3月・11月以外は青より赤の柱が高い)状況でした。

更に今年に入っても1、2月は緑の柱がさらに高くなっていたのですが、3月は0.2ポイントの微上昇となって、さて先行きはでした。

今回は、開けてビックリ、4月の数字は前年の78.8%から73.9%へと4.9ポイントの大幅低下になっていました。

ところで、平均消費性向の低下するのには2つの要因があります。一つは、家計が節約して貯金を増やそうという場合、もう一つは、収入が増えたのに今まで通りの支出をしていたら消費の割合が減ったという場合です。

日本では長い間前者の節約型、今回は後者の収入増型になる可能性もあり、それならベストだと思っていましたが、どうもそう簡単ではないようです。

消費支出の統計内容から推測しますと、両方の要因が絡み合っているようです。
先ず全体の傾向としては2人以上全世帯の消費支出を見ますと名目値で0.5%減、実質値で4.4%減とともにマイナスです。

物価上昇に負けずに所費を伸ばすという元気も息切れし、4%以上の物価上昇では、少し節約しなければという雰囲気も出てきたように感じられます。

勤労者世帯では、収入の統計もありますので見てみますと世帯の収入は前年比2.6%の増、実質値では1.4%の減ですが、世帯主の収入は0.7%のマイナスで、春闘の効果はまだないようです。

その代わり、人手不足のせいでしょうか世帯主以外(妻、子供など、多分非正規?)の収入が増えて、合計では2.6%の増加で、平均消費性向計算の分母の可処分所得(手取り)は3.5%のプラス(実質は0.6%のマイナス)です。

しかし、収入は増えても支出は抑えられ、名目で0.9%減、実質6.7%減と節約基調で、その結果が平均消費性向の4.9ポイントの低下になっているのです。

別途消費支出の中身を費目別にみますと、食料のような、値上げがあっても減らしにくい物は伸び、家庭用品や衣類など節約できるものは伸びず、交通、通信や、教養娯楽のような、コロナ終息で活動が積極化しているものは増加といった、節約と支出増の選択の状況が見られます。

5月には、春闘の結果がどうかも出て来るでしょうし、物価の状況とも相まって、日本経済を左右する個人消費の動きがもう少し見えてくるのではないでしょうか。

岸田内閣、新しい資本主義の閣議決定へ

2023年06月07日 16時37分30秒 | 政治
6月6日、岸田総理は「第19回新しい資本主義実現会議」を開催しました。
今春闘が「30年ぶりとなる高い水準の賃上げ」となったことを背景に、高い水準の賃上げの持続をめざし、「新しい資本主義」を実現しようという事で、盛りだくさんの中身です。

多様な分野でのスタートアップや技術革新を掲げ、先ずは「人への投資・構造的賃上げ・労働市場改革という事のようです。

欧米流の職務給中心の人事制度崇拝や、リスキリングという言葉、労働移動で賃金上昇が可能になるような表現は気になりますが、今、日本企業がやろうとしている政策の援助になると思われることも盛り込まれています。

岸田総理としては、確かに今年はコロナの終焉や、インフレの進行や経済界の反省もあり、多少高い賃上げになったが、来年はまた低くなってしまったというのでは恰好がつかないので、「構造的賃上げ」という言葉を使って、少しでも高い賃上げが続いてくれることを願っている所でしょう。

これは、岸田総理だけでなく、日本中誰もが望んでいる事ですから、岸田内閣の政策の結果がそうなって、日本もやっと30年の悪夢から覚めたかと言われたいところですが、些か気になるのが、閣議決定をしようと並べられた政策の中に「生産性」という言葉がない事です。

経済学でも、経営学でも、「賃金の上昇を生み出すものは何ですか」と問えば、人間の先生は勿論、どんな「生成AI」でも先ず「生産性の向上です」と答えてくれるでしょう。
正確に言えば「労働生産性」の向上ですが、この言葉がありません。

