子どもへの性犯罪で服役し、出所した人に住所の届け出を義務づける全国初の条例が大阪府で施行されるのに伴い、法務省は、対象者の罪名や刑が終了した時期について府の照会に応じる方針を固めた。届け出た府民が該当者か確認できるようにするのが目的。各地の刑務所などに照会があれば、回答するという。
府は、出所者の社会復帰支援が条例の目的としている。前科情報は社会復帰にマイナスの影響を与えかねないため、省内には慎重な意見もあったが、府が対象者本人の同意書を添付することなどから、「拒む理由はない」と判断した。10月の条例施行を前に、近く府と覚書を交わす予定。
施行されるのは「子どもを性犯罪から守る条例」。橋下徹大阪市長が府知事時代に制定を指示し、3月に成立した。18歳未満の子どもに対する強姦(ごうかん)や強制わいせつなどの犯罪歴を持つ人が府内に住む場合、刑期終了から5年間、氏名や住所などのほか、罪名や刑期の終了年月日を自ら届け出るよう義務づけている。
ただ、府独自では届け出内容が正しいか確認できないため、8月末に法務省に協力を要請していた。同省は、提供した情報が厳格に管理される▽対象者の監視ではなく社会復帰の支援が目的である――ことなどを府に確認し、協力を決めたという。
照会は、府が刑務所などの刑事施設に対し、対象者本人の同意書を添えて書面で行う。刑事施設側は対象者の記録から18歳未満に対する性犯罪で服役したことを確認し、罪名と刑期の終了年月日を記入した回答文書を出す。
犯罪歴については、選挙権・被選挙権の有無を確認できるようにする目的で、検察庁が罰金刑以上の有罪判決(スピード違反など一部を除く)を受けた人の氏名や罪名などを本籍地の自治体に伝えている。各自治体は、叙勲の候補者や弁護士登録の審査など公的機関の照会ならば応じている。
法務省矯正局は「慎重に扱うべき情報だが、本人の同意があれば問題ないと判断した。今後、他の自治体で同様の条例ができれば、同じように協力することになり得る」としている。(田村剛)