多分、そんなことは解っていて、ジョブ型賃金や、転職、リスキリング、スタートアップ、技術革新、投資促進などというような課題が掲げてあれば、それが生産性向上につながって、賃上げが実現すると考えるのが当然というのでしょう。

しかし、現実の企業活動というものは難しいもので、同じことをやったつもりでも、生産性向上という意識が常に働いていないと、自動的にそうはならない事が多いのです。

ですから日本は勿論、世界中の国々に生産性本部とか生産性機構というものがあって産業の現場の活動に直結した活動をしているのです。

岸田内閣の方針について言えば、日本の産業界で、欧米型の職務給(ジョブ型賃金)と日本型の属人給とをいかなる組み合わせにすれば、最も生産性が上がり賃金が上げられるか本当に解っているのでしょうか。

また、転職によって賃金が上がるのは、高度専門能力を持つ人たちの話で、多くの人々は企業内のOJTを中心にベテラン社員に育って生産性が上がり賃金が上がっていくのです。

来年の春闘で、また今年以上の賃金上昇を期待するためには、労働力人口はあまり変わらないでしょうから、実質GDPの上昇が必要条件です。
例え、1、2年は、財界や政府の気合で高めの賃上げが出来たとしても、経済成長(GDPの増加)がなければ賃上げは続かに事はアベノミクスの経験からも明白です。

今朝の日経産業新聞の1面は、中国に流出した日本の先端分野の研究者3人の紹介でした。、日本の針路を決める内閣と学問と研究開発の総本山である学界が仲が悪い状態がいつまでも続くようなことは、やっぱり心配が残ってしまいます。

「別化性能」と「類化性能」と今日の世界 (2)

2023年06月06日 12時21分23秒 | 文化社会
前回は久方ぶりに「別化性能」、「類化性能」という折口信夫の造語を取り上げ、今日の世界情勢の中でこの使い分けの在り方が重大な問題になって来つつあることを見てきました。

世界の大国であり、国連の中枢機構、安全保障理事会の常任理事国であるロシアと中国が独裁国の色彩を強め、「我々の考え方は自由世界とはちがう」という形で「別化性能」を強調するようになって、今日の国際関係、人類社会の安定は大きく阻害される事になりました。

自由世界の国々はそれぞれに多様ですが、多様なりに「同じ地球世界に住む人類なのだから、助け合いながら仲良く人類社会の安定と発展を目指していこう」という事になっていると思うのです。

この「みんな同じ人間じゃあないか」というのが「類化性能」のいい所なのでしょう。

これに対して「我が国は本来こういう国であり、国境線はこうで、外国とは違う」と同じ人間でも国が違えば違いを強調するのが「別化性能」の困ったところです。

プーチンは「別化性能」の権化のような人間のようです。長く組織のトップの座にいると人間は自分を特別視するようになり、「別化性能」が助長されるのかもしれません。

こうして「別化性能」が助長強化されると、自分の領域が狭くなることを恐れ、排他的や侵略的になるという事ではないでしょうか。

中国が版図の拡大を求め、国境線に異常にこだわるのも同様の原因からのように思われますし、習近平政権が長期化するとさらに「別化性能」が強化されるかもしれません。

プーチンの場合には、すでに戦争に発展し、戦況が不利になれば、核の使用も辞さずという発言もありますから、「別化性能」の終着駅は人類社会の破滅につながる可能性もなしとしません。

こうして見ると「別化性能」は人類にとって無用な性能のようにも見えますが、前回、私自身も「別化性能」を求める気持ちがあると書きましたが、その気持ちは誰にもあり、「別化性能」が人類社会の進歩発展の役割を果たしている意義も大きいように思います。

「別化性能」は、自分が他人と違う事を重視する能力でしょう。他人のやらない事、他人より優れた事をやりたい、というのは人間の、そして人類社会の進歩発展の原動力でしょう。「類化性能」の共通な点を重視するだけではそうはいきません。

結局問題は、人間、人類社会が、「別化性能」と「類化性能」をいかに上手く組み合わせて活用するかという「至極あたりまえな」結論になるのですが、そこで留意したいのが「争いの文化」と「競いの文化」という問題です。

「争いの文化」は相手を倒すことによって自分の優位を保つという考え方であり、「競いの文化」は相手と抜きつ抜かれつの競争を善しとする考え方です。

「競いの文化」は、「類化性能」をベースにし、そおの上で「別化性能」を働かせるという事に大事な意味があるのではないでしょうか。

考えてみたら、結局動物が種の保存のために、本能によってやっている事と同じではないかという気がしてきましたが、どうでしょうか。

「別化性能」と「類化性能」と今日の世界 (1)

2023年06月05日 16時08分42秒 | 文化社会
大分前ですが2014年9月に「最近の国際情勢と折口信夫」を書きました。

「別化性能」、「類化性能」というのは、折口信夫の考えた言葉で、「別化性能」というのは物事の違いに注目して考える能力、「類化性能」というのは物事の共通点に注目して考える能力という事のようです。

折口信夫自身は、「自分は「類化性能」がとても発達している」と考えていたそうですが、この考え方に接したとき、私は私自身も、「類化性能」の方が発達しているような気がすると思っていました。

しかし、考えてみると、自分の気持ちのどこかに「別化性能」を求めるところがあるようだなとも思っていました。

恐らく、誰もがその2つの要素を持っていて、時と場合によって、自然に使い分けているのではないのだろうかという事なのでしょう。

ただ、折口信夫が言うように、自分はどちらの能力がより発達しているという事はあるのでしょう。

そして同時に、折口信夫はやっぱり典型的な日本人なのではないかと考えるのです。
というのは、いろいろ考えてみますと、日本人というのは、どうも世界中でも「類化性能」に優れているという点が特徴のように思えるからです。

原始の時代から人間には宗教がありました。これは人間だけのものでしょう。人間の脳が時間の概念を持っているからかもしれません。(宗教を持っているのは人間だけ)

そして宗教は人間集団の数だけあって、それは皆違った神様を持っているようです。そして神様が違うと人間集団は互いに相容れない事が多いのです。

多分宗教という文化(?)は、人間にとって「別化性能」の発揮を必要とするものなのでしょう。

ところが日本では、神様と仏様が仲良く共存しています。本地垂迹説といった考え方も生まれ。国が「廃仏毀釈」を言っても、今に至る殆どの家には神棚も仏壇もあるのです。

欧米人には考えられない思考方法「神も仏も人間を救うためにあるのでしょう。それならもともとはみんな同じなのかもしれない」というのが「類化性能」の極致でしょう。

日本人は、多様な宗教を容易に容認します。多様な宗教の祭りは次々に日本に入って来て、大勢の人が楽しんでいます。
  
ところで、現代は宗教とともに、主義主張、思想信条が人心を支配することも多くなっています。
そして、困ったことに、これが種々の争いや紛争を起こし、更に戦争に発展し、核の時代にいたっては人類社会の存亡にまで影響する可能性を持っています。

これは「別化性能」を極限まで推し進めた結果でしょう。
今や生物多様性、種の保存、絶滅危惧種の救済、などに一生懸命の人類が、宗教やイデオロギーの違い(利害)のために何で殺し合うのかです。

「類化性能」を重視すれば、同じ生物、同じ人間が何故、快適に共存する社会を作れないのか「別化性能」の発揮は人類社会の別のところで必要なので、そちらで発揮してくださいという事にしてほしいものです。

今年の我が家のホタルはどうでしょうか

2023年06月03日 12時30分17秒 | 環境
今年の我が家のホタルはどうでしょうか
今年もホタルの季節になりました。
もう10年近くになるでしょうか、我が家では庭のU字溝に雨水タンクに溜めた雨水を少しづつ流し、そこでメダカとホタルを飼っています。
雨水タンクにはカーポートの屋根に降った雨が流れ込みます。

先日三鷹の野川公園では地元の人達の努力で、順調にゲンジボタルが羽化し始めたと新聞が報道していました。

野川公園を流れる野川の上流は私の住む国分寺で、そこでもホタル再生のプロジェクトが続いていて、我が家もその人達に学んでホタルの飼育に取り組んでいます。国分寺の羽化もそろそろでしょう

嘗ては、私も、採卵、飼育、U字溝に放流、上陸、羽化、捕獲、採卵のサイクルをやっていましたが、歳のせいで、昨年からは羽化したホタルは放置して、U字溝の再生環境に任せることにしました。
その代わり、毎年、幼虫を適時に買ってU字溝に追加放流することにしたのです。

昨年はゲンジの幼虫だけ購入、羽化はこのブログでも報告しましたが7匹でした。
今年は、少額の予算ですが、ゲンジ、ヘイケ両方の幼虫を買って春の内に放流して、6月初めにはゲンジが羽化、下旬にはヘイケが羽化という予定で、この所毎晩、8時過ぎにはU字溝の周囲の草むらを点検しています。

今日あたりは雨上がりで、蒸し暑くなれば、ゲンジの羽化第一号が出るのではないかと期待しているところですが、どうでしょうか。

したはざっそうにおおわれたU字溝の周りです。


ゲンジは垂直なセメントの壁でもでも登りますが、ヘイケは斜めでないと登らないという事で、U字溝にはヘイケの上陸用にドクダミなどの束を入れてあります。
奥の右側に黒緑色に見るのが250m³の雨水タンクです。

政治は「キャッチフレーズ」からでいいのか

2023年06月02日 16時09分43秒 | 政治
「異次元の少子化対策」というのが当面の話題になっています。
これは、日銀が(やむを得ず)続けた長期の金融緩和政策の綽名から「異次元」という言葉を借用したものでしょう。

大体こうしたあだ名はマスコミなどが付けるようです。現実があって、その現実を巧みに、ユーモア意識も持って表現するから、日銀のご苦労も察して「これなら確かに異次元金融緩和だ」とみんなが使う事になるのでしょう。

思い出せば、海外でも、サッチャリズム(サッチャー首相が、伝統的に超強力な英国の労働運動を抑えきって、スタグフレーションからの脱出を成し遂げた)とか、レーガノミックス(米国でスタグフレーション脱出のために、高所特者優先の超フラット税制を導入したレーガン大統領の政策)などがあります。

これらは皆、マスコミからの贈り名でしょうが、どうもこうした習わしが日本ではとんだ「誤用」をされたようで、その始まりは安倍総理の「アベノミクス」でしょう。

先ず、成果が出ないうちから政策を打つ本人がj自分の名前を付けて「キャッチフレーズ」にしたのです。
国民は上の例から判断して「きっと成果が出るのだろう」と期待してしまったのですが、その成果は日銀の「異次元金融緩和」の部分だけで、財政再建は遠のくばかり、構造改革はモリ・カケのスキャンダルに矮小化された記憶だけという惨状でした。

やっぱり実績があってそれに名前が付くのが順で、名前を先につけて中身がないというのはまずいなと思っていました。

自民党も岸田さんになって、真面目そうだなと感じていたのですが、リーダーのポストに就くと舞い上がるのでしょうか、「キシダ」の名前は付きませんが、何か中身の解らない「キャッチフレーズ」が次々と打ち出されてくるようになりました。

曰く「成長と分配の好循環」、曰く「構造的賃上げ」、曰く「異次元の少子化対策」などなどです。

キャッチフレーズとしてはカッコよく、如何にも素敵な中身がありそうで期待を持たせるのですが、どうも、中身は後から「情況を見ながら考える」ということのようです。

このグログでも、「成長と分配の好循環」とは多分こういう意味なのだろうとか、構造的賃上げはこういう意味で使っているのだろうとか忖度して解説してみましたが、それからの現実の政策を見ると、政府そのものに、そうした政策を表す「言葉」の本当の意味が解ってないとしか思われないのです。

審議会や有識者の会議でいろいろ議論もあるようですが、意見はそれぞれで、これが決め手で、後世に名を残すような具体的な政策が出て来たわけではありせん。

この30年ほどで、日本の経済社会構造では、格差化が急速に進みました。この原因の所得格差の背後には、教育訓練の格差があるのは明らかです。先ずは、正社員と非正規の格差です。表面的には賃金格差ですが、その背後にあるのは教育訓練、熟練の格差です。
一方、経済社会の格差化は、成長発展の阻害要因である事が明らかです。

この問題はこのブログでは再三述べて来ていますが、「成長と分配」にも「構造的賃上げ」にも、その中心である格差問題の影の薄いのが気になります。

「異次元の少子化対策」も、財源のメドも立たないのに「所得制限撤廃」が謳われているという事は、格差問題より重要な「何か」に配慮の気配が感じられます。

先ず国民に魅力のある「キャッチフレーズ」を打ち出せば、当面、国民を喜ばせる効果はあるとしても、財源は後からという事ですと、そうか「異次元」というのは「財源がない対策」という意味だったのかなどと揶揄する言葉も聞かれる様です。

核分裂と核融合

2023年06月01日 17時05分01秒 | 科学技術
広く原子力エネルギーと言ったり核エネルギーと言ったりしていますが、今、人類が活用しようといている原子レベルの工夫で、エネルギーを取り出そうという試みには大きく2つの方法があるようです。

既に使われているのは「核分裂」のエネルギーを取り出して使うという方法です。

もう一つ今は未だ研究途上ですが近い将来、人類がうまく利用できるだろうと思われているのが「核融合」によるエネルギーの獲得で、この研究では日本も世界の競争の中でトップレベルを走っているようです。

この2つの方法は、「分裂」と「融合」、つまり正反対の言葉になっているように、大きな違いがあります。

今の原発、原子力発電は、核分裂を利用しています。
一番小さい原子は水素ですが、原発の材料に使われるウラニュウム(ウラン)などになると、原子核が大きすぎて壊れやすくなるようです。

これは壊れると言わずに分裂(核分裂)というのですが、分裂するときに放射線を出します。この放射線の持っているエネルギーを閉じ込めてその熱を使って発電するのが原発です。

ウランは分裂を繰り替ええし、色々な名前の原子に変化して、最後は鉛になって安定します。
問題は、原発の使用済み核燃料も鉛になるまで放射線をだし続けることです。放射線に当たると人体に異常や損傷が出ますから、原発から出る廃棄物や汚染水の処理が大変です。「オンカロ」などという事にもなるわけです。

核融合は、太陽エネルギーの源である、太陽の中で起きている事を人間の手でやろうという事で、これは水素の原子を4つ集めて融合させヘリウムの原子にする際に放出される2個の陽子の持つエネルギーを閉じ込めて発電に使うという方法で、ヘリウムは化合も反応もしない不活性ガスで極めて安定していますから、発電後に問題は残りません。

つまり、核分裂は大きな原子が崩壊(分裂)するときのエネルギーを使うので使った後の使用済み核燃料も長い間放射線を出し続け、その処理の方法が出来ていない(トイレのないマンション)という未完成の技術だという事です。

どちらも、もともとアインシュタインが到達した「e=mc²」という公式「宇宙ではエネルギーと物質は互いに入れ替わっており、その関係は、物質の質量に光の速度の2乗を掛けた値のエネルギーになる」という原理から出発しています。

人類は、結局太陽のマネをして核融合を活用できるようになるといいですね。